本レポートは、2021年8月9日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#281」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
ARKのリサーチでは、技術革新に伴う「良いデフレ」を定期的に取り上げています。例えば、バッテリーのコスト低下は、電気自動車(EV)の予測の中心となっています。今週、日産は2022年のリーフEVを発表し、「良いデフレ」の好例を示しました。背景として、日産は2016年に30キロワット時(kWh)の日産リーフの価格を現在の米ドルで約3万9,000米ドルとしていましたが、5年後、2022年の40kWhリーフの価格は2万7,400米ドルとなり、航続距離を42マイル延長したにもかかわらず、1万1,600米ドル安くなっています。
一方、もうひとつの自動車のデフレの原因である「悪いデフレ」は、中古車市場にあるかもしれません。マンハイム中古車指数は5月にピークを迎えたようですが、リンク先の図が示すように、7月の最後の数週間で下落が加速しています。
当社は、バッテリーコストの低下は電気自動車の販売を後押しする価格の低下につながっていくものと考えていますが、中古車価格の下落は、従来のガソリン車の需要減退を示唆している可能性があります。自動車メーカーは、サプライチェーンの不足、特にチップが原因で米国での総販売台数が4月の季節調整済み年率(SAAR)1,850万台から7月の1,475万台へと20%減少したと考えています。しかし、マンハイム指数はそれとは別の見方をしているようです。根底にある自動車の需要が弱まり始めているのであれば、伝統的な自動車メーカーは苦境に立たされる可能性があります。
Deere社は、完全自律型の農業機械の製造を推進するために、自動走行トラクターの会社であるBear Flag Robotics社を買収しました。Bear Flag社は、既存のトラクターに後付けできる自動走行システムを構築し、1人のオペレーターがトラクターのフリートを遠隔操作できるようにしています。
自律型機械は、元のトラクターと同様に、農場の生産性を高め、農業従事者の実質賃金を上げながら、農業コストに占める労働力の割合を下げる必要があります。実際、自動化は「非市場」活動を実質的なGDPに変えることができます。例えば、現在自分でトラクターを操作している農場のオーナーは、1エーカーごとに自動走行トラクターのサービス料を支払うことで、明確な報酬が支払われていない畑での作業時間を減らすことができます。
自律走行技術・自動制御技術があらゆるタイプの機械を変化させていく中で、ARKはフォームファクタの多様化を期待しています。現在、人間のドライバーに合わせてトラクターを製造しているDeere社などの企業も、自動走行型トラクターを始めとした機械をユースケースに応じて様々な形やサイズに変えることができます。Bear Flag社のシステムは、現在は既存のトラクターに適合していますが、将来的には自動走行トラクターは、ドローンや他のロボットと連携して動作する小型の機械になるのではないかと考えています。
現在、上院に提出されている2500ページを超える超党派のインフラ法案の中で、増税を目的とした暗号通貨に特化した条項がブローカーの定義を拡大し、大きな議論を呼んでいます。具体的には、この条項は「ブローカー」を「他人に代わってデジタル資産の移転を行なうサービスを定期的に提供する責任を負う者」と再定義し、IRSの報告義務に従うことを義務付けるものです。
この定義は、暗号エコシステムのほとんどの関係者(採掘者(マイナー)、検証者、スマートコントラクト、オープンソース開発者など)に負担のかかる報告義務を課すことになるため、暗号業界は積極的に反対しています。インターネットの黎明期にこのような厳しい規定があったとすれば、米国の電子メールソフト開発者は、このソフトを使って電子メールを送受信するすべてのユーザーの社会保障番号を収集し、報告することが義務付けられていたことになります。
これに対し、ロン・ワイデン上院議員、パトリック・トゥーメイ上院議員、シンシア・ルミス上院議員は、ブローカーの定義を狭め、特にマイナー、検証者、ウォレット・プロバイダー、オープンソース開発者を除外する修正案を提案しました。しかし、その日のうちにマーク・ワイナー上院議員とロブ・ポートマン上院議員が反論し、プルーフ・オブ・ワークのマイナーとハードウェアウォレットのプロバイダーのみを除外し、ソフトウェア開発者、プルーフ・オブ・ステークの検証者、非管理者のDeFi参加者をブローカーの対象とした、競合する修正案を提案しました。
この記事を書いている時点では、上院はこの修正案を議決していません。ARKは、この修正案が可決された場合、暗号関連の技術革新のほとんどが海外に流出し、米国での採用に悪影響を及ぼす可能性があると考えています。ARKは、このドラマの展開を注視していきます。
イーサリアムは最近、ロンドン・ハードフォークの一環として、ネットワークのアップグレードを実施しました。これにより、取引手数料の価格設定が改善され、イーサリアムの通貨政策に新たな動きが導入されます。
ロンドンの最も重要な更新はEthereum Improvement Proposal (EIP) 1559でした。このアップデートがされる前は、eBayスタイルのファーストプライスオークションによって、ユーザーがネットワーク上の取引を確認するために支払う手数料が決定されていました。最高額の入札をしたユーザーが最初に取引を確認できますが、より低い入札額で十分だった場合でも、全額が請求されます。入札の透明性がないため、オークションでは、不必要かつ非常に変動制の高い取引手数料が発生していました。
新しいアプローチでは、入札をユーザーからプロトコル自体に移行することで、取引手数料の変動をなだらかにすることを目指しています。ユーザーは、次のブロックに取引を組み込むために必要な価格を推測する代わりに、「基本料金」を支払います。この基本料金は、供給に対する需要に基づいてネットワークが増減させるため、不要な支払いを減らすことができます。また、ユーザーは「プライオリティ・フィー(優先料金)」を支払うことで、最も時間に敏感な取引をスピードアップすることもできます。
EIP-1559の注目すべき点は、イーサで支払われた新しい「基本料金」が、マイナーに譲渡されるのではなく、償却され、発行済みイーサから永久に取り除かれることです。この実装設計により、マイナーが新料金システムを不正に利用することを防ぎ、株式買戻しプログラムのように、ネットワークの需要とイーサの価値発生額を直接結びつけることができます。EIP-1559は、イーサの正味発行率を下げることで、ブロックごとに発行されるイーサの数を減らします。
長期的には、この変更とPoS(プルーフ・オブ・ステーク)への移行が予定されていることから、ネットワーク上の需要に応じて、イーサがデフレ資産になる可能性があると予測する人もいます。最初の24時間で、1,400万米ドル相当の約5,000ETHが消滅しました。
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