本レポートは、2021年12月20日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#299」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
最近の暗号通貨界隈では、ビットコインは死んだ、イーサリアムは時代遅れであると言われ始めています。より高速で安価な取引を可能にする新しいスマートコントラクト・ブロックチェーンが未来だと言う人もいます。以下に示すSolanaやAvalancheなどのブロックチェーンに関連した最近のトークン評価は、a16z、Multicoin Capital、Three Arrows Capitalなどのトップ暗号ファンドによる承認と合わせて、この変化する物語を指示しているように見受けられます。
上記は過去のものおよび予想であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
出典: 第三者から入手したデータ(2021年12月17日時点のCoingecko)
パブリックブロックチェーンの主な機能の1つは、取引の処理と検証を中央の仲介者に依存しない、オープンで検証可能なデータベースを維持することです。このようなデータベースに格納される情報は、送金履歴や口座残高から、金銭的義務を記述し執行する契約、芸術作品のデジタル財産権に至るまで、多岐にわたります。
最近の議論では、より新しく高速なパブリックブロックチェーンの競争優位性だけに焦点が当てられており、2015年のビットコイン・スケーリング論争を思い起こさせます。しかしながら、これらの議論は、各ブロックチェーンが独自の方法で保存されたデータの最適化と完全性の維持を行ない、特定のユースケースに適した機能とセキュリティを実現するためにトレードオフを行なうという事実を見落としているため、私たちは見当違いだと考えています。
ビットコインは、ブロックチェーン技術の最も深い機能、すなわち「自己主権型」デジタルマネーの基盤を提供していることは間違いないでしょう。「貨幣革命」において競争するためには、データの完全性を保証し、国家レベルの攻撃に直面しても検閲されないことが必要です。ビットコインだけが「フェアローンチ」の恩恵を受け、スマートコントラクトのような機能を放棄し、分散化を最大化することでこのユースケースに最適化されています。しばしば批判とみなされますが、私たちは、ビットコインがその設計の進化に消極的であることは、真のグローバルマネーとして必要な安定性と一貫性を提供するための特徴であると考えています。
一方、イーサリアムのようなスマートコントラクト・ブロックチェーンは、分散型金融やNFTの台頭に代表される「技術革命」で勝負しています。つまり、多くのアプリケーションを展開するための汎用的でプログム可能なインターフェースを提供しているのです。検閲への耐性は依然として重要ですが、「技術革命」では、より多くのユースケースに対応するために機能の多様化とスループットの向上が求められており、ビットコインが提供するレベルの分散化と安定性が犠牲になっていることも少なくありません。
テクノロジーの変化に対応するためのプレッシャーは常にあります。イーサリアムの抱える、現役でありながらEthereum 2.0のビジョンを達成しなければならないというプレッシャーや、Solanaの例に見る驚異的なスピードでありながらも時折発生する障害などは、「技術革命」における競争がいかに厳しいものかを示しています。各ユースケースに必要な分散化の適切なレベルを市場が決定しているため、進化するネットワークは中央集権化のリスクをはらんでおり、金融セクターのような現状に逆戻りすることになるかもしれないと私たちは考えています。
その特徴的な設計、ユースケース、および価値提案を認識せずにブロックチェーンを比較することは、誤解を招き、逆効果となります。暗号の機会は並行して進化しており、それぞれが異なるネットワークの実装と設計のトレードオフを必要とします。私たちは、この多様性が競争を生み、暗号通貨産業全体にとって健全なものになると考えています。
デニス・ロー氏らが最近発表した論文は、ロングリードシーケンス(LRS)が非侵襲的出生前検査(NIPT)市場において臨床的に有用である可能性を示しています。現在、ショートリードシーケンス(SRS)が主流となっているNIPTは、最も大きく、急速に拡大している臨床検査市場の1つです。
血漿サンプルに含まれる無細胞DNA(セルフリーDNA)は200塩基対(bps)未満と小さいため、NIPT市場はSRSに落ち着いています。出発物質が小さい場合、1万~10万 bpsの範囲の断片を読み取ることができるLRSは過剰な処理となります。しかし、ロー氏らはPacific Biosciences(PACB、「PacBio」)のHiFiシーケンスを用いて、セルフリー長鎖DNA(>1k bps)が妊娠第1期、第2期、第3期にそれぞれ中央値で10.9%, 12.9%, 22%の割合で存在することを発見し、現状を打破することに成功しました。この発見は、セルフリー長鎖DNA断片が臨床的に重要な新しい情報を含む可能性を示唆しており、NIPT市場を拡大させるものと考えられます。
著者らは、これまでの研究成果を活用し、LRSは大きなセルフリーDNA断片が母体組織由来か胎児組織由来かをほぼ90%の精度で判定できることを明らかにしました。この手法は、DNAの突然変異とメチル化のようなエピジェネティックな変化の両方を検出するシーケンサーの機能に依存しています[1]。
セルフリーDNA分子の母体由来組織と胎児由来組織(TOO)を区別する能力は、NIPTの分野で新しい市場を切り開くはずです。母体と胎児の遺伝パターンを識別することで、LRSベースのNIPTアプローチは、de novo突然変異と劣性遺伝性単一遺伝子疾患の両方の検出を簡素化できる可能性があります。ロー氏らはまた、LRSが子癇前症のような妊娠合併症の検出に使用できることも実証しています[2]。
ロー氏らは、セルフリー長鎖DNAの生物学に関する興味深い洞察を提供し、出生前の環境におけるいくつかのLRS対応アプリケーションの概念実証を行ないました。私たちは、スループット、コスト、サンプル調製、一貫性など、臨床LRSをスケールアップする上での課題を認識していますが、当社のLRSコスト低下の研究は、これらの障壁のほとんどが急速に消滅する可能性があることを示唆しています。
[1] Loらは、PacBioメチル化シーケンサーを使用。オックスフォード・ナノポア(ONT.L)技術もDNAメチル化を読み取ることができる。
[2] 子癇前症検出のための他の多項目解析アプローチと併用。
新しいブログで、ここ数ヵ月の当社戦略のボラティリティに関するARKの考えをお伝えしています。以下に抜粋を掲載しますが、全文はark-invest.comでお読みください。
世界経済は史上最大の技術革新の渦中にあるため、ほとんどのベンチマークは危うい状況にあるとみられます。多くのイノベーション関連銘柄とは異なり、株式ベンチマークは記録的な高値で売られており、過去12ヵ月の累計ではS&P500が26倍、ナスダックが127倍と、バリュエーションも過去最高値に近づいています[1]。しかし、14のテクノロジーを伴う5大イノベーションプラットフォームは、ベンチマークが象徴する既存の世界秩序を変革する可能性が高いのです。その結果、DNA配列解析、ロボティクス、エネルギー貯蔵、人工知能、ブロックチェーン技術などが規模を拡大し、収束するにつれて、今後5年から10年の間に「試行錯誤」した投資戦略は期待を裏切ることになると考えます。
5年を投資期間と想定した場合、これらのプラットフォームに対する当社の予測は、現在の当社の戦略が今後5年間に30~40%の年複利収益率を達成する可能性があることを示唆しています。言い換えれば、もし私たちの調査が正しければ、そして私たちは、イノベーションに関する私たちの調査が金融界で最も優れていると信じていますが、私たちの戦略は今後5年間で3倍から5倍に価値を持つことになるのです。しかし、今年が終わりに近づくにつれ、投資家は「安全策」を取り、今後10年間は平均的なリターンさえ生み出せそうにないと私たちが考えるベンチマークに近づくことに興味を示しているようです。ARKが電気自動車(TSLA)やビットコインを研究し投資していた初期の頃と同様に、破壊的イノベーションはディープバリューの領域にあると思われます。過去8年間の調査によると、その機会は、現在の10~12兆米ドル(世界の公開株式時価総額の約10%)から、今後10年の間に200兆米ドル超に拡大する見込みです。
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[1] 第三者機関より入手したデータ(12/16/21終値時点のBBG調べ)
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