本レポートは、2022年5月16日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#316」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
アルゴリズム型最大のステーブルコインであるUSTが米ドルとのペッグ（連動）を破棄して等価性を失い、最終的に崩壊に至るデススパイラルを引き起こしたため、暗号資産市場は先週、急激に悪化しました。先週末に始まった崩壊の前、USTと、USTの価格安定性維持のために使用されることを目的とした仲間の暗号資産であるLuna（ルナ）は、それぞれ約187億米ドル、280億米ドルと評価されていましたが、この記事を書いている時点で両者を合わせた時価総額はおよそ20億米ドルで、先週から96%減少しています。いくつかの取引所は取引を停止または上場廃止にしており、また、バリデータもその基盤となるTerra（テラ）ブロックチェーン上の取引を停止したり制限したことがあるため、この20億米ドルという評価額ですら、不正確なものにみえます。
Terraの崩壊は、その価格安定メカニズムに起因していると私たちは考えています。銀行の現金や現金類似品で1対1の完全担保のステーブルコインであるUSDCとは異なり、TerraはUSTの需要の変化を吸収するためにLunaを使ってアルゴリズム的に米ドルとの価格連動を維持しようとしていました。この戦略は比較的安定した市場環境では有効でしたが、幅広い売り込みにより、USTやLunaを含むすべての暗号資産に対する需要が減少し、UST価格を安定させるために必要な裁定取引が投資家にとって魅力的でなくなったのです。このようなシナリオでUSTのペッグを守るために設立されたLuna Foundation Guardがペッグをバックアップするために軍資金の30億BTCを投入し、失敗したことから状況は悪化しました。
USTとLunaのクラッシュを引き起こしたことに加え、Terraは暗号資産史上最大のレイヤー1ブロックチェーン障害となるかもしれず、関連するすべてのプロトコルと暗号資産に影響を及ぼしました。5月7日時点でブロックチェーン上のDeFiに固定されていた約280億米ドルの価値のほとんどが蒸発しました。プルーフオブステークのブロックチェーン上に構築されたLunaの価格暴落はまた、ネットワークのセキュリティに負の外部性をもたらし、ネットワークオペレータは残りのオンチェーン価値を守るためにブロックチェーンをオフラインにせざるを得なくなりました。
Terraの破綻は、暗号資産の時価総額で測定した場合、同市場の歴史の中で最大の失敗例の1つです。発行済ビットコインの7％が盗まれた2014年のMt.Gox（マウントゴックス）事件と比較しても、 Terraの崩壊は暗号資産市場の約3％を破壊しました。
Terraの破綻により暗号資産全般、特にステーブルコインに対する規制が強化される中、ビットコインやイーサリアムなど、より安全で保守的なブロックチェーンが暗号資産市場のエコシステムにおいてシェアを拡大し続けるでしょう。
今週の 13Dファイリングよると、暗号通貨取引所 FTX の創業者兼CEOであるサム・バンクマンフリード氏が、Robinhood（ロビンフッド） 社の株式 7.6% を取得したことが分かりました。申請書には、同氏が「現在、Robinhood社の支配権を変更したり、影響を与えたりするための行動を起こす意図はない」と記されていますが、13D申請は通常、パッシブな保有を示す13G申請とは異なり、アクティビスト投資家に関連したものです。ウォールストリート・ジャーナルによると、バンクマンフリード氏の投資額は6億4800万米ドルで、2.8％の議決権を獲得しましたが、これは、同社の独立性を保証すべき創業者による60％を超える所有率をはるかに下回っています。
今年初め、FTXは自社のプラットフォームで株式取引を提供する計画を発表しました。今週、FTXのブレット・ハリソン社長は、FTXのプラットフォームでApple株を取引する様子を映したスクリーンショットを公開し、この発表をフォローアップしました。バンクマンフリード氏の動きは、Robinhoodの株価が昨年7月のIPOから株価が70％下落した今、Robinhood社を支持する強いシグナルであるようにみえます。
FTXとCoinbase（コインベース）は、株式に対する戦略で袂を分かっているようです。先週の決算発表で「従来の証券プラットフォームを所有することの戦略的優位性」について質問されたCoinbaseは、「暗号資産の普及を大幅に加速する」ことに役立たない限り、「従来の証券を提供する予定はない」と回答しています。
DeepMindはこのほど、Atari（アタリ）のビデオゲーム遊びからロボットアームによるブロック積み上げまで、604のタスクをこなすマルチモーダル、マルチタスクAIモデルである「Gato」に関する論文を発表しました。この「基盤モデル」は、制御、視覚、言語のさまざまなデータセットで独自にトレーニングされており、同じニューラルネットワークで下流のさまざまなタスクを実行することができます。わずか12億個のパラメータしか持たないこのモデルは、604のタスクのうち、450のタスクで50%のエキスパートスコアよりも高いスコアを出しました。一方、OpenAIのGPT-3のパラメータ数は1,750億と100倍以上です。さらに、また規模が大きくなるにつれて、DeepMindはGatoを一段と賢くスマートにする可能性があります。
スタンフォード大学による基礎モデルの分析から情報を得たARKのBig Ideas 2022では、AI経済が2030年までにおよそ25兆米ドルの企業価値を生み出す可能性があるという試算で、その財務的な可能性を浮き彫りにしました。
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