Newsletter #322:生体内遺伝子編集研究が遺伝性多発神経障害の治療法開発へ前進を示す、他。

作成者: ARK Invest|2022/06/28

本レポートは、2022年628にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#322」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 生体内遺伝子編集研究が遺伝性多発神経障害の治療法開発へ前進を示す

Intellia Therapeutics (NTLA:インテリア・セラピューティクス) 社と Regeneron Phamaceuticals (REGN:リジェネロン・ファーマシューティカルズ)社 は、昨年の末梢神経学会において、遺伝性トランスサイレチン アミロイドーシス (hATTR) 多発神経障害[1] 患者を対象としたCRISPR Cas9 を用いた生体内遺伝子編集療法に関する世界初のデータを発表し、新たな歴史を刻みました。 hATTR はアミロイド蛋白質が蓄積する疾患であり、治療しなければ、心臓や神経といった複数の器官に機能不全を引き起こす可能性があります。注目すべきは、TTR遺伝子を編集することで、持続的な血清TTRを低下させ、慢性的な治療の必要性をなくす1回限りの治療法を提供できることを実証したことです。

今週、同じ研究者が、4つの用量コホートで治療を受けた15人のATTRv-PN[2] 患者を対象とした進行中のフェーズ1試験の中間データを新たに発表しました。これらの患者は、どの用量でも持続的な血清TTRの低下を示し、最初のコホートでは持続期間が12ヵ月に達しました。特に注目すべきは、最高用量コホートにおける平均TTR低下率が、6ヵ月後時点でもまだ93であったことです。

サンプルサイズは小さかったものの、持続的な血清TTRの低下は、これがATTRv-PN患者を治癒するための1回限りの治療法となる可能性を示しています。

[1] このマイルストーン試験の結果は、『New England Journal of Medicine』に掲載されました。

[2] 多発性神経障害を伴うATTRアミロイドーシス(ATTRv-PN)

 

2. 3件目の「ブリッジ」ハッキングにより、2022年までに盗まれた資金が10億米ドルに増加

2月以来、3回目となるDefiブリッジハッキングが起こり、泥棒がイーサリアムをHarmonyブロックチェーンに接続するHorizon Bridgeプロトコルを制御する2-of-5」マルチシグネチャ(マルチシシグ)ウォレットにアクセスし、1億米ドルを盗み出しました。このハッキングは、3月下旬に「5-of-9」のマルチシグネチャウォレットを侵害し、約6億2千万米ドルを盗み出したRonin(ローニン)ブリッジハッキングに似たものでした。 2月に起きた3億2,300万米ドルのWormhole(ワームホール)ブリッジハッキングに加え、Horizonの攻撃により、クロスチェーンブリッジから盗まれた総額は、今年これまでに10億米ドル以上になっています。

マルチシグネチャウォレットは秘密鍵の漏洩リスクを複数の関係者に分散させますが、最近のハッキングは、2-of-5および5-of-9方式[3] では、パブリックブロックチェーン間でブリッジされる数億米ドルを十分に保護できないことを物語っています。Roninのようなブリッジは、9つの鍵のうち4つを1つの当事者が管理していたため、特に脆弱性が高いのです。

それにもかかわらず、パブリックブロックチェーン間で資金を動かしたいという欲求は、依然として驚くほど高いままです。プレイ・トゥ・アーンのゲーム「Axie Infinity」を運営するRoninブリッジのチームは最近、暗号通貨取引所のBinance(バイナンス)が主導した4月の150米ドルの資金調達ラウンドで、ハッキングの被害者に一部弁済し、今週中に事業を再開すると発表しました。

PolkadotCosmosのような相互運用性に焦点を当てたブロックチェーンエコシステムは、信頼できるブリッジの弱点から恩恵を得ることができます。これらのネットワークは、信頼できる仲介者や従来のブリッジを必要とせず、資産やメッセージが互換性のあるチェーン間を安全に移動できるようにする共有セキュリティモデルを活用しようとするものです。

[3] マルチシグネチャウォレットは、取引を承認する(すなわち署名する)ために複数の関係者を必要とします。例えば、2-of-5マルチシグネチャウォレットは、5人のうち2人の署名を必要とします。

 

3. Cruise社の自動運転タクシーサービスが商用化へ 

今週、Cruise社はサンフランシスコ市において、自動運転タクシーサービスとして初めて、完全自動運転によるサービス料金を課金する許可を取得しました。General Motors(ゼネラルモーターズ)社が過半数を所有するCruise社は、午後10時から午前6時までの夜間走行は時速30マイル(mph)に制限されているものの、Uber社の価格を15下回っています。

ARKのリサーチによると、自動運転タクシーサービスは、1マイルあたり0.25米ドルという低価格でも採算の取れる規模で運営できる可能性があります。これは、消費者が時間をどのように評価するかによっては、必要ないレベルかもしれません。当社のリサーチによると、1マイルあたり0.60米ドルから1米ドルの範囲の価格帯が、大きな需要を喚起するはずです。したがって1マイルあたり6〜7米ドルというCruise社の価格はかなり高く、もっと低価格で需要を喚起する余地があります。

GM社のCEOであるメアリー・バーラ氏は、長期的には1マイルあたりの乗車コストが1米ドル以下になる可能性があると示唆し、Cruise社の元CEOであるダン・アンマン氏は、その収益が2030年までには500億米ドルに拡大する可能性があることを示唆しました。コストを下げるには、Cruise社は車両の稼働率を上げなければならないと考えています。このことは、日中の許可だけでなく、乗客の待ち時間を最小限に抑えるために、自動運転タクシーの台数を十分なレベルまで拡大できるかにもかかっていると考えられます。

 

 

 

 

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