本レポートは、2022年7月5日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#323」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. 大型AIモデルがグラフィックデザインを変革する
By William Summerlin | @summerlinARK
Analyst
OpenAIのDALLE-2モデルは、テキスト指示に基づいた驚くほどクリエイティブな画像で世界を魅了しています。例えば、「銀河系でVRゴーグルを装着したゴッホの油絵風のアルバート・アインシュタイン」の画像を作成するように指示すると、モデルは以下のような画像を作成しました。
出典： @Dalle2Picsが2022年6月7日にツイートした資料のスクリーンショット
ARKの最近のTwitter調査によると、人間のグラフィックデザイナーがこれらの画像を再現するには5.25時間以上かかり、平均時給を約29米ドルと仮定するとおよそ150米ドルのコストがかかるようです[1]。DALLE-2はまだ商用価格を発表していませんが、A100で22秒の計算をした場合、1つの画像に対する推論コストは0.01米ドル程で、人間の労働コストより99.99％以上低くなると推定されます。その結果、強力なAI画像モデルが人間のグラフィックデザイナーに取って代わる可能性があるかどうかについて議論してきました。
DALLE-2のようなツールは、静止画、音楽、動画などのリッチコンテンツを誰でも瞬時に、しかも最小限のコストで生成できるようになり、クリエイティブコンテンツへのアクセスを民主化するはずだと考えられます。DALLE-2は、ストック画像を提供するビジネスを破壊する可能性がありますが、グラフィックデザイナーは、クライアントとこのテクノロジーをつなぐ重要なインターフェイスとして進化していくと考えています。グラフィックデザイナーは、AIモデルのニュアンスを学び、「ゴッホ風」「ピカソ風」の画像を生成するためのクリエイティブなフィルターをかけることができるようになるでしょう。
DALLE-2は、下の2枚の画像に示すように、元のDALLE-1を飛躍的に進歩させました。ブレークスルーはまだ始まったばかりだと言えます。
出典: OpenAIが公開した画像のスクリーンショット
DALLE-2は、GPT-3の1,750億個より1桁以上少ない120億個のパラメータで、右のような画像を生成しており、モデルサイズを拡大することでDALLE-2の性能が向上することを示唆しています。また、ARKのリサーチに基づくと、AIの学習コストは年間60％減少するはずであり、つまりは現在のコストで今後5年以内に100倍のモデルを学習させることができるようになると示唆しています。ARKのリサーチディレクターであるブレット・ウィントンがツイートしたように、3億5,000万個から200億個のパラメータにモデルを拡張させると、以下のように言語が再作成されました。もしDALLE-2が100倍までスケールアップしたら、他にどんなタスクを達成できるようになるでしょうか。
出典：@wintonARKが2022年6月26日にツイートした資料のスクリーンショット
[1] 米国労働統計局のデータセットに基づく。
2. ビットコインの採掘でメタン排出量を削減できる可能性
By Sam Korus | @skorusARK
Associate Portfolio Manager
EPAによると、「メタンは大気中の熱を閉じ込める力が二酸化炭素の25倍以上ある。」そうです。その結果、石油生産者は天然ガスをフレアリングして二酸化炭素に変換し、メタンの排出量を減らしています。このプロセスは有効ですが、効率は92%に過ぎません。
2021年、世界のエネルギー生産者は、中南米の天然ガス需要にほぼ匹敵する1,400億立方メートル（140bcm）を超える天然ガスをフレアリングしました。また、下図に示すように125bcmを排気し、メタンを直接大気中に放出しました。
メタン排出量が急増したのは、生産者がメタンの排出を減らすインセンティブがほとんどないためですが、ビットコインがこの状況を変える可能性があります。ビットコインマイニングは、エネルギー生産者に、メタン排出に代わる自主規制のインセンティブを与える可能性があります。Upstream Data社のような革新的な企業は、天然ガス発電機を使ってビットコインマイニングのハードウェアに電力を供給しており、フレアリング作業よりもはるかに効率的にメタンを燃焼させることができます。
ARKの現在のリサーチは、フレアリングされたりベント（排気）されるはずの天然ガスによって生成された電力の平準化コストは、多くの上場ビットコインマイニング企業が今日電力に支払っている約0.03米ドルよりも低いことが示唆しています。もっともらしいシナリオでは、ビットコインマイニングは排出量を削減できるだけでなく、ビットコインの採掘を行なうピュアな事業者[1]を市場から排除する価格にもなり得るのです。
[1] 「ピュアな」というのは、事業の唯一の収益発生メカニズムとしてのビットコインマイニングを意味します。
3. 半導体市場は悪化している
By Frank Downing | @downingARK
Analyst
先日、コンセンサス予想に沿った数字を発表したMicron社ですが、同社の第4四半期の収益予想は、91億4,000万米ドルから68億～76億米ドルへと17～26％減少しました。 また、「横ばい」の予測を大幅に修正し、今年度のPC販売台数は、過去20年間で最速となった第4四半期のPC販売台数の伸びに対する周期的な停滞、インフレの進行、地政学的緊張、中国でのロックダウンなど様々な要因から10％減少する と予想しています。
Nvidiaのグラフィックスプロセッシングユニット（GPU）の再販価格は、1年以上前からPC需要が弱まることを警告してきました。2021年初頭から、同社のGPU「RTX 3070」の価格は、以下のように発売以来初めてメーカー希望小売価格（MSRP）に対して65％以上下落しました。
出典: StockXのデータを基に作成。
ARKが以前に指摘したように、GPUベースの暗号マイニング機器の需要の減少は、暗号通貨価格の下落だけでなく、イーサリアムがこの秋にProof-of-Stakeマイニングに移行し、GPUマイニング機器の需要がなくなる可能性があることも踏まえ、価格に影響を及ぼしています。私たちは、エコシステム全体で在庫が積み上がっていると考えています。Intel社は予想を上回る在庫水準で価格を引き下げていると報じられており、Micron社のクラウド顧客も手持ちの在庫を増やしています。個人消費の減速は、企業やデータセンター分野にも波及する可能性があります。
4. NATOが10億ユーロのベンチャーキャピタルファンドを計画
By Maximilian Friedrich | @mfriedrichARK
Analyst
先週、ウクライナに関する首脳会談の傍ら、北大西洋条約機構（NATO）は、欧州加盟国22ヵ国が出資する10億ユーロのベンチャーキャピタルファンドを発表しました。「NATOイノベーションファンド」は、人工知能、オートメーション、エネルギー、宇宙といった分野のデュアルユース[1] テクノロジーに焦点を当てたスタートアップ企業やベンチャーキャピタルファンドに投資する予定です。
NATOファンドは、CIAやその他の米国諜報機関が支援し、1990年代から非営利団体として成功を収めてきたベンチャーキャピタルファンドであるIn-Q-Telを参考にするのが得策でしょう。ヨーロッパのスタートアップ企業やイノベーションのエコシステムは、欧米間にあるベンチャーキャピタルやテクノロジーのギャップを縮めることができるNATOファンドを歓迎するはずです。今日、欧州の投資家は、世界の最大手民間企業15社の株式の2％しか保有しておらず、欧州の主要な後発民間企業への投資の3分の1以下しか占めていません。NATOイノベーションファンドのような、より技術志向のベンチャーキャピタルファンドがあれば、欧州はもっと恩恵を受けることができると私たちは考えています。
[1] 「デュアルユース」とは、民生用と軍事用の両方に使用できる技術のこと。
5. ビットコイン・マンスリーの6月号レポート
By Cathie Wood | @CathieDWood
Founder, CIO, CEO
市場の急速な変化を考慮して、先月ARKは、関連するオンチェーンアクティビティを詳述し、ブロックチェーンデータの開放性、透明性、可用性を紹介する「収益報告書」であるThe Bitcoin Monthlyを発表しました。
The Bitcoin Monthly6月号をダウンロードするには、購読をお申し込みください。また、取り上げられているトピックについては以下をご覧ください。
The Bitcoin Monthly 6月号レポートで取り上げたトピックは以下の通りです。
- ビットコインは31,780米ドルから19,980米ドルまで下落し、6月の1ヵ月間を40％近く下げて終えた。
- CelsiusとThree Arrows Capitalが破たんし、暗号資産市場での伝染は続いている。
- 市場の伝染がビットコインを降伏に追い込む。
- 実現損失が過去最高となったにもかかわらず、未実現損失はさらなる下げを許容する可能性がある。
- 不透明なマクロ環境がビットコインの回復と見通しを圧迫している。
ARK’s statements are not an endorsement of any company or a recommendation to buy, sell or hold any security. For a list of all purchases and sales made by ARK for client accounts during the past year that could be considered by the SEC as recommendations, click here. It should not be assumed that recommendations made in the future will be profitable or will equal the performance of the securities in this list. For full disclosures, click here.