Newsletter #329:米国財務省によるTornado Cashの取り締まりは、暗号通貨のプライバシー管理にとって問題のある前例となる、他。

作成者: ARK Invest|2022/08/15

本レポートは、2022815ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #329」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 米国財務省によるTornado Cashの取り締まりは、暗号通貨のプライバシー管理にとって問題のある前例となる

By Frank Downing | @downingARK
Analyst

先週、米国財務省の外国資産管理局(OFAC)は、イーサリアムのブロックチェーン上でプライバシーを保護した取引を可能にするトークン「ミキシング」サービスであるTornado Cash(トルネードキャッシュ)に制裁措置を講じました。OFACは、北朝鮮のLazarus Group(ラザルスグループ)などの犯罪組織がマネーロンダリング目的で同サービスを活用していると指摘しました。その結果、Tornado Cashのウェブサイトと関連する44のイーサリアムアドレスを特別指定国およびブロック対象者リスト(SDN)に追加しました。米国の法律に従い、ノードオペレーターのInfura(インフラ)とAlchemy(アルケミー)はTornado Cashへのアクセスをブロックし、GitHubはコードリポジトリを削除して貢献者のアカウントをブロックし、Circle(サークル)はTornado Cashウォレット内のUSDC凍結させました

重要なのは、Tornado Cashは、プライバシーを求める暗号ユーザー向けのスマートコントラクト(オープンソースソフトウェアの一部)であることです。言い換えれば、OFACは「コード」がプライバシー関連の懸念に対処する際の「喉のつかえ」であるとして、初めて制裁措置を講じ、Tornado Cashサービスに触れたトークンの開発者と下流の受信者に大規模な法的・経済的影響を与える決定を下したのです。

オンチェーンのデリバティブ取引所であるdYdXTornado Cashに触れたアドレスをブロックし、自分のETHが関係していたことを知らなかったユーザーに衝撃を与えました。また、オランダ当局は、Tornado Cashの開発者であるAlexey Pertsevを、このオープンソースコードへの彼のソフトウェア貢献がマネーロンダリングを促進したもうひとつの「喉のつかえ」であるとして、アムステルダムで逮捕しました。

外国のハッキンググループを混乱させるためにTornado Cashに制裁措置を講ずることは、OFACが鈍器を使ってインターネット上のプライバシー権を制限する可能性のある危険な先例を作ったようなものです。暗号資産コミュニティーの他の人々も同意見です。今回の制裁は、暗号資産の独立性を長期的に維持するために、深い分散化が重要であることを強調していると私たちは考えます。

 

2. 新たに導入される請求コードが、慢性疾患のデジタル治療を可能にする

By Simon Barnett | @sbarnettARK
Analyst

新型コロナウイルスの大流行は、デジタル・ヘルスケア・サービスの導入を加速させました。デジタル治療(DTx)とは、病状の予防、治療、および管理を目的として設計されたFDA(アメリカ食品医薬品局)承認のソフトウェア製品です。今回のパンデミックは、バーチャル・ヘルスケアのインフラを拡大するきっかけとなり、DTxの普及に拍車をかけることになりました。

歴史的には、多くのDTxが、不安障害やオピオイド使用障害など、認知行動療法(CBT)を伴う行動障害やその他の慢性疾患に対してFDAの承認を受けています。また、DTxの中には患者のデータを分析し、医師の処方を必要とするものもあるため、Novartis(ノバルティス)社やSanofi(サノフィ)社などの大手製薬会社は、時には医薬品と組み合わせて共同で商品化することに同意しています。

こうした進歩にもかかわらず、DTxは広範な成功を収めたとは言えません。FDADTxを承認した後、米国メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)は、払い戻しを認める前にその合理性と必要性を評価しなければならないのです。広範な保険適用がない場合、医療介入は生き残りに苦労します。当社のリサーチによると、最近まで米国の商業的、および公的支払機関はDTxの広範囲な補償ポリシーを認めていませんでした。しかし、20224月、CMS処方箋によるデジタルCBTの暫定的な請求コードを発行し、DTxを払い戻す意思があることを示しました。

私たちのリサーチは、DTxは通常の医薬品よりもはるかに迅速かつ低コストで開発できる可能性があることを示唆しています。一部の疾患には効果が期待できないものの、DTxは他の疾患に対して有効な治療法を提供できる可能性があります。CMSがコーディングガイドラインでこの新しい給付カテゴリーを引き続きサポートするならば、DTxの普及は多くの行動、神経、および慢性疾患にとって変革をもたらす可能性があります。

 

3. 静止画から動画へ、加速し続けるAI

By Brett Winton | @wintonARK
Director of Research

その仕上がりは驚異的ですが、AIモデルが動画をリアルに編集できるようになることに、もはや驚く人はいないでしょう。静止画のAIシステムと同様、DALL-E 2」の新しいモデルは、テキストベースのコマンドによる動画制作が可能です。このモデルは、たとえば火山の断崖や砂漠の真ん中でプレーするテニスプレーヤーのような動画を作成することができるのです

概念的には、動画は静止画の進歩に追従するはずです。ARKの予測では、AIのトレーニングコストが急落し、ハードウェアの投資額が増加することから、動画のコストが静止画のコストに比べてどの程度遅れているのかを推定することができます。ARKBig Ideas 2022の中で述べたように、2030年までにAIのトレーニングコストは年間で2.5分の1まで低下し、AIのハードウェア投資は少なくとも2025年まで毎年2倍に増え続けると予想されます。この組み合わせにより、AIシステムの能力は今後5年間で数千倍に向上することが示唆されています。1

30秒の動画を生成するのは、静止画に比べてどのくらい難しいのでしょうか?テレビ広告の画素数は、DALL-E 2で作成した静止画の約2,000倍と言われています。この比率を参考にすると、2026年には30秒のAI動画が、現在のAI静止画生成システムと同じように生産的で刺激的なものになると考えられます。

広告、メディア配信、エンターテイメントへの影響は深刻です。同じ予算があれば、広告主は1万種類ものコマーシャルを作ることができ、それぞれがある瞬間に同じ考えを持つ視聴者の集まりに合わせることができるのに、なぜ数百万人を対象とした1本のテレビコマーシャルに10万米ドルも費やすのでしょうか?今後も引き続きご注目ください。

[1]ARKは、年間投資額が今後5年間で20倍以上に増加し、同じ期間でAIトレーニングのコストがほぼ100分の1に減少すると見込んでいます。これは、2,000倍を超える能力の向上を示唆しています。

 

 

 

 

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