本レポートは、2022年8月29日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #331」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Ali Urman | @aurmanARK
Analyst
先週、ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)は、連邦政府が資金提供した研究成果へのアクセスの拡大に関する前回の覚書を発展させた、新しい政策指針を発表しました。この新しいガイダンスは、12ヵ月間の出版禁止措置を撤廃し、連邦政府が資金提供した査読付き論文への即時、デジタル、およびオープンアクセスを保証し、研究の「広範かつ迅速な共有」を可能にするものです。
この新しい要件を促進するために、研究者たちは助成金申請書に出版とデータ共有のための費用を予算として含めて計上することができます。さらにOSTPは、全米科学技術評議会のオープンサイエンス小委員会(SOS)と協力し、研究機関が論文やデータへのパブリックアクセスを提供するインセンティブを生み出すことを期待しています。
さらに、エネルギー省、国立衛生研究所(NIH)、全米科学財団などの連邦機関は、若い科学者により公平で多様な助成金の機会を提供することに重点を置くことになるでしょう。
従来、科学的発見に関するデータへのアクセスは、有料の壁に阻まれており、高価であるがゆえにイノベーションを阻害してきました。科学研究の民主化に向けたこの意義深い一歩は、再現可能な科学の実現に貢献すると考えられます。
By Sam Korus | @skorusARK
Associate Portfolio Manager
先週、T-Mobile社とSpaceX社は、SpaceXの第2世代Starlink衛星を活用し、サービスが行き届いていない地域で携帯電話サービスを提供する計画を発表しました。テキストメッセージと音声通話に特化したこのサービスは、ハードウェアを変更することなく、既存のスマートフォンを米国の地方都市(遠隔地)に接続することができます。ミッドバンドアンテナは、各地のセルで毎秒2〜4メガビットの帯域幅を提供し、1,000〜2,000の同時通話を可能にする予定です。
この新しいサービスで、SpaceX社とT-Mobile社は、サービスが現在ほとんど、あるいはまったくない地域をつなぐための競争に参入することになります。 Lynk社とAST Spacemobile社は既存のデバイスを衛星に接続しようとしており、またIridium社もこの分野でのビジネス展開を示唆しています。そしてARKは、Apple社が9月7日のイベント「Far Out」 で、グローバルスター衛星により緊急時にiPhoneのメールの送受信が可能になると発表する可能性が高いと見ています。
この激しい競争下において、SpaceX社の衛星は、スターリンクインターネットと新しい携帯電話サービスの両方のプラットフォームとして機能し、単一のサービスのみよりも優れた価格を提供することができると考えられます。宇宙のイノベーションは光の速さで進んでいるのです。
By Tasha Keeney | @TashaARK
Analyst
先週、Tesla社は一部のユーザー車両を対象に、完全自動運転(FSD/Full Self Driving)ベータ版ソフトウェアを大幅にアップグレードして公開しました。特筆すべきは、FSDベータ版の10.69バージョンには、自動運転の知覚と予測に最適化されたニューラルネットワークである「占有ネットワーク」が初めて実装されていることです。同社のオートパイロット・ソフトウェア・チームのディレクターであるアショク・エルスワミ氏は、最近のCVPR(Computer Vision and Pattern Recognition)会議での基調講演で、占有ネットワークの大きな利点について次の2つを挙げて説明しました。(1)*ボクセルが占有されているかどうかを問うことで、物体の体積占有率を予測する機能。(2)個々のカメラフレームではなく、動画を用いて3次元空間における各ポイントの将来の動きを予測する機能。その結果、より少ない計算能力で、遠く離れたの交差点を横断する車両の速度を推定するFSDソフトウェアの能力が20%向上しました。
競合他社がカメラ、LiDAR、およびレーダーを組み合わせて使用するのに対し、Tesla社は占有ネットワークにより、カメラのみで物体の深さと速度を推定することができる点が特徴的です。このアップデートにより、将来のFSDリリースのための貴重なフィードバックとトレーニングデータが生成されます。競合他社よりも桁違いに多い10万台以上の車両データに基づいて、同社のFSD機能は、自動運転タクシープラットフォームに向けた競争において独自の地位を確立する可能性が高いと言えるでしょう。
*ボクセル (voxel) とは、体積の要素であり、3次元空間での正規格子単位の値(-1~1)を表す。「ボクセル」という用語は「体積 (volume)」と「ピクセル (pixel)」を組み合わせたかばん語である。(出所:Wikipedia)
By Nick Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
先週木曜日、NFTマーケットプレイスX2Y2は、取引所がクリエイターを犠牲にしてNFT購入者の取引コストを引き下げたことを発表しました。「X2Y2の購入者は、プロジェクトに貢献したいロイヤリティの額を選択できるようになりました。有力なアグリゲーターは、近い将来、同様の機能を提供する予定です。そのため、X2Y2は準備を整え、市場の動きを常に把握しておきたいと考えています。」
歴史的に見ると、NFTクリエイターの収入に占めるロイヤリティの割合は、彼らのプロジェクトの健全な流通市場のおかげで、かなりの割合を占めています。NIKEがNFT分野に参入して以来得た1億8,500万米ドルの収益の約半分は、ロイヤリティが占めています。NIKE社のような巨大企業が弱体化することはないでしょうが、ロイヤリティを失うと、小規模または独立したNFTプロジェクトが台無しになる可能性があります。
X2Y2が提案しているように、取引所がクリエイターへのロイヤリティの代わりに「チップ」を採用した場合、NFTの市場力学に甚大な影響を与える可能性があります。そして、ロイヤリティがない場合、2つの結果が起こりうると想定できます。まず1つ目は、NFTプロジェクトの作成に対する関心が低下することです。そして、もう1つは、一次販売を促進するために、新規および既存のプロジェクトがNFTを「*スプレー・アンド・プレイ(spray & pray)」し、すべてのプロジェクトの価値を希薄化させることです。いずれの場合も、購入者にロイヤリティを回避するオプションを与えることは、NFT取引所とクリエイターコミュニティを対立させることになるでしょう。
*きちんと狙いを付けずにスプレーを噴射するようにフルオート射撃を行って、自分の撃った弾が標的に当って欲しいと祈る行為を指すスラング。つまり、技術的に未熟な人がとにかく撃ちまくること。
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