本レポートは、2022年9月19日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #334」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics
電気自動車(EV)の販売台数が2016年に世界全体で約50万台に達した後、2017年時点では、様々な機関が今後5年間の販売台数は、ARKが「Big Ideas 2017」レポートで予測した数値である1,700万台を大きく下回る200万台規模になるだろうと予測していました。[1]
現在、私たちはこうした予測の精度を評価しています。EV Volumesは、最初の8ヵ月間を基準として、今年のEV販売台数は約750万台に達すると予測しています。これは、ARKが予測した1,700万台を大きく下回るものの、ライトの法則がコンセンサス予測よりもはるかに効果的に普及の規模と速度を捉えていることを示唆するものです。新型コロナウイルス危機とサプライチェーンのボトルネックによって2年間生産と販売が妨げられたにもかかわらず、Tesla、Xpeng、Nioなどの企業は、ほとんどの自動車アナリストが予想しなかったような急激な成長率を記録しました。
今後5年間のEVの予測を掘り下げると、一般的な予測の直線的な成長率とライトの法則から導かれる指数関数的な成長率の違いを改めて確認することができます。ライトの法則によると、生産台数が累計的に2倍になるごとに、コストが一定の割合で低下し、EVのような新商品をより安価に購入できるようになって、普及率が向上します。このライトの法則によるEVの低価格化に伴うこの10年間のEV販売の軌跡は、次の図の普及曲線に非常に分かりやすく表れていると思います。
その普及曲線を今後5年間に当てはめてみると、自動運転タクシーのプラットフォームが存在しない場合、EVの販売台数は6倍以上の4,500万台となり、コンセンサス予想の2,000万台の倍以上になると予測しています。2,000万台と4,500万台の差は、以下に示すように、それぞれ線形成長曲線と指数関数的成長曲線によって特徴づけることができます。指数関数的な成長曲線は、S字カーブとも表現されます。
自動運転技術が予想通り定着すれば、EVのS字カーブ普及サイクルが自動運転技術のS字カーブ普及サイクルを促進し、EVの販売台数は下図で示す通り、今後5年間で8倍近く、2022年の約750万台から2027年の約5,900万台へと急増するはずです。つまり、新たな感染症やそれに伴うサプライチェーンのボトルネックなど、他の災害が発生しない限り、当社の2027年に向けた予測は5,900万台となり、コンセンサス予想の2,000万台の3倍に近い数字となります(下図参照)。
[1] 出典: https://valueplan.files.wordpress.com/2017/06/big-ideas-2017.pdf
By Tasha Keeney, CFA | @TashaARK
Director of Investment Analysis and Institutional Strategies
先週サンフランシスコで、Cruise(クルーズ)社の完全自動運転型車両に試乗してきました。運転席にも助手席にも人間がいない状態でした。スピードは遅いものの、スムーズな走行が可能で、予期せぬブレーキがかかったのは、渋滞をすり抜けるオートバイに反応したときだけでした。現在は、サンフランシスコの限られた地域で夜間のみ利用が可能ですが、同社が営業時間とサービスエリアを拡大すれば、「近いうちに」もっと便利なサービスになるはずです。
最近、経営陣は、年内にCruise社のサービスをオースティンとフェニックスに拡大する計画を発表しました。その背景には、 HD(高精度3次元)マップからの脱却があるのでしょう。HD(高精度3次元)マップとは、LiDAR(ライダー)と呼ばれるレーザーのシステムによって作成された非常に詳細な3Dビジュアライゼーションで、リアルタイムの道路状況を比較するための「基準情報」として使用されます。Cruise社のCEOであるカイル・ヴォクト氏は現在、地図は「なくてはならないもの」から「あれば便利なもの」になりつつあると考ているようです。この結論は、これまでHDマップに頼ってこなかったTesla社のアプローチに一定の正当性を与えています。HDマップは複雑でコストがかかるため、Cruise社がこの手法から脱却したことが、今後90日以内に未進出のオースティンやフェニックスに進出できる理由の1つかもしれません。
これまでのCruise社の比較的慎重な広報戦略を考えると、新たに2都市への進出を公約したことは意義深いことです。同社の成功の鍵は、ロボットタクシーサービスの規模を拡大し、車両の稼働率を上げ、人間主導のライドヘイリング(配車サービス)会社の価格よりも大幅な低価格化を実現することでしょう。現在、Cruise社はUberの価格をわずかに下回る価格設定となっています。ARKでは、ロボットタクシーサービスの需要を促進するためには、マイルあたりの価格の引き下げが鍵になると考えています。
By Ali Urman | @aurmanARK
Analyst
Intellia Therapeutics(インテリア・セラピューティクス/NTLA)社とRegeneron Pharmaceuticals(リジェネロン・ファーマシューティカルズ/REGN)社は、昨年の末梢神経学会において、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)多発神経障害患者におけるCRISPR Cas9ベースの生体内遺伝子編集治療に関する世界初のデータを発表し、歴史に名を刻みました。ATTRは、アミロイドタンパクが蓄積する疾患であり、治療しなければ、複数の臓器、特に心臓(心筋症)および神経(多発性神経炎)の機能不全を引き起こす可能性があります。 特に注目すべきは、TTR遺伝子を編集することで、持続的な血清TTRの低下を1回で実現し、慢性的な治療が必要ないことを実証したことです。
今週、同じ研究者らは、進行中の心筋症 (CM) に対する ATTR の第 I 相試験からの新しいデータを共有し、多発神経障害で見られる TTR の減少が心筋症でも再現できるかどうかの判断を行ないました。ATTR-CM患者を0.7mg/kgと1.0mg/kgの2つの用量コホートで治療したところ、いずれも28日目にそれぞれ93%と92%という持続的な血清TTRの減少を示しました。
さらに、Intellia Therapeutics(NTLA)社は、血管外に体液が蓄積し、組織、手足、生殖器、顔、そして最も問題となる気道や腸管の腫脹を引き起こす稀な疾患である遺伝性血管性浮腫(HAE)に対するフェーズ1/2試験のデータを発表しました。NTLA-2002の単回投与により、8週目には血漿カリクレインが25mgで平均65%、75mgで92%減少したのです。低用量コホートでは、HAE発作が91%減少しており、これはクラス最高の成績であると考えられます。
サンプル数は少ないものの、血清TTR、血漿カリクレイン、HAE発作が持続的に減少したことから、これらの1回限りの治療でATTR-CMやHAE患者を治癒できる可能性が示唆されました。
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet
木曜日の早朝、イーサリアムのProof-of-Stakeチェーンがアクティブになったことを意味する2匹のパンダがスクリーン上で点滅すると、開発者たちとそのコミュニティは歓声を上げました。その模様はYouTubeでライブ配信されており、 13分後にバリデータが新しいチェーンのブロックを含む最初のトランザクションを承認し、「The Merge」が成功したことを公式に示すと、祝賀の声が沸き起こりました。
2015年のネットワーク立ち上げ以来、熱い議論が交わされてきたProof-of-Stakeへの移行が成功したことは、イーサリアムにとって記念碑的な偉業です。ライブ配信されたイベントには、世界中からさまざまなコミュニティのリーダーが参加し、長年にわたる貴重な作業を振り返り、将来への期待を表明しました。注目すべき成果のトップは、イーサリアムの電力集約型GPUへの依存を解消したことと、イーサーのインフレ率を低減させたことです。しかし、祝賀会の参加者の多くは、「The Merge」がイーサリアムの規模拡大と使いやすさの向上に向かう最初のステップに過ぎないと認識しています。
コミュニティのリーダーたちはまた、イーサリアムの分散化と、8月上旬のTornado Cash(トルネードキャッシュ)関連の制裁後の緊急課題であるProof-of-Stake形式での検閲耐性の維持にも焦点を当てました。現在、ステークされたイーサーの合計54%を占めているLido、Coinbase、およびKrakenは、理論的にはネットワーク上の取引を検閲することが可能です。イーサリアムのネットワークの健全性に焦点を当てたSuperphiz(スーパーフィズ)は、リスナーに対して、自宅で独自にステークするか、Rocket Pool(ロケットプール)のような分散型のパーミッションレスソリューションを使用するように促しました。私たちの見解では、より中央集権的な大手プロバイダーを通じてステークすることで得られる利便性や幅広いDeFiサポートよりも、ベースレイヤーでの分散化がより重要です。
SECのゲーリー・ゲンスラー委員長が、イーサリアムの新しいモードや、Coinbaseのようにstaking-as-a-serviceを提供する企業は、証券法の対象となる融資サービスに相当すると木曜日に示唆したことから、ネットワークの集中化に関する懸念は、さらに緊急性を増しています。
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