本レポートは、2022年10月31日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #340」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Nick Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
先週木曜日、Meta社が期待はずれの第3四半期収益を報告し、同社の株価を約20%急落させたことから、マーク・ザッカーバーグ氏のメタバースへの野望は、非難を浴びることになりました。Facebook、WhatsApp、Instagramといった同社のコアプラットフォームは、エンゲージメントとユーザー数の増加によって測定されるように堅調ですが、投資家はザッカーバーグ氏がメタバースに投入している途方もない資本に対して激怒しています。さらに、Meta社のReality Labs部門は、第3四半期にわずか2億8,500万米ドルの収益で37億米ドルの損失を出しました。ザッカーバーグ氏は、「Reality Labsの経費は2023年に再び大幅に増加する」と述べ、投資家をさらに苛立たせました。
マクロ経済の課題が山積しているにもかかわらず、ザッカーバーグ氏は、コンピューティングの未来を支配するための「探求」に力を入れているようです。私たちは、拡張現実と仮想現実(ARとVR)が次のモバイル、および家庭用コンピューティングプラットフォームになった場合、この分野でのリーダーシップを確保するためにMeta社が現在費やしている年間100~150億米ドルを上回る投資収益率が得られると見ています。とはいえ、ARとVRが大衆市場に対応できるまでスケールアップしないのであれば、同社の現在の投資ペースはとんでもない失敗になりかねません。
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet
先週行なわれたApp Store Review Guidelinesの更新で、Apple社はパブリックブロックチェーンの利用について、業界、そしておそらく同社にとっても大きな影響を与える可能性のある変更を導入しました。新しいガイドラインでは、ユーザーはApple社のアプリ内購入システムを通じて非代替トークン(NFT)の購入をする必要があり、「NFTの所有がアプリ内の特性や機能のロックを解除しないことを条件に、アプリはユーザーが自身のNFTを表示できるようにしてもよい。」と記載されています。つまり、Apple社は30%のアプリ内課金をする一方で、NFTのアプリ内決済の柔軟性を制限し、さらに悪いことにNFTの機能性を制限することになるのです。後者の規定は、コミュニティがNFTの実用性を取引やステータスの通知以上に高めようとする意欲を失わせるものだと私たちは考えています。もし同社が、ユーザーがNFTの特徴や機能のロックを解除することを妨げるなら、ゲームはいったいどれだけやりがいのあるものになるのでしょうか。
また、Apple社は「アプリは、ライセンスキー、拡張現実マーカー、QRコード、暗号通貨、暗号通貨ウォレットなど、コンテンツや機能のロックを解除するために独自のメカニズムを使用してはならない。」として、他のロック解除機能も禁止しています。
そして同社は、分散型認証の新たな形態をターゲットにしているようです。例えば Sign-In With Ethereum (SIWE) のようなサービスは、暗号通貨ウォレットに保存された秘密鍵を使用して、ユーザーがアプリケーションにログインできるようにするものです。これは、Apple、Google、Facebookなどの中央IDプロバイダーに依存するログイン方法よりも、はるかにセキュリティとプライバシーが高いと考えられる代替手段です。同時に、Apple社もこのようなサービスの利点を認めており、同社のハードウェア上で独自の秘密鍵ベースの認証サービスであるPasskeyを展開する計画を立てています。Apple社は、外部暗号通貨ウォレットによるサインインや機能・コンテンツのロック解除を禁止しており、よりオープンで分散化されたIDソリューションへのアクセスを提供するよりも、ユーザーを独自のハードウェアプラットフォームに閉じ込めることに重点を置いているようです。この取り締まりは、Apple社がパブリックブロックチェーン技術を自社のプラットフォームに対する脅威と見なしていることを示唆しています。また、同社が将来のブロックチェーンベースのイノベーションに最適なプラットフォームとなることを阻み、同時に独占禁止法の監視の目が向けられることになるのではないかと考えています。
By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics
先週、ロイターは、自動車メーカーの電気自動車とバッテリーへの投資計画を追跡するシリーズの第3弾を発表しました。2018年の最初の分析以来、これらの投資計画は次のグラフに示すように、900億米ドルから1兆2000億米ドルへと13倍にスケールアップしています。
自動車メーカーは、1兆2,000億米ドルの投資のうち、約6,000億米ドルを電気自動車(EV)に集中させるとしており、資本効率にもよりますが、今年のEV生産台数は、800万~900万台の規模から約4,000万~9,000万台規模に拡大する可能性を示唆しています。ARKの調査によると、2016年の時点で自動車産業は生産台数あたり14,000米ドル以上の固定資産投資を行なっていました。この固定費ベースでは、6億米ドルあれば、年間約4,300万台のEVの生産能力を確保できていました。以前、Ford社は、効率化によりEVの生産に必要な設備投資を50%削減できると示唆していました。そして、Tesla社はその予想が正しいことを証明しました。その結果、6,000億米ドルあれば、次の図のように年間約8,600万台の電気自動車を生産することが可能となり、現在の世界の自動車生産台数にほぼ匹敵します。
ロイターのレポートは、2030年までの世界の自動車メーカーの設備投資計画に焦点を当てていますが、ARKは、競争によって投資計画が増加し、スケジュールを加速させると考えています。自動車業界全体が内燃機関からバッテリーへ、そして人による運転から自動運転へと変化する中で、従来の自動車メーカーの多くが倒産する可能性があるのです。
By Tasha Keeney, CFA | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies
先週、フォードとフォルクスワーゲンは、ロボタクシーに特化した合弁会社であるArgoAIを閉鎖しました。親会社は、Argo社の従業員の一部を吸収しますが、全員ではありあません。
私たちは、自動運転タクシーは特定の地域内では勝者がほとんどを占める市場になると見ています。Cruise社とWaymo社はすでに商用サービスを開始しており、Tesla社は自動運転モビリティに不可欠な数十億マイルに及ぶ実走行データを使用して、すべての競合他社を打ち負かすことができます。これまでで最大の犠牲者であるArgo社は、2年前に70億米ドル以上の資産評価を受けていました。勝者総取りの市場は、さらなる失敗例が現れる可能性が高いことを示唆しています。私たちは、自律走行型のプラットフォーム作成を成功させる企業はほとんどないと見ています。
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