Newsletter #347:ARK Investを代表してキャシー・ウッドより年末のメッセージ、他。

作成者: ARK Invest|2022/12/28

本レポートは、20221227ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #347」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. ARK Investを代表してキャシー・ウッドより年末のメッセージ

By Cathie Wood | @CathieDWood
Founder, CEO, CIO

 

過去2年間、リスクオフの市場環境が投資家をベンチマークに回帰させ、破壊的イノベーションに焦点を当てた戦略を不利にしてきたことは認識しています。イノベーションは問題を解決するものであり、通常は困難な時期に注目を集めますが、一部の企業は、金利上昇の影響に備え、研究開発やその他の投資を抑制し、キャッシュを確保しようとしているのかもれません。

将来への不安が蔓延している昨今ですが、危機は歴史的に見ればチャンスを生み出すものです。[1] BofA の最新のファンドマネージャーサーベイによると、現金残高がこれほど高水準になったのは 2001 年の 9.11 危機以来であり、投資家は 2009 4 月以来の債券オーバーウェイトとなっています。12月には、CBOEの株式プット/コールレシオ[2] 2.0を超え、過去最高水準に達しました[3] これは、ハイテク・通信バブルと世界金融危機の両方を凌ぐ水準で今にして思えば、いずれも差別化された方法で資金を活用する絶好の機会でした。投資家に資金がある限り、今回も同じように、株式市場が回復すれば、イノベーション戦略が大きな利益をもたらすとARKは考えています。

ARK Investは、ニュースレターでお分かりのように、今後5年間の新技術の商業化に注目しています。今年最後のニュースレターでは、命を救う早期がん検診の普及、知識労働者の生産性を飛躍的に高める「組み立てライン」としての人工知能、民間企業の参入とライトの法則によるロケット打ち上げや宇宙開発の加速を特集しています。ご存知のように、ARKはライトの法則を中心にリサーチしており、これが我々の戦略の差別化につながっています。このようなリサーチは従来の金融機関ではほとんど見られないと思いますので、ARK Investがアセットアロケーターのための分散投資戦略としての役割を担っていることが浮き彫りになっています。

皆さまのARKへのご支援と、私たちが問題を解決し、世界を大きく変えると信じて疑わないイノベーションへのご支援に、心からの感謝を捧げます。

Cathie

[1] 他の人が貪欲なときは恐れなさい、他の人が恐れているときは貪欲になりなさい。- ウォーレン・バフェット 「あらゆる危機の真っ只中に、大きなチャンスが潜んでいる」 - アルバート・アインシュタイン

[2] プットコール比の詳細についてInvestopedia参照。https://www.investopedia.com/ask/answers/06/putcallratio.asp

Investopediaによると、プットコールレシオは、市場全体のムードを測るために投資家に広く使われている測定値です。プットまたはプット・オプションは、あらかじめ決められた価格で資産を売却する権利です。コールまたはコールオプションは、あらかじめ決められた価格で資産を購入する権利で。トレーダーがコールよりもプットを多く買っている場合、それは弱気心理の上昇を示唆します。プットよりもコールを多く買っている場合は、強気市場の到来を示唆しています。プットコール比は、取引されたプットオプションの数を取引されたコールオプションの数で割ることによって計算されます。プットコール比が1であれば、コールの買い手とプットの買い手の数が同じであることを示しています。しかし、通常、コールを買う投資家の方がプットを買う投資家より多いため、比率が1であることは、市場のセンチメントを測定するための正確な出発点ではありません。そのため、株式の平均プットコール比は0.7がセンチメントを評価するための良い基準と考えられています。[3] シカゴ・ボード・オプション取引所(CBOE)の株式プット/コール比は、20221221日に2.03を記録しました

 

 

2. 多発性がんスクリーニング検査で500米ドルの保険還付金を受ける可能性

By Simon Barnett | @sbarnettARK
Director of Research, Life Sciences

 

従来のスクリーニング検査とは異なり、多発性がん早期発見(MCED)検査では、1回の採血で多くの種類のがんが検出されます。私たちは、今後数年のうちに、MCED検査が標準的な単一がん検査を補完するようになると予測しています。私たちのリサーチによれば、MCED検査はがん死亡率を15%減少させることができますが、長期的な予後調査の必要性から、保険会社は数十年間は広範囲の保険金の償還を承認することはないでしょう。

現在の実績データに基づくと、45歳~75歳の成人に対して500米ドルのMCED検査を保険会社が払い戻す可能性があるのは、次の図の通りです。[1] 過去5年間にCGScost-of-goods-sold)が90%削減され、500米ドルを大きく下回ったことから、分子診断薬企業はその価格で粗利益を上げ、ビジネスで競争することが可能になっています。メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が償還価格を設定すれば、MCEDベンダーはおそらく、性能を犠牲にして原価を下げるのではなく、検査の性能を上げ、原価を安定させることを選択するでしょう。

 

 

出所ARK Investment Management LLC2022年、1226日時点のデータ。情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有の推奨と見なされるべきではありません。

[1] 標準的な50,000米ドル / 生涯の閾値を使用すると、保険会社は45歳以上の成人に対して500米ドルのMCED検査の費用対効果を考慮する余地があります。

 

 

3. ジェネレーティブAIはマクロ経済に重大な影響を与える可能性が高い

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet

 

この記事は、Andrew Kimと共同で執筆しました。


米国の労働人口は1870年の1,200万人から2021年には15,000万人以上と一貫して増加してますが、従業員一人当たりの労働時間は次に示すグラフのように0.37%の複合年率で減少しています。技術革新のおかげで、労働者はより少ない労働時間でより多くの生産を行っているのです。1900年代初頭、Fordの画期的なコンセプトである組立ラインにより、従業員一人当たりの労働時間の減少を4倍以上に加速し、年率1.39%まで達しましたが、世界恐慌と第二次世界大戦により、その勢いは収まってしまいました(次のグラフを参照)

 

 

今年は、ChatGPTDalle-2といった生成型AIブレークスルーにより、従業員一人当たりの労働時間減少が加速する時代が再び訪れる可能性があります。今度はAIが知識労働者の「組み立てライン」となり、1900年代初頭以来の速度で従業員1人当たりの年間労働時間を削減することになるでしょう。

この技術革新が大量の失業を引き起こすと結論づけるのは、技術的破壊に対する何世紀も前の反応を思い起こさせるものですそして、私たちのリサーチは、まったく逆のことを示唆しています。 つまり、AIが生み出す市場機会は、平均労働時間の減少にもかかわらず、雇用と国内総生産(GDP)を大幅に増加させ、間違いなく生活の質を向上させる可能性を秘めているのです。

 

 

 

4. SpaceXのおかげで、ロケット打ち上げがようやくライトの法則に従う時代へ

By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics

 

ライトの法則とは、「生産台数が累積的に2倍になるごとに、特定の技術に関連するコスト一定の割合で低下する」というもので。もちろん、コストが下がるのは、企業がより低いコストに集中して事業を行う場合のみではありますが。何十年もの間、政府は宇宙産業を、コストを下げれば需要が高まる可能性があるということをほとんど考えずに運営してきたように思います。そして、2つの図に示すように、SpaceX社が市場に参入してきました。

 

 

SpaceXは、明らかにライトの法則で予測されるコスト削減を実現しています。より正確には、ARKのモデリングによると、SpaceXはすでに軌道に乗るまでのキログラムあたりのコストを2桁下げており、下図のように、軌道までの累積質量が2倍になるごとに15%程度のコスト低下が見られます。SpaceX社はStarlink衛星でロケット打ち上げの需要を喚起しているため、最適化してコストを下げる経済的インセンティブがあります。

 

 

SpaceX社がStarshipロケットを開発するにつれて、打ち上げコストは下がり続けると思います。さて次の重要な課題は「SpaceX社は、どれだけ早くStarshipを軌道に乗せるか、そして、どれだけ早く再利用可能なStarshipを開発するのか。」ということです。

 

 

 

 

 

 

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