Newsletter #353:MicrosoftがBingとOpenAIを導入し、Googleに対抗する戦略的な動きを展開、他。

作成者: ARK Invest|2023/02/13

本レポートは、2023213ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #353」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. MicrosoftBingOpenAIを導入し、Googleに対抗する戦略的な動きを展開

By William Summerlin | @summerlinARK
ARK Venture Committee Member & Analyst

 

Microsoft社が、OpenAIAIチャット機能を搭載して同社の検索エンジン「Bingをアップグレードしたことで、テクノロジー業界は騒然としています。多くのアナリストは、これを検索市場で大きなシェアを獲得することが目的だと考えているようですが、私たちは、Microsoft社の狙いは、Googleの検索マージンを下げることだけにとどまらず、Alphabet社がGoogle Cloudなどの事業を赤字で運営するのをけん制することにあると考えています。

このBingAIを巡る一連の騒動を受けて、Googleも検索エンジン内にAIチャット機能をリリースせざるを得なくなるかもしれませんが、そうなると、GPT-3などの言語モデルの現在の推論コストが検索のコストよりも大幅に高いため、Googleの収益を圧迫するものとなる可能性があります。その上、AIチャットの収益化モデルは、Googleが得意とする広告ベースのモデルと比較すると不透明です。現在、Googleは、収益性の高いビジネスモデルで1日あたり最大85億件の検索を処理しており、これが第4四半期に年換算で約20億米ドルの損失を出したクラウドなどの不採算ビジネスラインの資金源となっています。したがって、Microsoft社はGoogleの検索マージンを引き下げることで、競合しているAlphabet社の他の多くの事業にも圧力をかけることが出来るのです。

しかし、Googleにとって幸いなことに、推論コストは年率で最大70%低下し続けています。そして、当社のリサーチによれば、数年後には最小値になるはずです。とはいえ、短期的には、Microsoft社がその競争優位性を発揮する可能性が高いと言えるでしょう。

 

2. Kraken、米国での暗号資産ステーキング・サービスを停止することでSECと和解

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet

 

先週、米国証券取引委員会(SEC)は、仮想通貨取引所のKraken(クラーケン)が「staking-as-a-service(サービスとしてのステーキング)」商品を証券として登録せず、個人投資家に適切な情報開示と保護措置を提供していないと主張し、同社を起訴しました。Kraken3,000万米ドルの罰金を支払い、米国におけるステーキング・サービスを停止することでSECと和解しましたが、海外でのステーキング・サービスはそのまま残しました。

主要な業界関係者は、この和解に強く反発しています。今週初め、CoinbaseCEOのブライアン・アームストロング氏は、「SECがリテール顧客のために米国で暗号資産のステーキングを廃止したいと考えているという噂」に反応し、「執行による規制」は機能せず、これまでもFTXのような企業が海外で活動することを促してきたと指摘しました。SECコミッショナーのへスター・ピアース氏も、SECの決定に強く反対する声明を発表しています。

昨年、複数の暗号資産仲介業者が破綻した後で、今回のKrakenの和解は、連邦証券法を遵守するよう取引所に圧力をかけるSECの意図を浮き彫りにしています。業界の反発は、デジタル資産のどの特性が規制対応の引き金になる可能性があるかを明確にする法案を議会に提出するよう求めているようです。

特に注目すべきは、Krakenに対するSECの強制措置は、Proof-of-Stake*ネットワーク自体に直接参加する個人ではなく、取引所を仲介するステーキング・サービスに焦点を当てたものであることです。私たちは、この動きは、基盤となるブロックチェーン・プロトコル自体ではなく、サービスとしてのリテール・ステーキングを自社のビジネスモデルの鍵とした取引所に影響を与えると見ています。実際、SECProof-of-Stake(プルーフ・オブ・ステーク/PoS)ネットワークの分散化を促進する可能性があります。言うなれば、米国での「staking-as-a-service(サービスとしてのステーキング)」の禁止は、PoSネットワークにとって「中国のマイニング禁止」の瞬間のようなもので、セルフカストディ(自分の保有する暗号資産を自分自身で管理・運用する形態)、分散化、ネットワークの健全性を時間をかけて促進するかもしれません。

とはいえ、より中央集権的で便利なサービスを提供する米国の取引所は、規制の裁定に苦しみ、 staking-as-a-service(サービスとしてのステーキング)」の規制に影響されない海外の取引所にビジネスを奪われる可能性があります。米国の規制当局の判断は善意ではありますが、結果として、個人がサービスとして便利なステーキングのソリューションを海外に求めざるを得なくなり、危険にさらされてしまう可能性があるのです。

*Proof-of-Stake ネットワークでは、ブロックチェーンのバリデーター(検証者)がトークンをロックしてコンセンサス(ネットワーク上の新しい取引の確認)に参加し、その対価としていくらかの暗号資産を獲得しています。

 

3. RokuDoorDashがフードデリバリーを大画面に映し出す

By Nicholas Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager

 

Roku社とDoorDash(ドアダッシュ)社は、フードデリバリーをRoku社のプラットフォームに統合することで、テレビの視聴体験に革命を起こすために提携しました。モバイル機器を使ってテレビ広告にアクセスすると、消費者はDoorDash社のアプリに誘導されます。この新しいClick-to-Offer(クリック・トゥ・オファー)体験により、消費者はお気に入りのレストランからの限定オファーに簡単にアクセスできるようになり、また、企業側もターゲットを絞って購買意欲を高める広告キャンペーンを展開することができるようになります。この統合により、消費者がシームレスで便利な方法で料理を注文できるだけでなく、企業も投資効果を追跡し、測定することができるようになるのです。

Roku社の内部調査では、よりインタラクティブで関連性の高い食品広告の実現可能性が浮き彫りにされました。Rokuユーザーの約33%は毎週テイクアウトやフードデリバリーを注文しており、また約36%はスキャンが可能なQR コードやテキストメッセージなどのインタラクティブなオファーに興味を持っていることが分かったのです。Roku/DoorDash は、ボトムファネル(購買に非常に近い見込み客を対象とした)CTV (コネクテッドTV) 広告の最も直感的な使用例の一つであり、フードサービス業界にテレビ広告を通じて購買意欲の高い顧客をターゲットにする機会を提供するに違いありません。

この新しいClick-to-Offer(クリック・トゥ・オファー)を体験してみるには、Wendy‘sのテレビ広告を探してみてください。対象となるRokuユーザーが15米ドル以上の買い物をすれば、5米ドルの割引が受けられます。

 

 

 

 

 

 

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