本レポートは、2023年7月10日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #374」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Nick Grous
Associate Portfolio Manager
先週水曜日、Meta社はInstagramと統合されたテキストベースのソーシャルメディアアプリである、「Threads(スレッズ)」をリリースしました[1]。ユーザーは、既存のInstagramアカウントを介して新しいThreadsアカウントを作成するため、Instagramの月間アクティブユーザーである20億人以上[2]に対してシームレス、且つ認証済みのオンボーディングを可能にします。Threadsでは、ユーザーは500文字までのテキストに加えて、リンク、写真、5分以内の動画を投稿することができます。このアプリの最初のバージョンのフィードは時系列ではなく、検索エンジンも含まれていませんが、その急速な普及は、ThreadsがTwitterの強力な競合相手になる可能性を示唆しています。下図で示す通り、Threadsは、本日発表された時点で1億人を超えるユーザーを獲得しており、史上最も急速に成長している消費者向けアプリです。さらに、Threadsの初期のエンゲージメントは衝撃的で、ローンチから24時間以内に[3]、 9,500万のThreadsが1億9,000万の「いいね!」を集めました。
Meta社がオンラインプラットフォームの立ち上げ史上、最も成功したことは称賛に値しますが、ThreadsがSnapchatに対するStoriesの成功の再現となるか、それともTiktokの継子のポジションに追いやられてしまったReelsの再現となってしまうかは、時と共に分かることでしょう。そしてまた、Twitterがボットの表面化と排除のためにアクティビティを制限しているという批判に直面していたのと同時期に、Instagramのインフラとソーシャルグラフを活用し、洗練されたインターフェイスと分散化[4]を匂わせたことは、市場開拓戦略として秀逸であった、と後々証明される可能性もあります。とはいえ、戦いは始まったばかりです。「Twitter Killer」[5]として成功するために、Meta社はTwitterが世界初のオンライン公共広場としてスポンサーしてきたニュースやスポーツ、論争について、同社のユーザーの友人グループが特集して議論することに賭けているようです。これも、いずれは勝敗が明らかになるでしょう。
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet
先週の木曜日、Lightning Labs(ライトニングラボ)社は人工知能を搭載したエージェントがビットコインのライトニングネットワークを使用してオンライン取引ができるようにするための新しい開発者ツールを発表しました[6]。概念的には、AIエージェントはインターネットリソースにアクセスし、AIモデルをつなぎ合わせることで、ウェブサイトの開発や新しい広告キャンペーンの作成といった複雑なタスクを自律的に計画し、実行することができるようになるはずです。
インターネットネイティブな決済システムと取引できる機能は、AIエージェントの実現に不可欠です。例えば、新しい広告キャンペーンを計画し実行することを任されたAIエージェントは、Dalle-2のような別のAIモデルに外注したグラフィックデザイン費用に対する支払い能力がなければ、それほど大きな成果は得られません[7]。
Lightning Labs社の新しいツールが採用されれば、追加のベンダー向けに従来の支払い方法を事前に設定することなく、AIエージェントの認証によりオンラインでリソースを調達できるようになります。さらに、ブロックチェーン技術のグローバルな性質と迅速な決済時間と、オープンソースのモデルや大規模なトレーニングデータのプールを収益化する革新的な方法が合わさることで、AIサービスをより公平に提供できる可能性があります。パブリック・ブロックチェーンとAIを組み合わせることで、開発者は両者の技術の導入を加速できるかもしれません。
By Tasha Keeney | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies
以前ARKは、自動運転タクシーのプラットフォーム事業が商業化すれば、UberやLyftの現在の20〜30%を上回る、最大60%のテイクレート(売上総利益からの取り分の割合)を引き受ける可能性があると仮定していました。しかし現在、私たちは、そのテイクレートは80〜90%程度にまで及ぶのではないかと考えています。
自動運転配車サービスは、事故の最大80%の削減[8] や、人間の関与がほとんど、あるいは全くないことで生まれるその他の効率性など、人間が運転する配車サービスよりも優れた体験を消費者に提供するはずです。この分析に基づき、私たちは自動運転配車サービスの利用率を、業界全体で統計的に観察された利用率[9]の上限である60%と見積もっていました。
市場経済学に関する新しい論文[10]では、Coasianの取引コスト原則が自動運転タクシーサービスに適用される可能性が示唆されています。これは、以前のテイクレートの推定では考慮されていなかった要素です。 Faire社の戦略・分析部門の責任者であるホッケンマイヤー氏は、マーケットプレイスでは、回避できる取引コストに基づいて料金が設定されると仮定しています。つまり、Zillowは検索コストを削減し、eBayは交渉コストを削減し、Airbnbは公正な取引コストを保証するエンフォースメントに注力し、Amazonは流通コストを削減しています。自動運転配車サービス事業者は、実行コストの中でも特に重要である、優秀なドライバーを見つけるコストを削減できるはずです。
この可能性を説明するために、自動運転配車サービスにおけるTesla社の野望を考えてみましょう。プラットフォーム手数料は80~90%に達する可能性があり、総収入の10~20%が、車両所有者に同社のネットワークへの参加を促すインセンティブとして残ります。ARKの以前のリサーチ[11] では、Tesla社やその他の自動運転プラットフォームのプロバイダーは、規模が拡大すれば、1マイルあたり0.20~0.30米セントで運営するよう車両所有者に補償できる可能性が示唆されていました。その結果、1マイルあたり2米ドル以上の価格設定、つまり現在のUberとほぼ同じ[12]価格設定を行なえば、自動運転プラットフォームの事業者は、潜在的に総収益の80~90%を獲得できる可能性があり、これは当初の推定をはるかに上回っています。
この分析には以下のような注意点があります。1)Tesla社は、ネットワークに参加する所有者に十分なインセンティブを与えるために、より高いテイクレートを提供しなければならないかもしれません。2)1マイルあたりのコストは車両の稼働率に依存するため、自動運転配車サービスが始まったばかりの段階ではおそらく低く、初期のテイクレートは若干低くなるかもしれません。3)プラットフォーム事業者が地域を超えて規模を拡大し、競争が市場に参入するにつれて、時間の経過とともにテイクレートは高いレベルから縮小せざるを得なくなる可能性があります。4)渋滞税のような追加コストにより、時間の経過とともにプラットフォームの1マイルあたりのコストが増加する可能性があります。
皆さんはどう思われますか?テイクレート90%は行き過ぎでしょうか? [13] ぜひ、ご意見を@tashaARKへツイートして教えてください。
[1] Perez, S. and Siberling, A. 2023. “Threads, Meta’s Twitter Competitor, Is Now Live.” Techcrunch. https://techcrunch.com/2023/07/05/threads-metas-twitter-competitor-is-now-live/.
[2] Barinka, A. 2023. “Meta’s Instagram Users Reach 2 Billion, Closing In on Facebook.” Bloomberg Technology. https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-10-26/meta-s-instagram-users-reach-2-billion-closing-in-on-facebook.
[3] Heath, A. 2023. “Threads already has over 95 million posts.” The Verge. https://www.theverge.com/2023/7/6/23786108/threads-internal-activity-data-exclusive-instagram-meta.
[4] Ghaffary, S. 2023. “What you need to know about Threads, Instagram’s new Twitter killer app.” The Verge. https://www.vox.com/technology/2023/7/5/23785140/threads-instagram-meta-twitter-killer-mark-zuckerberg-elon-musk.
[5] Isaac, M. 2023. “Threads, Instagram’s ‘Twitter Killer,’ Has Arrived.” The New York Times. https://www.nytimes.com/2023/07/05/technology/threads-app-meta-twitter-killer.html.
[6] Osuntokun, O. and Levin, M. 2023. “AI for All: Powering APIs and Large Language Models with Lightning.” Lightening Labs. https://lightning.engineering/posts/2023-07-05-l402-langchain/.
[7] Bonilla, B. 2022. “How Ad Agencies Are Using AI Image Generators—And How They Could Be Used In The future.” Adage. https://adage.com/article/agency-news/how-agencies-use-ai-image-generators-dalle-e-2-midjourney-and-stable-diffusion/2430126.
[8] Keeney, A. 2015. “Autonomous Vehicles Will Reduce The Chances Of Dying In An Auto Accident By Over 80%.” ARK Investment Management LLC. https://ark-invest.com/articles/analyst-research/autonomous-vehicle-safety/.
[9] Keeney, A. 2020. “Autonomous Ridehailing Could Be More Profitable Than We Had Modeled.” ARK Investment Management LLC. https://ark-invest.com/articles/analyst-research/autonomous-ridehailing-fees/.
[10] Hockenmaier, D. “The Concept That Explains Everything About Marketplaces.” https://www.danhock.co/p/transaction-costs.
[11] Keeney, A. 2022. “Autonomous Mobility: Autonomous Vehicles Are Likely To Cut The Cost Of Transporting Everything.” ARK Investment Management LLC. https://research.ark-invest.com/hubfs/1_Download_Files_ARK-.
[12] Helling, B. 2023. “Uber Cost: Fare Pricing, Rates, and Cost Estimates.” Ridester. https://www.ridester.com/uber-rates-cost/.
[13] Gurley, B. 2013. “A Rake Too Far: Optimal Platform Pricing Strategy.” Above The Crowd. https://abovethecrowd.com/2013/04/18/a-rake-too-far-optimal-platformpricing-strategy/.
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