Newsletter #384:開発者を怒らせたUnityの新しいランタイム料金、他。

作成者: ARK Invest|2023/09/18

本レポートは、2023年918にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #384」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 開発者を怒らせたUnityの新しいランタイム料金

By Nicholas Grous & Andrew Kim | @GrousARK
Associate Portfolio Manager & Research Associate

 

先週火曜日、Unity社はソフトウェア開発者に対し、2024年1月1日から新しいゲームをインストールする度に「ランタイム料金」を課金することを通知[1]しました。これまで同社は、リアルタイム開発プラットフォームの収益化[2]主にサブスクリプション料金によって行なっており、プラットフォーム上で作成されたビデオゲームの直接的な収益化は行なっていませんでした。このビジネスモデルは、Unreal Engineで制作されたビデオゲームの生涯収益が100万米ドルに達すると、その収益に対して5%の手数料が課される[3] Epic Games社のロイヤリティモデルとは異なります。Epic社のような収益分配契約の代わりに、Unity社は、インストールベースの手数料を選択し、クリエイターにプレイヤーのエンゲージメントの増加によるアップサイドを提供する仕組みです。

同社のゲーム開発者コミュニティは不快感を示していますが[4]、Unity社は新たな料金が影響する顧客は10%未満であると主張しています[5]。したがって、Unity社とその開発者コミュニティは、個人開発者やインディーズ開発者に対する潜在的な損害や、詐欺的または悪意のあるゲームのインストールのリスクについて建設的な話し合いを行なうことが望ましいでしょう。

 

 

2. 3Dプリンティングが大量消費者向け製品の生産に乗り出す可能性

By Tasha Keeney | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies

 

結合剤噴射法(バインダージェット)が話題になっています[6]。先週、Tesla社がExOne(現在はDesktop Metal)社のバインダージェット砂型をプロトタイピングに使用し、車両のサブフレームを鋳造するギガプレスでの生産工程にも使用する可能性があることが分かりました[7]。この変更により、Tesla社の設計検証コストは金属代替品のコストよりも最大 97%も低くなる可能性があります[8]

Apple社もまた、ステンレススチール製の時計フレームを製造するためにメタルバインダージェッティングを検討しており、材料の無駄を減らし、製造にかかる時間を短縮することを目指しています[9]。 同社はサプライヤーベースを開示していませんが、Markforged(マークフォージド)、Desktop Metal(デスクトップメタル)、Hewlett Packard(ヒューレット・パッカード)などの欧米企業[10]と同様に、Foxconn(フォックスコン)をはじめとする多くのアジア企業がメタルバインダーの噴射に関する専門技術を開発していることは分かっています。

長年にわたるプロトタイピングと少量生産を経て、最終用途部品を大量生産できるようになれば、3Dプリンティングにとって大きなブレークスルーとなるでしょう。2022年に、Apple社は約500万個のステンレススチールフレームの腕時計を販売し、Tesla社は年間数百万台の自動車を生産する予定です[11]。ARKの考察では、最終用途部品が3Dプリンティングにとって最大の市場機会をもたらし、今後4年間で業界を年率最大40%成長させ、今年の売上高が最大170億米ドルから2027年には最大700億米ドルに成長させる可能性があるとみています[12]

 

 

3. 現在の電力供給網が、電気自動車の大量普及を後押しする見通し

By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics

 

電気自動車(EV)の販売が拡大し続ければ、米国の電力網が圧迫されるのではないかという懸念が広がっていますが、ARKの計算結果はそうではないことを示唆しています。米国の年間走行距離は3兆2,600億マイル[13]であり、1日あたり約90億マイルです。EVが1kWhあたり約4マイル走行できるとすると[14]、米国で登録されている約2億8,500万台のすべての車両に電力を供給するには、送電網は1日あたり22億5,000万kWhを供給する必要があります[15]。下図で示す電力曲線は、日中の電力需給がどの程度変化するかを示しています。ピーク時以外の時間帯にEVの充電に電力が使われた場合、つまり谷がピークレベルまで引き上げられた場合、曲線は平坦になり、kwhは29億kwh増加します。これは、米国の自動車全体への電力供給に必要な22億5,000万kWhより30%多いです[16]

出典:米国エネルギー情報局、2023.“Hourly Electric Grid Monitor” 2023年9月15日現在のデータ。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。

もちろん、送電網は絶え間なく進化しており、また車両が電気自動車へ移行するには時間がかかります。例えば、EVの普及率が新車販売台数の100%に近づいたとしても、車両全体の移行に必要な時間は10年以上かかるため、仮に私たちの予想が外れた場合でも、送電網をアップグレードする時間は十分に残されているのです。

 

 

[1] Unity Technologies. 2023a. “Unity Plan Pricing and Packaging Updates.
[2] Unity Technologies. 2023b. “Plans and Pricing.”
[3] Unreal Engine. 2023. “Licensing Options.
[4] Totilo, S. 2023. “Unity rushes to clarify price increase plan, as game developers fume.” Axios.
[5] Unity Technologies. 2023c. “We want to acknowledge…”Twitter.
[6] For more information on binder jetting, see ExOne. 2023. “What Is Binder Jetting?
[7] Shirouzu, T. 2023. “Tesla reinvents carmaking with quiet breakthrough.” Reuters.
[8] Shirouzu, T. 2023. “Tesla reinvents carmaking with quiet breakthrough.” Reuters.
[9] Gurman, M. 2023. “Apple Tests Using 3D Printers to Make Devices in Major Manufacturing Shift.” Bloomberg.
[10] Sertoglue, K. 2022. “Foxconn and Triditive Partner To Develop New Metal Binder Jet 3D Printer.” 3D Printing Industry.
[11] Sellers, D. 2023. “Apple Watch Dominates The Market With 50 Million Units Sold In 2022.” Apple World Today. Gurman, M. 2023. “Apple Tests Using 3D Printers to Make Devices in Major Manufacturing Shift.” Bloomberg.
[12] Hubs Protolabs. 2023. “3D Printing Trends Report.”
[13] U.S. Department of Energy. 2023. “Annual Vehicle Miles Traveled in the United States.” Alternative Fuels Data Center, citing data published by the Federal Highway Administration Monthly Traffic Volume Trends Report.
[14] Inside EVs. 2023. “Tesla Model 3: Efficient On Paper, But Really Depends On The Driver.
[15] U.S. Department of Energy. 2023. “Vehicle Registration Counts by State.” Alternative Fuels Data Center.
[16] This assumes that current solar and wind can’t generate more electricity due to its intermittency.

 

 

 

 

 

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