本レポートは、2024年4月8日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #409」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Associate
先週、ARKリサーチアソシエイトのダニエル・マグワイアは、規制がいかに原子力の発展を妨げてきたかを詳述した論文[1] を発表しました。反原発感情や、より厳しい規制によってコストが大幅に上昇する以前は、米国と日本の原子力施設は、以下に示すように、導入された電力のメガワットが累積で2倍になるごとに、夜間建設コスト（OCC）[2] が約20％低下することを特徴とする学習曲線をたどっていました[3] 。ライトの法則に基づき、厳しい規制が米国の原子力発電所の建設と開発に3,450億米ドルものコスト超過を引き起こしていなければ、原子力エネルギーは今日の天然ガスよりも低コストであったと考えられます。
出典: ARK Investment Management LLC, 2024, Lovering 、他 2016; IAEA 2023; EIA 2022; World Nuclear News 2022（2023年10月時点）のデータに基づく[4]。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有の推奨とみなされるべきものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。
By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet
Cognition Labsは、ソフトウェアのバグをこれまでで最もうまく解決する[5] AIコーディング・エージェントである「Devin（デヴィン）」をリリースしてから1ヵ月も経たないうちに、競争に直面しています。オリジナルのSWE-benchベンチマークを作成したプリンストン大学の研究者たちは、SWE-agentと呼ばれるオープンソースのコーディング・エージェントをリリースしました。
SWE-agentは、GitHubで報告された実際のソフトウェアのバグを集めたSWE-benchにおいて、Devinの13.84%にほぼ匹敵する12.29%のスコアを記録しました。注目すべきは、Devinのパフォーマンスがデータセットの一部のケースで評価されたのに対し、SWE-agentの比較的印象的なスコアはデータセット全体に基づいていることです。以下に示す通り、データセット全体に基づいて評価した結果、3番目に優れたモデルのスコアはわずか3.79%で、Anthropic社のClaude 3 Opusでした。
出典: "Princeton-nlp/SWE-agent-Overview" GitHub。2024年4月6日現在のデータ。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。
重要なのは、SWE-agentはそれ自体がモデルなのではなく、あらゆる大規模言語モデル（LLM）のラッパーであり、コードエディターやコマンドラインのようなツールへのアクセスを提供し、複雑な問題を解決するために思考の連鎖を促しながら反復することができることです。
SWE-agentのようなエージェント型AIフレームワークの性能が、GPT-4やClaude 3 Opusのような既成のモデルを凌駕していることは、オープンソースコミュニティが問題解決のために有意義で斬新なアプローチをいかに迅速に生み出し、配布しているかを示しています。また、既存の世代モデルには改善の余地が大きいことも浮き彫りにしています。競争は始まっているのです。
Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics
長年にわたり、バッテリーコストの高さが、手頃な価格で長距離を走行できる電気自動車（EV）を製造する上での主な障壁となってきました。2015年以前は、バッテリーのコストが非常に高かったため、米国で航続距離が300マイルを超えるEVは存在しませんでした。そして2016年、この航続距離を超えた最初のEVの価格は10万米ドルでした。
この8年間で、テクノロジーの学習曲線により、価格は半分の5万米ドルまで下がりました。ARKのリサーチによると、バッテリーのコストと車両効率の改善により、メーカーは今後数年間で、十分な航続距離を備えたEVを大量生産し、採算の取れる規模にまで拡大できるはずです。
*2016-2023年モデル。出典: ARK Investment Management LLC、2023年、Kane 2022年のデータに基づく[6] 。予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。
BEV（バッテリー電気自動車）市場の覇権をめぐる競争では、大衆市場向けに採算の取れる生産ができるかどうかが、勝者と敗者を分けるはずです。航続距離への不安やおそらく政治的な懸念から、ハイブリッド電気自動車に生産の重点を戻す企業もあります。プラグインハイブリッド車（PHEV）を優先する企業は、BEVの学習曲線から外れることになるでしょう。私たちは、Tesla社が手頃な価格の自動運転BEVの未来を切り開く一方、BY社Dは手頃な価格のEVに注力していると考えています。
Lorenzo Valente | @ARKInvest
Research Associate
ビットコインコミュニティはBitVM（ビットコイン仮想マシン）の登場に大喜びしています[7] 。BitVMは、あらゆる計算をビットコインのブロックチェーン上で検証できるようにすることで、ビットコイン上でイーサリアムのようなスマート・コントラクトを可能にする新しいテクノロジーであり、これによりビットコインの生のスクリプト言語を通じてチューリング完全性が提供されます。
ライトニング・ネットワーク（ビットコインのオリジナル・レイヤー2スケーリング・ソリューション）に対する批判は、その開発の遅さと限られた機能を不服として、長年にわたって高まってきました。その結果、以下に示すように、2022年初頭以降、ライトニング・ネットワークのアクティブなチャネルの数は減少し、設立以来、その容量が3億米ドルを超えることはありませんでした。
出典: Bitcoin Visuals 2024[8] 本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券や暗号通貨の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去のパフォーマンスは将来の結果を示すものではありません。
BitVMのスケーリングに対する斬新なアプローチは、ユーザー、開発者、投資家の間で熱狂を巻き起こしています。ロビン・リーナス氏が初めてBitVMを紹介してから6ヵ月の間に、開発者、研究者、ベンチャーキャピタル企業の新しい波が、その可能性を探ることに強い関心を示しました。数多くの独立系プロジェクトが登場し、ビットコインの上に独自のレイヤー2ソリューションでBitVMを活用することを目指しています。ここ数年、ライトニング・ネットワーク関連企業に幻滅し、イーサリアムベースのインフラやアプリケーションにますます注力している投資家たちは、現在、新たなBitVM関連のベンチャーを支援し、資金を提供しています。
ビットコインのスケーリング・ソリューションやスマート・コントラクトが有望視され始めた初期の段階において、BitVMが火花を散らし、より多くの起業家が、最初で最も有名なブロックチェーンの最も困難な技術的問題に取り組むきっかけとなることを期待しています。
[1] Maguire, D. 2024. “Nuclear Energy Could Contribute Meaningfully To Securing Net-Zero Emissions” ARK Investment Management LLC.
[2] ライトの法則の理論通り。Winton, B. 2019. “Moore’s Law Isn’t Dead: It’s Wrong—Long Live Wright’s Law” ARK Investment Management LLC.参照。
[3] 「夜間建設コスト」とは、工事中に金利が発生しなかった場合の工事費のことで、言い換えれば、一晩で工事が完了した場合の工事費のことである。
[4] Lovering, J. et al. 2016. “Historical construction costs of global nuclear power reactors” Energy Policy. International Energy Agency. 2022. “Cost and Performance Characteristics of New Generating Technologies, Annual Energy Outlook 2022” World Nuclear News. 2022. “AP1000 remains attractive option for US market, says MIT.”
[5] Soja, J. 2024. “Cognition Labs’ Devin AI Agent Outperforms LLMs On Complex, Real-World Engineering Tasks” ARK Disrupt Newsletter.
[6] ARK Investment Management LLC. 2023. “Big Ideas 2023” Kane, M. 2022. "US: The Number Of EV Models With 300+ Miles Of Range Tripled in 2022" InsideEVs.
[7] ロビン・ライナスは2023年10月に発表したホワイトペーパーで、このブレークスルーについて述べている。Linus, R. 2023. “BitVM: Compute Anything on Bitcoin.” bitvm.org.参照。
[8] Bitcoin Visuals. 2024. “Lightning Network Channels.
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