本レポートは、2024年7月14日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #422」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Associate
先週、米国医師会(AMA)は、 Tempus AI(テンパスAI)社[1]に、同社のPurISTSMアルゴリズム検査に対する独自の臨床検査分析(PLA)コードを付与しました。2024年10月1日より、この新しいコードは、過去に配列決定された臨床検査室開発の検査(LDT)から得られたRNAデータのアルゴリズム解析を説明する最初の共通手順用語(CPT)コードとなります。この動きにより、AMAはAIを活用したアルゴリズムの償還を促進するための大きな一歩を踏み出しました。
PurISTSMは、進行膵臓がん患者を分子サブタイプに分類し、第一選択療法の管理に役立てるRNAベースのアルゴリズム検査の一つです。Tempus社は、厳格な臨床検証を通じて、PurISTSMがFOLFIRINOXとゲムシタビン・ナブパクリタキセルという2つの第一選択療法に基づいて患者の生存率を分類できることを実証しました。当社の見解では、RNAシーケンシングのこの画期的な進歩は、がん治療に革命をもたらす可能性のある個別化治療に不可欠なものです。
公的および民間の保険者からの認知度が高まっていることは、Tempus社のRNAプロファイリングの成功の重要性を強調しています。例えば、Mericare(メディケア:米国の高齢者および障害者向け公的医療保険制度であり、連邦政府が管轄している社会保障プログラム)のナショナル・ガバメント・サービスとCigna Health(シグナ・ヘルス)は、RNAプロファイリングが必要であり、特定の基準を満たせば保険の払い戻しが可能であることを認めています。
Tempus AIが提供する相同組換え欠損(HRD)や腫瘍起源(TO)を含むAI対応検査スイートは、シーケンシングデータを活用して臨床的有用性を高めています。PurISTSMの新しいPLAコードは、アルゴリズム主導の洞察に対する償還への道を開き、AI主導のヘルスケアにおける新たなパラダイムを確立する可能性があります。
Tempus社は、世界最大級のマルチモーダルデータライブラリーで精密医療を推進し、治療法の発見を促進して患者に合わせたケアを提供するAI対応ソリューションを提供することに専念しています。このアプローチにより、患者一人ひとりが集合的な知識と、真に予測可能な個別化された価値ベースの医療から恩恵を受ける確率が高まるはずです。
By David Puell | @dpuellARK
Research Associate
ドイツのザクセン州は、1月中旬に閉鎖された海賊版映画サイトMovie2kから約5万ビットコインを押収した[2]後、6月19日にその払い戻しを開始しました。オンチェーンデータプラットフォームで追跡したところ、この売却は米国で最も流動性の低いホリデーマーケットの一つである時期に積極的に行なわれ、7月5日にはビットコイン価格が17.8%下落して、5万3,509米ドルとなりました。今週末の時点で、ドイツの売却は完了しています。
かつてはビットコイン保有量で第3位の国であったドイツは、その座から完全に陥落しました。現在、米国が約20万7千ビットコインで首位を守り、続いて英国が約6万1千、ウクライナが約4万6千、エルサルバドルが約5,700となっています。
ドイツ政府によるこの売却は、ビットコイン市場において極めて重要な局面を迎えています。今後3ヵ月以内に、Mt.Gox(マウントゴックス)のハッキングによる約13万9千ビットコインが、手続きを監督する[3]管財人である日本の小林信海弁護士によって債権者に返還される予定です。さて、彼らはHODL(Hold On for Dear Life)する(後生大事に取っておく)のでしょうか。
By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist
先週、Tesla社はサイバーキャブの発表を8月8日から10月に延期しました。これはおそらく、設計チームに作業を完了する時間を与えるためか、ソフトウェアのアップグレードや試験的なライドヘイル(自動運転配車サービス)ネットワークの地域立ち上げとイベントを合わせるためでしょう。
ロボタクシーに特化したデザインを売り込む候補はテスラが初めてではありません。例えば、Waymo(ウェイモ)、Cruise(クルーズ)、Zoox(ズークス)は、ハンドルのないレンダリング画像や、ドライバーなしのロボタクシー運行をサポートするプロトタイプを公開しています。とはいえ、Tesla社は大規模な市場投入が可能な製造能力を持つ最初の企業となるでしょう。現在、商業用ロボタクシー運用の現在のリーダーであるWaymo社は数百台の車両を保有していますが、Tesla社は1日あたり4,500台以上の車両を製造しています[4]。
実用的なロボットタクシーを設計し、実現し、製造することができれば、Teslaは初日から市場をリードする存在になれるでしょう。この新型車両は、従来の自動車メーカーの空想的なプロトタイプとはまったく対照的に、意図された製造仕様に適合する可能性が高いため、同社のチームはおそらく、その幕を開ける前にゴールデンタイムに向けて準備を整えておきたいのでしょう。
あるいは、テスラはこのイベントを自律運転ソフトウェアのマイルストーンに合わせているのかもしれません。同社のFSD(完全自動運転)ソフトウェアは急速に進化しており、例えば、バージョン12.4などが数週間以内にリリースされる見込みです。当社のリサーチによれば、FSDソフトウェアの上から下までAI化された最初のバージョンであるバージョン12.5の広範囲なリリースが、10月の新イベントと重なる可能性があります。
イーロン・マスク氏は、バージョン12.6の介入率はWaymo社の商用化されたロボタクシー・ソフトウェアに匹敵するものになると示唆しています。Tesla社はすでにこのソフトウェアを従業員に配布しており、アナリストや投資家、そして所有者たちをロボタクシーの実用化に向けて誘導する上で、同社のチームはより明確な見通しを持つことができるはずです。
同社はまた、サイバーキャブのイベントで注目を集めることを利用する方法を考えている可能性もあります。他の製品イベントとは異なり、Tesla社が予約注文を募ることはまずないでしょう。代わりに、ロボタクシー・サービスを開始するにあたり、ロボタクシー専用の車両を所有し、運用することを選択することが考えられます。Teslaロボタクシー・サービスス入される可能性のある地域でライドヘイル(自動配車)ネットワークを立ち上げるとしたら、たとえ人間が運転するものであっても、イベントで潜在的な乗客やドライバーに契約するように促すことができるでしょう。
私たちは、Tesla社のロボタクシー・サービスは、同社を車両の1回限りの販売から、商用走行距離ごとにプラットフォーム料金を徴収する経常収益モデルへと移行させる、歴史上最も重大なビジネス変革の1つとなる可能性があるとみています。ほぼすべての財務指標が改善される可能性があるのです。1回きりの販売から経常収益への改善だけでなく、ハードウェアのマージンからソフトウェアのマージンへの改善、そしてSaaS(Software-as-a-Service)のようなモデルによる資本増強から大幅な資本増強への改善も期待できます。
先週Tesla社が延期を発表したとき、一部の投資家は失望していましたが、私たちはイーロン・マスク氏とチームが移行を正しく行なうために時間をかけていることに大変期待しています。
By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Associate
ヒトゲノムのDNA塩基配列解析が遺伝学に革命をもたらしたのと同様に、単一細胞塩基配列解析はがんにおける薬剤耐性に関する我々の理解を一変させつつあります。前例のない解像度のおかげで、単一細胞配列解析により、科学者は個々の細胞における遺伝的および非遺伝的変異を分析し、様々ながんの複雑性を理解することができるようになりました。
新しい研究によれば[5] 、がんにおける薬剤耐性は特定の細胞型に限定されるものではなく、がん細胞が細胞状態の遷移を通じて徐々に治療法に適応していく「耐性連続体」に沿って存在します。これらの遷移は、耐性が進化し、新たな治療の機会をもたらすことを示しています。
薬剤耐性との闘いを成功させるためには、研究者は治療前、治療中、治療後に縦断的に液体生検(リキッドバイオプシー)のサンプルを採取し、細胞の変化をリアルタイムで監視する必要があります。患者固有の耐性を追跡することで、がんの治療をより正確で適応性のあるものにし、患者の転帰を改善する個別治療につながるはずです。
[1] Tempus AI. 2024. “American Medical Association Grants PLA Code to Tempus Algorithmic Test, PurISTSM.”
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