本レポートは、2024年12月8日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #442」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Tasha Keeney, CFA & Daniel Maguire, ACA | @ARKInvest
Autonomous Technology & Robotics Team
先週、Tesla社は完全自動運転(FSD)ソフトウェアの最新バージョンv13.2を、限られた外部顧客向けにリリースしました[1]。今年初めにv12がエンド・ツー・エンドのAIへ移行したことを受けて、v13.2では、走行の開始時と終了時におけるFSDでのパーキング(駐車)やバック(後退)運転など、いくつかの機能強化が導入されました。オースティンにある同社のCortexクラスターは、Teslaのトレーニング計算能力を5倍に増強し[2]、TeslaのAI4コンピューターチップと高解像度のビデオ入力を搭載した車両でのFSD v13.2のパフォーマンスを最適化しました。ゼロ・インターベンション(介入ゼロ)ドライブを紹介するユーザービデオ[3]によると、v13.2により、よりスムーズな走行が可能になったという初期のフィードバックがあります。
FSD v13.2は、来年カリフォルニア州とテキサス州でロボタクシーサービスを開始するという同社の目標に向けた大きな一歩であり[4]、次の図で示すように[5]、ARKの予想と一致しています[5]。Teslaは、来年には、この新型モデルが重大な介入[6]を必要とするまでの走行距離を延長し、人為的事故に関して米国全土の平均値である約67万マイル(約108万キロ) [7] を下回る発生率を達成すると予測しています。これは、当社の推定によると、広くリリースされているFSD v12.5 [8]の700倍の改善です。このマイルストーンを突破することは、同社のロボタクシー導入の前提条件ではありませんが、人命を救い、規制当局との対話を促進し、人間のオペレータによる遠隔操作に関連するコストを削減するはずです。私たちは、Teslaがロボタクシーの商業化に近づくのに伴うFSDの進捗を、今後も楽しみに見守っていきたいと思います。
*数値は四捨五入の関係で100%にならない場合があります。出所:ARK Investment Management LLC、2024年。このARKの分析は、様々な外部データソースを利用しており、データは2024年6月12日現在のもの。予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。また、本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。
By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst
人間の脳は、コンピューティングにおける革命の鍵を握っているのでしょうか?生きた脳由来のオルガノイド(研究室で培養された小さな脳組織のレプリカ)では、オルガノイド知能(OI)は、生物学とコンピューティングテクノロジーの融合を象徴しています。
人間の脳の計算能力は驚異的です。次の比較を考えてみてください。現在、世界最速のスーパーコンピューターであるFrontier(フロンティア)は、1.1エクサフロップスの処理能力を達成するために21メガワットの電力を消費します。これは、同等のパフォーマンスを実現するための人間の脳の20ワットの約100 万倍の電力消費です。興味深いことに、20ワットは電球に電力を供給するのにかろうじて足りる程度です。さらに視点を変えれば、人間は「同じもの」と「異なるもの」を区別するタスクを約10個の例で学習できますが、機械には何百万ものサンプルと桁違いのエネルギーが必要です。Google社のAlphaGo(アルファ碁)がその好例です。古代中国の囲碁ゲームで世界チャンピオンに勝つために、このマシンは16万ものサンプル対局で訓練し、人間が10年間生きるのに必要なのと同じだけのエネルギーを1ヵ月で消費しました[9]。詳しい比較は次のグラフをご覧ください。
出所:Morgan2023年、ウィキペディア2024年、Buutler2023年[10]。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。
コンピューティングを進化させるため、オルガノイド知能は、制御された研究室環境で脳の効率性と適応性を再現することを目指しています。成功すれば、持続可能なハイブリッド生物学的コンピューティング・システムへの道が開かれ、医療研究から人工知能まで、さまざまな分野に革命をもたらす可能性があります。OIの課題には、オルガノイドの機能性を維持しながら規模を拡大すること、シームレスなインターフェースを設計すること、知覚に関する倫理的懸念に対処することなどがあります。
当社の見解では、現時点での課題は、すでに生物学がコンピューティングを再定義できるかどうかではなく、それがいつ現実的に可能になるか、であると考えています。
By Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate
先週、OpenAIは「OpenAIの12日間」を開始しました。この期間中、同社は営業日ごとに新製品を発表またはデモンストレーションします。初日に、OpenAIはo1推論モデルのフルバージョンと、月額200米ドルで販売されるChatGPTのアップグレード版「Pro」バージョンを発表しました。
3ヵ月も経たないうちに[11]、o1の新バージョンがo1-previewに取って代わり、数学とコーディングの両試験で顕著な成績向上を見せました。また、アメリカの優秀な高校生を対象とした招待性の数学試験(AIME:American Invitational Mathematics Exam)では、 o1-previewの50%を大きく上回る78%を記録しました。Codeforcesのコーディングコンテストでは、新バージョンのスコアは62%から89%に上昇しました。o1はマルチモーダルであり、図表や画像を評価することができます[12]。質問を評価し、回答する前に「考える」のに必要な最適な時間を見極める機能により、o1はo1-previewよりも50%速くなりました[13]。
200米ドルで、ChatGPT Proの階層は、モデルの無制限の使用と、追加のコンピューティングを活用する「o1-pro」モードを提供し、難易度の高い質問により確実に答えることができ、正解の再現性を考慮すると、o1の標準バージョンを顕著に上回っています。o1-preview、o1、o1-proを比較するために、OpenAIは各モデルを、上記の数学とコーディングの試験に加えて、一連の博士号レベルの科学の問題にかけ、モデルが4回の試行のうち4回とも質問を正しく解くことができた場合にのみ、回答を正解としてカウントしました。ある例では、以下に示すように、o1-proモードは、数学、コーディング、博士号レベルの科学において、それぞれ13、11、7パーセントポイント、o1を上回りました。
出所:OpenAI.14情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。
特に学術研究において、複雑で多段階のタスクを実行するモデルにとって、難解な質問に確実かつ繰り返し答える能力は重要な要件です。研究者はすでに医学研究でo1を使用しています。科学分野でのより広範な採用を促進するために、OpenAIは米国の一流研究者に10件のChatGPT Pro助成金を授与しました。研究やその他の複雑なタスクを高速化することで、o1とo1-proは、消費者と企業のワークロード全体でAIの幅広い採用に拍車をかけるためのデータとパワーを得ることができます。
[1] Elluswamy, A. 2024. “v13.2 has started rolling out…” X.
[2] Jegannathan, R. 2024. “Powered by Cortex, the giant new AI training supercluster…” X.
[3] Dirty Tesla. 2024. “First drive of FSD V13.2. FSD…” X.
[4] Motley Fool Transcribing. 2024. “Tesla (TSLA) Q3 2024 Earnings Call Transcript.” The Motley Fool.
[5] Keeney, T. et al. 2024. “ARK’s Expected Value For Tesla In 2029: $2,600 Per Share.” ARK Investment Management LLC.
[6] Motley Fool Transcribing. 2024. “Tesla (TSLA) Q3 2024 Earnings Call Transcript.” The Motley Fool.
[7] Tesla. 2024. “Tesla Vehicle Safety Report.”
[8] Motley Fool Transcribing. 2024. “Tesla (TSLA) Q3 2024 Earnings Call Transcript.” The Motley Fool.
[9] 同上
[10] Morgan, T.P. 2023. “Details Emerge On Europe’s First Exascale Supercomputer.” The Next Platform. Wikipedia. 2024. “Frontier (supercomputer).” Butler, G. 2023. “Frontier remains world's most powerful supercomputer on Top500 list.” DCD.
[11] OpenAI. 2024. “Introducing OpenAI o1-preview.”
[12] OpenAI. 2024. “Introducing ChatGPT Pro.”
[13] OpenAI. 2024. “Day 1 — o1 and ChatGPT Pro.”
[14] OpenAI. 2024. “Introducing ChatGPT Pro.”
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