Newsletter #456:Waymoの安全性が向上、Teslaは6月のロボタクシー開始に向けてデータ面で優位に立つ、他。

作成者: ARK Invest|2025/03/24

本レポートは、2025324ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #456」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Waymoの安全性が向上、Tesla6月のロボタクシー開始に向けてデータ面で優位に立つ

By Tasha Keeney, CFA & Daniel Maguire, ACA | @ARKInvest
Autonomous Technology & Robotics Team

 

先週、Waymo社は最新の安全性報告書を発表しました。この報告書によると、同社の商用ロボタクシー・サービスは、第4四半期に警察から報告された衝突事故の発生間隔が平均50万マイルであったと推定されます[1]。この指標に基づくと、Waymo社の業績は、ARKBig Ideas 2025[2]で発表した下図の第3四半期の約40万マイルから、わずか1四半期で25%改善し、50万マイルに達したことになります。

注:「重大な介入の間隔」は、事故を回避するために人間のドライバーが制御を開始するまでの走行距離を示す。出所:ARK Investment Management LLC2025年。このARKの分析は、20241231日時点の様々な外部データに基づいており、リクエストに応じて提供される場合があります。本資料は、情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の 証券の購入、売却、保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示すものではありません。予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。

 

当社のリサーチによると、Waymo社の商用ロボタクシー・サービスは、1日あたり約20万マイルを走行していますが、その保有する車両数の少なさから考えるとこれは素晴らしい数値であると言えます。とはいえ、ARKの以前のリサーチ[3]で指摘したように、同社の自動運転サービスはジオフェンスで制限されており、このアプローチはいずれTeslaの完全自動運転 (FSD) サービスよりも劣っていることが証明されるでしょう。Teslaの完全自動運転 (FSD) サービスでは、6月に予定されているロボットタクシーサービスの開始前であっても、以下に示すように、実世界のさまざまな環境において1日あたり約1,000万マイルを記録しています。この実走行データにおける約50倍の優位性にロボタクシー・サービスス月にオースティンでロボタクシー・サービスを開始すれば、急速に規模を拡大できるはずです。

出所:ARK Investment Management LLC2025年。このARKの分析は、2025129日時点の様々な外部データに基づいており、リクエストに応じて提供可能です。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。

 

ARKは、ロボタクシーの年が幕を開けるにあたり、引き続きWaymo社とTesla社の動向を追うことに意欲を燃やしています。当社のBig Ideas 2025[4]をぜひお読み下さい。

 

2. NvidiaGTC 2025AIハードウェアとソフトウェアのロードマップを公開

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet

 

先週開催されたGTC 2025の基調講演で[5]、ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は、AIのハードウェアとソフトウェアにおけるNvidia社の大きな飛躍について概説し、4つの主要分野、すなわちAI推論の需要の増加、新しいソフトウェアソリューション、意欲的なハードウェアロードマップ、自動運転車や人型ロボットなどの物理的なAIアプリケーションの進展に焦点を当てました。

フアン氏は、OpenAIDeepSeekのような企業が提供する高度な推論モデルが、コンピューティング能力の需要を押し上げていると指摘しました。Nvidia社の試算によると、従来の大規模言語モデル(LLM)と比較して、推論モデルは20倍多くのトークンを生成し、クエリごとに150倍の計算能力を使用しています[6]。推論のような画期的なイノベーションに適応するために、既存のAIモデルの効率と性能を向上させるには、計算能力の大幅な増加が必要です。フアン氏は、推論の主要段階であるPrefillDecode間のリソース割り当てを改善することで、LLM推論を最適化するソフトウェアプラットフォームであるDynamoを紹介しました。既存のHopper GPU上で、Dynamoの動的な計算管理により効率が2倍になり、推論コストが40%削減されました[7]

ハードウェア面では、フアン氏は2027年までのNvidia社のロードマップを詳細に説明しました。来年、今年のBlackwell Ultraシステムと比較して、Vera Rubin1ラックあたり3.3倍のFLOPS1.6倍のメモリを提供します。2027年には、Rubin Ultra1ラックあたりのGPU数を4倍の576に増やし、Blackwell Ultra14倍のFLOPSを実現します[8]Rubin Ultraシステムは、1ラックあたり前例のない600キロワットの電力を消費します。これは、従来のデータセンターで消費電力が10キロワット程度しかない標準密度のラック[9]60倍、1ラックあたり120キロワットのBlackwell5倍に相当します[10]。フアン氏は、総所有コストに対するRubinの性能は、Blackwell4倍、Nvidiaの前世代GPUであるHopper33倍になると見積もっています。

最後にフアン氏は、Nvidia社の新しい物理的AIに特化したソフトウェアとパートナーシップを紹介しました。GMNvidiaAIを自社の車両と工場に統合し、202412月にCruiseから撤退した後、自動運転車の取り組みを再始動させるようです[11]。人型ロボットに焦点を当てた同社の新しいオープンソースモデルGR00T N1は、反射的動作と意図的動作の両方に対応するデュアルシステム設計を採用しており、これはFigure AIの人型ロボットをサポートするHelixと同様のアプローチです[12]

 

3. GoogleM&Aメガサイクルに火をつけたか?

By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist

 

Google社は先週、非上場のサイバーセキュリティ企業であるWiz(ウィズ)社を320億米ドルの現金で買収し、米国のテクノロジー業界におけるM&A(合併・買収)としては史上6番目、Google自社としても史上最大の規模となる買収を発表しました[13]。この買収は、米連邦取引委員会(FTC)による規制が主な要因となり、M&Aが厳しく制限される環境下で行なわれたものです。Google社の時価総額2兆米ドルに比べれば小規模ではありますが[14]Wiz社の買収はイノベーションの分野全体に波及する可能性のあるシグナルを発しています。

出所: ARK Investment Management LLC2025年。 2025323日現在のCapitalIQのデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。

 

歴史を振り返ると、最近のテクノロジー業界でのM&A活動の停滞は明らかです。米国株式市場と比較すると、取引活動は2023年と2024年に連続して過去最低を記録しました。2024年のM&A取引額は米国株式時価総額の2.5%未満で、次の図で示す通り、90年代初頭の景気後退期と2000年代初頭のハイテク・通信バブル崩壊時のそれぞれ4.3%5%の谷間の約半分でした。最近の活動の停滞は、新たに大統領に選出されたジョー・バイデン大統領が、FTCに提案された取引と過去の取引の両方を精査するよう公に命じたことがきっかけとなって始まりました[15]

 出所: ARK Investment Management LLC2025年。 2025323日現在のCapitalIQのデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。

 

皮肉なことに、FTCは買収を制限することでハイテク独占企業の力を抑制しようとしながら、意図せずして逆に彼らの独占力を強化してしまった可能性があります。なぜでしょうか。ほとんどのM&A取引は、買収された企業に利益をもたらす一方で、買収した企業の価値を損ないます。大手のテクノロジー企業は通常、自社と買収した企業に損害を与えますが、それでも競合他社が戦略的機会をつかむのを防ぐために、とにかくM&Aを追求するのです。この力学は、「囚人のジレンマ」に似ています。古典的なゲーム理論のシナリオで、当事者同士が協調しない限り、個々人が合理的な意思決定を下しても、全体として最適とは言えない結果をもたらしてしまうことを説明しています。大手テクノロジー企業は、M&A活動を控えることで全体としては利益を得ることができますが、個々では防衛のために競合他社を買収せざるを得ないと感じています。買収を広く制限することで、FTCは意図せずに暗黙の調整を促進し、M&Aをすべての企業にとって不可能にすることで、個人のインセンティブと集団の利益を効果的に一致させているのです。

買収の枯渇は、破壊的テクノロジーを持つ新興企業、特に株式が公開され、資金調達を公的資本市場に依存している企業に打撃を与えてきました。M&Aの脅威が無い中で、空売り筋は追加資金を求めて市場に出回る企業の株価を狙い撃ちし、株価を下落させ、事実上、資本を枯渇させてきました。M&Aが機能する環境では、買い手が革新的な企業に「戦略的価格発見」とバリュエーション・フロアを提供します。過去4年間で、多くの革新的な企業が苦境に立たされ、中には倒産に追い込まれた企業もありました。

大手テクノロジー企業にとっては多少不利ではあるものの、M&Aの復活は、破壊的イノベーションに広く、そして不均衡な恩恵をもたらすはずです。大手の中核ハイテク企業や製薬・バイオテクノロジー企業は、迫り来る戦略的脆弱性に対応する必要があり、破壊的イノベーションに関連するテクノロジーの再評価が引き起こされるでしょう。

M&Aの復活は、新型コロナウイルスの大流行以降、テクノロジー投資でますます主流となっている傾向、つまり企業価値が一握りの企業(いわゆるマグニフィセント6)に集中するというトレンドの逆転を促進する可能性があります。2020年以前は、MicrosoftAppleAlphabetMetaAmazonNVIDIAが、破壊的テクノロジーの企業価値の約3分の1を占めていました。過去 5 年間で、これらの企業のシェアは 60%近くにまで膨れ上がりました。これは、M&Aが行なわれない中で、彼らは、次の図で示されているように、バランスシートの脆弱な中小企業が生き残るのを傍観しながら、現金の軍資金を蓄えたり、自社株を買い戻したりしてきたためです。トランプ政権がFTCに規制緩和とM&Aの邪魔をしないように促すにつれ、バランスシートの要塞である大手テクノロジー企業や製薬・バイオテクノロジー企業は、過去5年間に不利な状況にもかかわらず戦略的技術を生み出し、進化させてきた革新的企業に資金を注ぎ込み、大手株主からキャッシュリターンを奪う可能性があります。

「マグニフィセント6」のいくつかは破壊的な戦略的テクノロジーを活用できるかもしれませんが、より広範なイノベーション分野の方がより多くの恩恵を受けるはずです。2030年までには、イノベーション市場全体の約60%を占めていた「マグニフィセント6」のシェアが30%近くまで低下し、破壊的イノベーションの市場シェアは、はるかに強い追い風を享受する革新的企業に譲り渡されることが、当社のリサーチで示唆されています。

注:「CAGR」:年平均成長率。*破壊的イノベーションの時価総額には暗号通貨と暗号資産が含まれる。**MicrosoftNVIDIAMetaAppleAmazonAlphabet。出所:ARK Investment Management LLC2025年。このARKの分析は、20241231日時点の様々な外部データソースを利用しており、リクエストに応じて提供することが可能です。本資料は情報提供のみを目的としたものであり、投資アドバイスや特定の証券の売買・保有を推奨するものではありません。また、過去の実績は将来の結果を示唆するものではありません。予測には本質的に限界があり、依拠することはできません。

 

仮にM&A活動が過去20年間の平均に戻ったとしても、今回の取引サイクルは前例のないものとなり、コロナ禍で記録された高水準の取引額を数千億米ドルも上回ることになります。一般的に、M&Aサイクルは伝染しやすいものです。 戦略的資産の買収は、買い手の熱狂を引き起こし、残った企業に利益をもたらします。そして今、Googleはくしゃみをしたばかりです!

 

 

 

 

 

 

 

[1] Waymo. 2025. “Fresh safety data is in!...” X.

[2] ARK Investment Management LLC. 2025. “Big Ideas 2025.”

[3] Keeney, T. 2024. “Countdown To Cybercab, Tesla’s Multi-Trillion Dollar Robotaxi Opportunity.” ARK Investment Management LLC.

[4] ARK Investment Management LLC. 2025. “Big Ideas 2025.”

[5] Nvidia. 2025. “GTC March 2025 Keynote with NVIDIA CEO Jensen Huang. YouTube.

[6] 同上

[7] 同上

[8] 同上

[9] Pacheco, M. 2024. “Navigating Data Center Power Density in the Age of HPC and AI.” Tierpoint.

[10] Mann, T. 2024. “One rack. 120kW of compute. Taking a closer look at Nvidia's DGX GB200 NVL72 beast.” The Register.

[11] Shepardson, D. and N. Eckert. 2024. “GM to Exit Loss-Making Cruise Robotaxi Business.” Reuters.

[12] FigureAI. 2025. “HELIX: A VISION-LANGUAGE-ACTION MODEL FOR GENERALIST HUMANOID CONTROL.”

[13] 2025323日時点のCapitalIQの取引データに基づくARK Investの分析。

[14] 2025323日現在、CapitalIQによるとアルファベットの時価総額は2100億米ドル。

[15] Adams, S. et al. 2021. “President Biden’s Executive Order on Promoting Competition.” Harvard Law School Forum of Corporate Governance.

 

 

 

ARK’s statements are not an endorsement of any company or a recommendation to buy, sell or hold any security. For a list of all purchases and sales made by ARK for client accounts during the past year that could be considered by the SEC as recommendations, click here. It should not be assumed that recommendations made in the future will be profitable or will equal the performance of the securities in this list. For full disclosures, click here.