本レポートは、2025年3月3日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #453」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Nick Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
先週、Amazon社は、Anthropic社のClaude AI [2]と独自のAIモデルを統合したAI搭載スマートアシスタントである「Alexa+」を発表しました [1]。このアップグレードにより、Alexaの会話能力が強化され、より直感的でパーソナライズされた方法で会話できるようになります。
エージェントAI機能を統合することで、Alexa+は、家の修理のスケジュール作成や予約といったタスクを、人間の介入をほとんど必要とせずに、自動的に完了させることができます[3]。 Alexa+はまた、スマートホームのコントロール機能やショッピングアシスタント機能も向上させており、Amazon Prime(アマゾン・プライム)会員は無料で、またそれ以外の場合も月額19.99米ドルで利用することができます。米国では、このサービスは新しいEcho Show(エコーショー)デバイスでデビューする予定です。
Echoデバイスの販売台数は6億台を超え、米国のスマート・スピーカー販売のシェアは推定70%に達しており[4]、Alexa+のアップグレードは、同社の優位性をさらに強固なものとし、日常生活におけるAI主導のパーソナル・アシスタントの普及を後押しするものとなるでしょう。
By Nemo Marjanovic, PhD | @NMDespotARK
Research Analyst
先週、Roche(ロシュ)社はナノポアシークエンシングを再設計して信号解像度の根本的な限界を克服する、新しい単一分子シーケンシング技術であるSequencing by Expansion (SBX)を発表しました[5]。従来のナノポアシーケンシングでは、 重なり合う信号を生み出し、精度を制限する密集したヌクレオチドの処理が困難でした。SBXは、シーケンスの前にDNAをXpandomer(エクスパンドマー:非常に長い合成ポリマー)に変換することでこの問題を解決します。
合成段階では、Roche社は高度に設計されたXp合成酵素を用いて、構造エンハンサーを付加しながら塩基の同一性をコードする拡張可能なヌクレオシド三リン酸(XNTP)を順次組み込みます。このプロセスにより、コンパクトなDNAが50倍長いXpandomerに変換され、その後、シーケンシングのために直鎖化されます。配列決定段階では、Xpandomerは制御されたステップでナノポアを通過します。つまり、転座制御エレメントが分子を固定し、電流を正確に測定して塩基を識別するのです。
SBXの影響は計り知れないものとなるでしょう。Illumina(イルミナ)社のショートリードシーケンシングとは異なり、SBXは単一分子でハイスループットです。重要なのは、SBXは高価な光学系を必要としないため、シーケンスコストを大幅に削減することができるということです。Roche社のモデルはまた、市場を大量導入へとシフトさせる可能性があるIllumina社の「レーザー&ブレード戦略(商品本体を無料もしくは安価に提供し付属品を消耗品として販売することで、収益を継続維持するGillet社のビジネスモデル)」にも挑戦しています。同社は、シーケンシングがより高速かつ安価になるだけでなく、よりスケーラブルになる未来に大きな自信を持っているようです。これにより、臨床ゲノミクスや診断、またさらにその先の分野での応用が加速するはずです。
By Lorenzo Valente | @LorenzoARK
Director of Research, Digital Assets
2月21日午前10時30分頃、Bybit(バイビット)社の共同設立者であるベン・ジョウ氏は、社内アドレス間の定期的な内部転送中に、取引所のコールドウォレットの1つから約15億米ドルのETHトークン[6]がハッキングされたとX上で発表しました。そして、オンチェーンフォレンジック分析により、北朝鮮の国家支援を受けたハッキング犯罪組織であるLazarus(ラザルス)グループが攻撃を行なったことがすぐに判明しました。
同氏は、Bybitのバランスシートですべての損失をカバーすることができ、またカバーする予定であることを直ちにユーザーに保証しました。それでも、既視感のある不吉な予感から、多くのユーザーがプラットフォームから資金を引き出しました。Bybitは最初の48時間で、30万件を超えるユーザーからの引き出し注文を処理しました[7]。Mirana Ventures(ミラナベンチャーズ)や他の業界取引所からのつなぎ融資の支援を受けて、Bybitはすべての出金要求に応じたため、その支払能力に対する信頼が強まりました。
暗号資産業界はBybitの周りに結集し、ステーブルコイン発行者、オン/オフランプ、取引所、ブローカー、ブリッジ、アプリケーションがハッキングに関連する資金をブラックリストに載せたり、凍結したり、ブロックしたりしました。多くの分散型プロトコルはDAO(分散型自律組織)に殺到し、新たなセキュリティ対策を可能にするための新しいガバナンスを提案し、可決しました。
ハッキングから1週間後、盗まれた資金は数百のウォレットに分散しており、下図で示すように6億米ドル以上がビットコインネットワークにブリッジされています[8]。
出所:Zhou 2025 [9]。本資料は情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券や暗号通貨の売買・保有を推奨するものではありません。
Bybitは、盗まれた資金の返還に対して10%の報奨金[10]という史上最大の懸賞金を発表しましたが、資金のかなりの部分はおそらく数ヵ月から数年間は休眠状態になるでしょう。盗まれた資産の何パーセントが回収されるかは誰にもわかりませんが、デジタル資産産業がLazarusグループと北朝鮮の核開発計画の格好の標的であることは誰もが知っています。今回の事件が、中央集権型取引所と分散型取引所の双方に、セキュリティと運用の回復力を強化し、このような高度に洗練された攻撃から身を守るのに役立つ貴重な洞察を提供することを願っています。
[1] Amazon. 2025. “Meet the New Alexa.”
[2] Anthropic. 2025. “Claude and Alexa+.”
[3] Amazon. 2025. “Introducing Alexa+, the next generation of Alexa.”
[4] 同上
[5] Kokoris, M. 2025. “Sequencing by Expansion (SBX) – a novel, high-throughput single-molecule sequencing technology.” bioRxiv.
[6] Kight, O. 2025. “Bybit Loses $1.5B in Hack but Can Cover Loss, CEO Confirms.” CoinDesk.
[7] Zhou, B. 2025. “Since the hack (10 hrs ago), Bybit has experienced…” X.
[8] CoinTribune. 2025. “Bybit Hack: 600 Million Dollars In Crypto Already Laundered!”
[9] Zhou, B. 2025. “V1.1 huge upadte [sic] on http://lazarusbounty.com.” X.
[10] Aziz, A. 2025. “Bybit CEO Declares War on Lazarus Group and Launches $140 Million Bounty After $1.4 Billion Hack.” Yahoo Finance.
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