Newsletter #425:FDAのGuardant Health社のShield™ 液体生検承認により、がん検診が大きく変わる可能性、他。

作成者: ARK Invest|2024/08/05

本レポートは、20248月5ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #425」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. FDAのGuardant Health社のShield™ 液体生検承認により、がん検診が大きく変わる可能性

By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Analyst

 

先週、米国食品医薬品局(FDA)は、45歳以上の成人の大腸がん(CRC)の一次検診の選択肢として、Guardant Health(ガーダント・ヘルス)社のShield™血液検査を承認しました[1]。これは、がん診断の分野における極めて重要な進歩です。Shield検査は、現在米国で59[2]程度にとどまっているCRC検診率の向上を目指しており、大腸内視鏡検査のような従来のスクリーニング方法に代わる簡便な検査法です。メディケアの保険適用と合わせて、この検査の承認は、より身近で非侵襲的ながん検診方法への移行であるといえます。

Shieldは、リキッドバイオプシー(液体生検)技術が、定期的な健康診断受診時に血液を用いた簡単な検査でがん診断に革命をもたらす可能性があることを示唆しています。従来、リキッドバイオプシーは治療法の選択や微小残存病変(MRD)の検出に役立ってきました。現在Shieldは、リキッドバイオプシーが大腸がん(CRC)だけでなく、複数のがんのスクリーニングにおいても標準治療になる可能性を強く示しています。

がんの早期発見の瀬戸際において、Guardant社の検査は待望の非侵襲的でユーザーフレンドリーな選択肢となり、治療の成功率と生存率を高める可能性があります。Shieldは、医療技術における革新だけでなく、ヘルスケアソリューションにおけるリアルタイムのビッグデータの可能性にも光を当てています。

 

2. ARKの自律走行技術&ロボティクスチームがTeslaのFSD v12.5をテスト

By Autonomous Technology & Robotics Team | @ARKInvest
Tasha Keeney, CFA, Sam Korus & Daniel Maguire, ACA

 

先週、ARKの自律走行テクノロジー&ロボティクスチームは、フロリダ州セントピーターズバーグで、Tesla社の完全自動運転(FSDv12.5ソフトウェアのハンズフリー走行テストを行ないました。私たちが介入したのは、車両が駐車場に停めるのに苦労した際、一度だけでした。私たちの見解では、経験の浅いドライバーが運転するよりもはるかにスムーズなドライブでした。

先週の「ARK Disrupt」で述べた[3]ように、FSD v12.5では、高速道路と市街地走行のソフトウェアスタックがエンドツーエンドのソリューションにまだ統合されていません。この統合により、パフォーマンス自体が向上するだけでなく、パフォーマンスがコンピューティング能力に応じてどのように変化するかを理解するTeslaの性能も向上するはずです。イーロン・マスク氏は、8月に予定されているソフトウェアアップデートによって、FSDの性能が現行のバージョンに比べて2倍になると示唆しています[4]。私たちは、FSDの改良に引き続き注目し、1010日に開催される同社のロボタクシーイベントを取材することを楽しみにしています。

 

3. ルミス上院議員、ビットコインを米国財務省の準備金に加える法案を提出

By David Puell | @dpuellARK
Research Associate

 

727日に開催されたビットコイン・ナッシュビル会議において、ワイオミング州選出の上院議員シンシア・ルミス氏は、2024年ビットコイン法案(BITCOIN Act of 2024-Boosting Innovation, Technology, and Competitiveness Through Optimized Investment Nationwide Act of 2024:全国最適化投資法によるイノベーション、テクノロジー、競争力強化)を発表し、戦略的ビットコイン準備金のためのビットコイン購入プログラムを提案しました[5]。これは、米国を国家準備金戦略にデジタル資産を組み込む先駆者として位置づけるものです。

この法案は、Silk Road(シルクロード)とBitfinex(ビットフィネックス)のハッキング後に米国政府が押収した約20万ビットコインを、米国財務省の準備金におけるビットコインと位置付けることを提案しています。財務長官は、米国内の様々な施設におけるビットコインの保管を調整および監督し、国防長官と国土安全保障長官は監査と会計を調整します。この法案はまた、5年間で年間約20万ビットコインを追加購入することも提案しています。

戦略的ビットコイン準備金は、国家債務の返済に充てられない限り、少なくとも20年間は保有されます。そしてその後は、2年ごとに準備金の10%のみを売却することが推奨されています。同法では、準備金はいかなるビットコインのフォークやエアドロップに対しても中立的な立場を取ることも規定されています[6]

重要なのは、財務長官が準備金に関連する秘密鍵を管理し、公開暗号認証を通じて準備金の証拠を提供し、第三者監査人に準備金の検証を依頼しなければならないことです。この法案はまた、分離口座の下で州が自主的に参加するための規定も導入しています。

ビットコイン購入プログラムの費用を相殺するために、この法案は、FRBのマネタリーベースにある現在の金準備金の新しい証明書の発行を提案しており、その評価額を帳簿上の1オンスあたり約42米ドルから公正市場価値で約2,400米ドルに調整します。また最後に、ビットコイン法は連邦政府が個人からビットコインを没収することを禁止しています。

戦略的ビットコイン準備金を設立することで、2024年のビットコイン法は、米国内のイノベーションを促進し、国家間でのビットコインの導入を加速させることができるかもしれません。

 

4. 大手AIプロバイダーが設備投資を増強

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate

 

最新の決算報告によると、AIを実現する主要な企業はインフラ支出計画を強化しています。収益報告の電話会議では、Microsoft[7] Amazon[8]Meta[9]はいずれも、AIのトレーニングや推論の堅調な伸びをサポートするため、データセンターとグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)の設備投資の増加を予測しました。

いくつかの企業は、収益成長率が鈍化しているにもかかわらず、AIインフラに対する現在の需要は供給を上回っていると述べています。Amazon社では、AWSの収益成長率が第1四半期の前年同期比13%から前四半期は19%に加速しましたが、個人消費の低迷により、全体の収益成長率は13%から10%に低下しました[10]。また、Microsoft社では、Azureの収益成長に対するAIの寄与が7%ポイントから8%ポイントに増加した一方、全体の収益成長は17%から15%に減速しました[11]。さらに、第3四半期のガイダンスでは、両社とも総収益の伸びが引き続き減速していることが示唆されています。両社の株価のネガティブな反応からすると、企業レベルの収益成長の減速により、AIがますます大規模な投資を正当化するのに十分な収益を生み出すかどうかという疑問が生じています。

このような不確実性に直面して、マーク・ザッカーバーグ氏のようなCEOは、投資不足のリスクが過剰投資のリスクをはるかに上回ることと確信しているようです。AIはすでに、Reels(リール)の推奨モデル、MetaRay-BanのスマートグラスのようなAIウェアラブル、Instagram(インスタグラム)やWhatsAppのチャットボットに利用されています。収益化が遅れる可能性は高いものの、これらの製品に対する消費者の急速な関与により、Meta社は年末までに60万台のH100およびH100相当のGPUへの投資する決断を固めました。

AIの収益はMetaMicrosoftAmazonのような企業にとって、短期的には総収益の成長加速につながらないかもしれませんが、AI革命のこの初期段階でインフラへの支出を減らすことは戦略的な誤りであると私たちは考えています。

 

5. 単一細胞ゲノム解析がアルツハイマー病の治療に有効であることを示す新たな研究結果

By Nemo Marjanovic, PhD | @ARKInvest
Research Analyst

 

マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者たちによる最近の研究では、アルツハイマー病の謎を解明する上で、シングルセル(単一細胞)ゲノム解析の威力が強調されています[12]。研究者らは、10x Genomics社の単核RNAシーケンス装置を用いて、アルツハイマー病患者26人を含む48人のドナーから採取した約130万個の細胞における遺伝子発現を解析し、脳の6つの領域で70種類を超える細胞タイプを検査しました。

すべての脳細胞は同じDNAを共有していますが、その機能や特性は、発現する特定の遺伝子によって異なります。この研究では、アルツハイマー病の患者とそうでない患者の遺伝子発現を比較することで、脳細胞の活動が細胞の種類、脳の領域、疾患の病態によってどのように異なるかを、各人の認知動態の評価と関連づけながら包括的な見解が示されました。アミロイドタンパク質の凝集体に焦点を当てた初期の研究とは異なり、この研究ではアルツハイマー病に罹患しやすい特定のニューロンや回路が特定されました。注目すべきは、アルツハイマー病患者では、海馬と嗅内皮質の特定の興奮性ニューロンの著しい減少が見られたことです。これらのニューロンは相互接続されており、認知機能の回復力と関連しているReelin(リーリン)と呼ばれるタンパク質と結びついています。

単一細胞RNAプロファイリングは、洗練された「顕微鏡」のように機能し、アロイス・アルツハイマー氏1世紀以上前に観察したアミロイド斑やタウのもつれとは対照的に、細胞内の何千もの微細で、しかし重要な生物学的変化を明らかにします。この高度な技術によって、研究者らは細胞の変化を認知機能の低下や回復力に結びつけることができ、治療介入のための潜在的な経路を示唆することができるのです。注目すべきことに、この研究の科学者は、抗酸化活性とコリン代謝が亢進したアストロサイトが、疾患の病理にもかかわらず認知機能の回復と関連していることもさらに発見しました。

 

 

 

 

 

 

 

[1] Ava Med. 2024. “Screening Option, Clearing Path for Medicare Reimbursement and a New Era of Colorectal Cancer Screening.”

[2] Chung, D.C. 2024.” A Cell-free DNA Blood-Based Test for Colorectal Cancer Screening.” The New England Journal of Medicine.

[3] Keeney, T. and Maguire, D. 2024. “Doubling Down On Its Robotaxi Future, Tesla Took A Giant Step Forward With Full Self-Driving v12.5.” ARK disrupt Newsletter. ARK Investment Management LLC.

[4] Musk, E. 2024. “We have a clear path…” X.

[5] 118th Congress, 2nd Session. 2024. “To establish a Strategic Bitcoin Reserve and other programs to ensure the transparent management of Bitcoin holdings of the Federal Government, to offset costs utilizing certain resources of the Federal Reserve System, and for other purposes.” [[https://www.lummis.senate.gov/wp-content/uploads/BITCOIN-Act-FINAL.pdf]]

[6] Reiff, N. 2023. “Cryptocurrency Hard Forks vs. Airdrops: An Overview.” Investopedia.

[7] Microsoft. 2024. “Earnings Release FY24 Q4. Microsoft Cloud Strength Drives Fourth Quarter Results.”

[8] Amazon. 2024. “Amazon.com Announces Second Quarter Results.”

[9] Meta. 2024. “Meta Reports Second Quarter 2024 Results.”

[10] Amazon. 2024. “Amazon.com Announces Second Quarter Results.”

[11] Microsoft. 2024. “Earnings Release FY24 Q4. Microsoft Cloud Strength Drives Fourth Quarter Results.”

[12] Mathys, H. et al. 2024. “Single-cell multiregion dissection of Alzheimer’s disease.” Nature.

 

 

 

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