Newsletter #493:OpenAI、次世代ヘルスケア製品で個人と企業を支援、他。

作成者: ARK Invest|2026/01/12

本レポートは、2026112日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #493」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. OpenAI、次世代ヘルスケア製品で個人と企業を支援

By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist

 

先週、OpenAIは相互に補完し合う製品を相次いで発表し、ヘルスケア分野へ本格的に参入しました。17日、同社は消費者の健康情報とChatGPTの知能を統合する「ChatGPT Health」を発表[1]。翌日には、医療機関がより一貫性があり質の高い患者ケアを提供できるよう支援しつつ、HIPAA準拠もサポートするエンタープライズ向け製品群「OpenAI for Healthcare」を発表しました[2]。すでにこれらのエンタープライズ製品は、AdventHealth(アドベントヘルス)、Baylor Scott & White Health(ベイラー・スコット&ホワイト・ヘルス)、ボストン小児病院、Cedars-Sinai(シーダーズ・サイナイ)医療センター、HCA HealthcareMemorial Sloan Kettering(メモリアル・スローン・ケタリング)がんセンター、スタンフォード大学医学部小児医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコなど、主要医療機関で導入が始まっています。

消費者向けの「ChatGPT Health」は、極めて大きなユースケースに対応しています。世界全体では、毎週23,000万人以上が健康やウェルネスに関する質問をChatGPTに投げかけており、これはOpenAIのグローバル・アクティブユーザーの約30%に相当します[3]。単一の分野としては、非常に高い需要が集中している点が特徴です。ユーザーは現在、Apple Health(アップル・ヘルス)、Function(ファンクション)、MyFitnessPal(マイフィットネスパル)、Weight Watchers(ウェイト・ウォッチャーズ)、AllTrails(オールトレイルズ)、Instacart(インスタカート)、Peloton(ペロトン)といったウェルネスアプリと自身の医療記録を連携させることができ、検査結果の解釈、栄養に関する助言、パーソナライズされた食事提案、推奨トレーニングクラスなど、個別最適化された回答を受け取ることができます。

特筆すべきは、OpenAIb.wellと提携し、ユーザーが医療記録を「ChatGPT Health」と共有するためのインフラを整備した点です。これにより、患者ポータルを通じて電子カルテと直接連携することが可能になっています[4]。データの取り扱いに慎重なユーザーにも配慮し、「ChatGPT Health」内での会話はOpenAIの基盤モデルの学習には使用されません。本製品は用途別に分離された環境で運用され、専用の暗号化が施されています。

OpenAIは過去数年にわたり、60ヵ国・数十の専門分野にまたがる260人以上の医師と協働してきました。これらの医師は、モデルの出力を60万回以上にわたってレビューおよび評価しています[5]

こうした動きは、医療分野におけるAI導入が加速しているという、より広範な潮流とも一致しています。米国医師会(American Medical Association)が2025年に約1,200人の医師を対象に実施した調査によると、2024年に臨床現場でAIを活用している医師の割合は約66%に達し、2023年の38%からほぼ倍増しました[6]OpenAIは、この需要を取り込むべくエンタープライズ向け製品を戦略的に位置づけています。同社によれば、実際の医療タスクにおいてGPT-5.2は、臨床評価で測定されたすべての役割において人間のベースラインを上回る性能を示しました。一方で、「ChatGPT Health」は病気の診断や医療行為の代替を目的としたものではありません。現時点では、あくまで支援やナビゲーション用途に重点が置かれています。

より大きな機会は、OpenAIの消費者向けとエンタープライズ向けヘルスケアサービスの間に生まれるシナジーにあると考えられます。現在、健康情報はポータル、アプリ、ウェアラブル端末、PDF、診療メモなどに分散しており、個人の健康状態を包括的に把握することが難しい状況にあります。消費者が重要な健康上の疑問を抱いた際、すべての健康データをAIと統合できないことは、大きな摩擦要因となっています。一方、医療提供者にとっても、患者の既往歴や関連情報は自院外のデータベースに散在しており、この分断は無視できないコストを生みます。シュランク氏らの論文(2019年)によれば、医療連携の欠如によるコストは米国で年間500億米ドル超、不適切な治療判断によるコストは約2,500億米ドル、さらに過度に複雑な事務負担によるコストも約2,500億米ドルに上るとされています[7]。将来的には、ばらばらに保存された健康情報を横断的に扱えるAIチャットボットが、患者と医療従事者の双方にとって、より適切な診断や治療判断の調整を可能にし、長年にわたり情報サイロと不十分な意思決定に悩まされてきた医療システムに、意味のある効率改善をもたらす可能性があります。

 

2. SpaceXのスターシップは、宇宙データセンターの事業化を可能にするのか

By ARK Research Team | @ARKInvest
Sam Korus, Brett Winton, & Daniel Maguire, ACA

 

ARKの発表した初期のリサーチによれば、打ち上げコストが1キログラム(kg)あたり約300米ドルまで低下すれば、宇宙設置型データセンターは地上のデータセンターとコスト面で同等水準に達する可能性があります。これは次の図が示すとおりです。

出所:ARK Investment Management LLC2026年)。SpaceXNVIDIA、およびChamberlainほかのデータに基づく[8]。なお、上記の情報源に加え、本資料に含まれる一部の情報は、複数の追加的な情報源を参照したARKの社内分析に基づくものです。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の有価証券の購入、売却、または保有を勧誘または推奨するものではありません。将来予測には本質的な制約があり、それらに依拠すべきではありません。

 

経済性にとどまらず、軌道上データセンターは、地上で長年固定化してきたボトルネックを回避する手段にもなり得ます。現在、開発事業者は送電網への接続に45年待たされるケースが一般的であるほか、「Not In My BackyardNIMBY:必要性は認めつつも自宅周辺への設置には反対する動き)」に象徴される反対運動に直面しながら、需要家側設備(behind-the-meter)の電力容量を構築するのに12年を要しています。こうした状況を踏まえると、完全再使用型の打ち上げシステムに投資し、拡張可能でオンデマンドの電力配備を実現することは、合理的な解決策となる可能性があります。

一方で、大きな不確実要素となるのが、宇宙データセンターとして必要な規模を実現するために、何回の打ち上げが必要になるかを左右する衛星の質量です。イーロン・マスク氏は、出力100キロワット(kW)の衛星であれば、質量は約1,000キログラムになる可能性があると示唆しています[9]。これは、約20kWの太陽電池アレイを搭載し、質量が1,800kgを超えるとされる最新のStarlink衛星と比べると、大きな性能飛躍を意味します。アンテナを取り除くことで大幅な軽量化は見込めるものの、提案されている仕様を実現するには、従来とは大きく異なるエンジニアリングが求められることになります。

 

3. NvidiaGroq の人材と技術でロードマップを強化

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst

 

クリスマス・イブに、NVIDIAは、AI向け半導体スタートアップ企業であるGroq(グロック)の経営陣および従業員の約90%を迎え入れる、200億米ドル規模の取引を発表しました[10]。これには、Groqの技術に関する非独占的ライセンス権も含まれており、NVIDIAAIハードウェア・ロードマップを戦略的に拡張する動きと位置づけられます[11]NVIDIAの主力GPUは、世界最大規模の言語モデルの学習および提供(サービング)に最適化されていますが、CEOのジェンスン・フアン氏は、今回のGroqとの取引について、超低レイテンシ推論に特化したサーバークラス・チップの開発を加速させるための手段だと説明しています[12]。こうした性能は、小規模モデルや「エッジ」用途、すなわちスマートグラスやその他のエンボディドAIシステムに適していると考えられます。

取引条件に基づき、Groqの創業者、社長、および主要な技術リーダーはNVIDIAに加わり、Groqのアーキテクチャの拡張および統合を支援します。一方で、Groq自体は独立した企業として事業を継続します。GroqCFOであるシオン・エドワーズ氏は同社のCEOに就任し、クラウドサービスであるGroqCloudを含む事業運営を統括します。この構造により、NVIDIAは正式な合併を行なうことなく、重要な人材および知的財産(IP)をいわゆる「アクイハイア(acquihire)」の形で獲得できる一方、Groqは引き続き自社IPのライセンス供与や販売を行なうことが可能となります。

NVIDIAはまた、コアとなるGPUロードマップを通じて、性能のフロンティアを押し広げ続けています。ラスベガスで開催された年次消費者向けテクノロジー展示会CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)において、CEOのジェンスン・フアン氏はVera Rubin(ヴェラ・ルービン)世代のGPUを発表しました。同世代は、前世代と比べて学習効率が4倍、推論効率が10倍に向上しているとされています[13] 

Groqとの取引とVera Rubinの発表は、内部での迅速な技術革新と、外部の人材・技術を選別的に取り込む戦略という、NVIDIAの二正面戦略を浮き彫りにしています。推論ワークロードが、大規模データセンター向けからレイテンシに敏感なエッジ用途まで多様化する中、これらの取り組みは、学習・推論・新たなフォームファクターにまたがるフルスタックのAIインフラ提供者としてのNVIDIAの支配的地位を、いっそう強固なものにすると考えられます。

 

 

 

 

 

 


[1] OpenAI. 2025. “Introducing ChatGPT Health.”
[2] “HIPPA”: The U.S. Health Insurance Portability and Accountability Act. OpenAI. 2025. “Introducing OpenAI for Healthcare.
[3] ARKは、ChatGPTの週間アクティブユーザー数を約8億2,000万人と推計している。先に述べた2億3,000万人は、そのアクティブユーザー基盤の約28%に相当する。Capoot, A. 2026. “OpenAI launches ChatGPT Health to connect user medical records, wellness apps.” CNBC参照。
[4] Littrell, A. 2026. “OpenAI launches ChatGPT Health, directly linking patient portals to the AI chatbot.” Medical Economics.
[5] OpenAI. 2025. “Introducing ChatGPT Health.”
[6] AMA Augmented Intelligence Research. 2025. “Physician sentiments around the use of AI in health care: motivations, opportunities, risks, and use cases.”
[7] Shrank, W.H. et al. 2019. “Waste in the US Health Care System: Estimated Costs and Potential for Savings.” JAMA.
[8] SpaceX. 2020. “Starship Users Guide.” Nvidia. 2025. “NVIDIA GB200 NVL72 Powering the new era of computing.” Chamberlain, M.K. et al. “On-orbit Flight Testing of the Roll-Out Solar Array.” Acta Astronautica参照。
[9] Musk, E. 2025. “SpaceX has way more satellites in orbit…” X.
[10] Rashidi, S. 2025. “Nvidia Acquires Groq Talent In A Strategic To Move Into AI Inference.” Forbes.
[11] Groq. 2025. “Groq and Nvidia Enter Non-Exclusive Inference Technology Licensing Agreement to Accelerate AI Inference at Global Scale.”
[12] Efrati, A. 2025. “Nvidia CEO Says Groq Didn’t Have a ‘Nook and Cranny to Fit Into.’” The Information.
2025. “Six New Chips, One AI Supercomputer.”

 

 

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