Newsletter #501:Robinhoodは金融スーパーアプリを構築中、他。

作成者: ARK Invest|2026/03/09

本レポートは、202639日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #501」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Robinhoodは金融スーパーアプリを構築中

By Nick Grous & Varshika Prasanna | @ARKInvest
Fintech Research Team

 

2016年、Robinhood(ロビンフッド)は手数料無料かつモバイルファーストの取引サービスによって証券業界を揺るがしました。これにより、かつては機関投資家に限られていた市場へのアクセスが拡大すると同時に手数料は圧縮され、個人投資家の期待値が大きく変化しました。先週開催された「Take Flight」イベントでは、その野心がさらに大きく示されました。

同社は、今後1020年でベビーブーマー世代からミレニアル世代およびZ世代へ約124兆米ドルが移転すると見込まれる「資産の大移動」に備えています。現在、Charles Schwab(チャールズ・シュワブ)の顧客の約60%がベビーブーマー世代である一方、Robinhoodのユーザーの63%はミレニアル世代またはZ世代です(下図参照)。 Schwabの顧客1人あたり平均資産額はRobinhoodを上回っていますが、この大規模な資産移転によってその関係が逆転する可能性があります。

出所: ARK Investment Management LLC, 2026。本分析は、Robinhood 2025[2] 2025925日時点)(2025925日時点)を含む複数の外部データソースに基づく。併せて、Grous and Prasanna 2025 [3] も参照。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の購入、売却、または保有を推奨するものではありません。

 

Robinhoodが発表したカストディ口座および信託口座に関する新たな取り組みは、私たちの投資仮説を裏付けるものです。現在、親や保護者はカストディ口座(未成年者口座)を開設でき、その資産は法的には子どもに帰属し、成人に達すると自動的に移管されます。さらに、新機能により、家族や友人が誕生日などの節目に金銭的なギフトを拠出できるようになり、投資リターンの複利効果を高める新たな機会が生まれます。信託口座の導入は、世代間の資産移転に対応するための資産承継・エステートプランニング領域にもプラットフォームを拡張するものです。

同社はまた、融資サービスも拡充しています。年会費695米ドルで提供される新しいプラチナカードは、表記上3,000米ドル以上の価値を提供するとされ、旅行特典、ラウンジアクセス、ライフスタイル特典など競争力のあるサービスを備えながら、American ExpressのプラチナカードやJPMorganのサファイヤ・リザーブといった既存のカードよりも低価格に設定されています(下図参照)。私たちは、このプラチナカードが、証券取引、銀行サービス、クレジット、退職資産管理、そして運用サービスを一体化したエコシステムを構築し、顧客のウォレットシェア拡大を狙うRobinhoodの広範な戦略の一部であると考えています。

出所: ARK Investment Management LLC, 2026。本分析は、RobinhoodChase.comAmerican Expressを含む複数の外部データソース(202635日時点)に基づく。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の購入、売却、または保有を推奨するものではありません。

 

Robinhood Strategies(ロビンフッド・ストラテジーズ)は運用付きカストディ口座、IRA、信託口座を新たに追加しました。さらに今年後半には、複数口座を横断した世帯資産管理やファミリーハブ機能を導入する予定です。同社は単に機能を増やしているわけではありません。銀行サービス、暗号資産インフラ、予測市場、Robinhood Gold、そしてCortexを通じたAI駆動のポートフォリオツールを統合することで、同社は統合型の金融プラットフォームへと進化しています。これは、今後世界の資産を相続していく世代のために設計された金融スーパーアプリ(SuperApp)への進化と言えるでしょう。

 

2. AI収益が急増、競争の焦点はプロダクト化へ

By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst

 

AIプラットフォーム競争において、プロダクト化と統合が主要な競争軸となりつつあります。ここ数四半期で、AnthropicOpenAIは、モデルそのものの性能を強調する戦略から、ワークフローに組み込まれたプロダクトとしての基盤モデルへと重点を移しています。

Anthropicは、自社のClaude Codeプラットフォームを基盤に「Cowork」を発表し、エージェント型AIの能力をソフトウェア開発の領域から、より広範なナレッジワークへと拡張しました[4]。これに対し、OpenAIはすぐに対応し、オープンソースのエージェント型フレームワーク「OpenClaw」の創業者を採用するとともに[5]Claude Codeの競合となるCodexを発表しました[6]。また両社は、ユーザーがAIモデル上でスプレッドシートを作成・編集できるExcelとの統合機能も公開しています[7]。こうした動きは、AIの勝者となる企業が、モデル層だけでなく、モデルをパッケージ化し、配布し、企業の業務ワークフローに統合するアプリケーション層でも実行力を持つ必要があることを示しています。

この戦略転換は、収益の急成長として表れています。OpenAIの年間経常収益(ARR)は、2025年末時点で200億米ドル超[8]だったものが、わずか3ヵ月足らずで250億米ドル超に拡大しました[9]。一方、Anthropicの成長はさらに急速で、ARR2025年末の90億米ドルから、先週には190億米ドルへと2倍以上に増加しています[10]

消費者市場では、政策判断が競争環境に影響を与え始めています。Anthropicが、いわゆる『戦争省(Department of WarDoW)』からの利用規約改定要求に従わないと決定したことは、多くの消費者から支持を集めました。同社はその理由として、米国市民に対するAIを活用した大規模監視や、AI搭載の自律型兵器システムへの利用に反対する立場を挙げています。これに対し、競合のOpenAIは迅速に対応し、ピート・ヘグセス国防長官が米政府によるAnthropicのモデルおよびアプリケーションの禁止をソーシャルメディアで発表したその日に、DoWとの提携を発表しました。その後数日で、Anthropicの消費者シェアは大きく増加しました。

228日には、ChatGPTのアンインストール数が前日比295%増となり、通常の日次平均である9%を大きく上回りました[11]。また土曜日には、★1レビューが775%増加する一方、★5レビューは50%減少しました[12]。一方で、Claudeの米国でのダウンロード数は、227日に37%増、228日に51%増となり、米国のApp Store1位を獲得。さらにChatGPT1日ダウンロード数を初めて上回りました[13]AIプラットフォームが拡大するにつれ、ブランドへの信頼とガバナンスの選択は、消費者の採用を左右する重要な要因となる可能性があります。

 

3. 米国で10年ぶりとなる商業用原子炉の建設を原子力規制委員会が承認

By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst

 

先週、Nuclear Regulatory Commission(米国原子力規制委員会、NRC)は、TerraPower(テラパワー)による先進的原子炉の建設許可を承認しました。同社はビル・ゲイツ氏が支援する先進原子力企業です。NRCはわずか18ヵ月で技術審査を完了しており[14]、当初想定されていた27ヵ月のスケジュールを9ヵ月前倒ししました[15]。今回の承認は、40年以上ぶりとなる米国の非軽水炉の認可であり、また商業用原子炉の建設許可としては約10年ぶりとなります。これによりTerraPowerは建設に向けて前進することが可能になります[16]。ただし、2031年を目標とする送電網への接続の前には、NRCから運転許可を取得する必要があります[17]

建設許可の承認は、米国において原子力エネルギーに対する規制環境が追い風になりつつあることを示しています。これは、1970年代に過度な規制によって中断されたコスト低下のトレンドを再び動かす契機となる可能性があります。当社の調査によると、第二次世界大戦期を除けば、米国の電力価格は100年以上にわたり低下してきました。これはライトの法則と整合的な動きでした。しかし1970年代に規制の障壁が原子力発電所の建設を停滞させたことで、このトレンドは中断しました(下図参照)。ARKの試算では、もし規制が存在しなかった場合、米国の住宅向け電力価格は現在より約40%低かった可能性があります。今後、先進的な小型モジュール炉(SMR)が建設コストを抑制し、NOAKnth-of-a-kind)の規模に到達すれば、米国の平均的な住宅向け小売電力価格を下回る水準で電力を供給できる可能性があります[18]。またそれにより、AI関連のデータセンター急増による電力需要の拡大が引き起こす電力価格の上昇圧力を相殺できる可能性があります。

注記:LCOE Levelized Cost of Energy(均等化発電原価)。NOAK nth-of-a-kind”の略で、学習効果や規模拡大によるコスト低減を反映する概念。kWh エネルギーの単位で、1キロワットの電力を1時間使用または発電した量。MW メガワット。100万ワットに相当する電力の単位。ライトの法則とは、累計生産量が2倍になるごとにコストが一定割合で低下するという経験則。Winton 2019を参照。出所: ARK Investment Management LLC, 2026Potter 2023U.S. Census Bureau 1975Lazard 202520251222日時点)のデータに基づく[19] 。これらの情報源に加え、一部の情報はARKの内部分析に基づいており、追加のデータソースを参照しています。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の購入、売却、または保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の成果を示唆するものではありません。予測には本質的な限界があり、依拠すべきものではありません。

 

4.「エピック・フューリー作戦」が示す新たな防衛調達パラダイム

By Tasha Keeney, CFA | @TashaARK
Director of Investment Analysis

 

エピック・フューリー作戦の最初の36時間で、米国とイスラエルによる対イラン作戦は3,000発以上の精密誘導兵器を使用しました。これは、1991年の湾岸戦争で発射された弾薬の約3分の1に相当します[20]。週末には、米国の弾薬備蓄に対する懸念が高まる中、ドナルド・トランプ大統領が主要防衛企業6社の経営陣と会談しました。対象となったのは、RTX(アールティーエックス)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Boeing(ボーイング)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、BAE Systems(ビーエーイー・システムズ)、L3Harris(エルスリーハリス)で、高性能兵器の生産を4倍に拡大する可能性について協議したとされています。THAADPatriotSM-6といったミサイルの生産リードタイムは、数週間ではなく数ヵ月から数年単位で測られます[21]。一方で、Palantir(パランティア)のMaven Smart System(メイヴン・スマート・システム)は、Anduril(アンドゥリル)のLattice(ラティス)オペレーティングシステムを活用し、今回の紛争におけるネオ・プライム企業による最も重要な貢献として浮上しています。このシステムは標的選定までの時間を12時間から1分へと短縮し、20人の部隊で2,000人のアナリストに相当する作業を実行可能にします[22]

米軍は中東での軍事行動において、主に従来型の大手防衛企業が提供する技術を用いてハードウェア面の戦いを進めてきました。例えば、Northrop GrummanB-2爆撃機、RTXのパトリオットやトマホーク、Lockheed MartinTHAAD(サード)などです。その中で注目される例外が、SpektreWorks(スペクトルワークス)のLUCASドローンです。これは、低コストのイラン製Shahedドローンに対抗する米国独自の低コスト型ドローンとして登場しました[23]。多くの民間防衛スタートアップが低コストで高性能な航空機を開発していますが、中東紛争にリアルタイムで投入できる段階にはまだ達していませんでした。現在の弾薬備蓄の危機は、防衛調達支出の急増を招く可能性が高く、大規模な供給能力を持つ企業がその恩恵を受けると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 


[1] Robinhood. 2026. “Robinhood Unveils the Future of Family Finance at Robinhood Presents: Take Flight.”

[2] Robinhood Markets, Inc. 2025.” Investor Presentation September 15, 2025.” See also Sohn Conference Foundation. 2025. “Kristov Paulus pitches Robinhood at Sohn 2025.” YouTube.

[3] Grous, N. and V. Prasanna. 2025. “Robinhood: The First Financial Institution Built For The Internet Generation.” ARK Investment Management LLC.

[4] Claude/Anthropic. 2026. “Cowork: Claude Code for the rest of your work.”

[5] Schmelzer, R. 2026. “OpenAI Hires OpenClaw Creator Peter Steinberger And Sets Up Foundation.” Forbes.

[6] OpenAI. 2026. “Codex.”

[7] Claude/Anthropic. 2026. “Unformulaic expertise, right in Excel.” See also Fried, I. 2026. “OpenAI upgrades ChatGPT engine for Excel and Google Sheets.”

[8] Friar, S. 2026. “A business that scales with the value of intelligence.” OpenAI.

[9] Muppidi, S. 2026. “OpenAI Tops $25 Billion in Annualized Revenue as Anthropic Narrows Gap.” The Information.

[10] Gaffrey, S. “Anthropic Nears $20 Billion Revenue Run Rate Amid Pentagon Feud.” Bloomberg.

[11] Perez, S. 2026. “ChatGPT uninstalls surged by 295% after DoD deal.” TechCrunch.

[12] 同上

[13] 同上

[14] TerraPower. 2026. “NRC Approves the Natrium® Reactor Construction Permit.”

[15] TerraPower. 2026. “About TerraPower.”

[16] United States Nuclear Regulatory Commission. 2026. “NRC Issues First Commercial Reactor Construction Approval in 10 Years For TerraPower in Wyoming.” NCR News. Office of Public Affairs, Headquarters.

[17] djysrv. 2025. “TerraPower Natrium Reactor on the Grid by 2031.” Neutron Bytes.

[18] "NOAK”: “nth-of-a-kind,” reflecting cost reductions from learning and scaling.

[19] Potter, J. 2023. “The Birth of the Grid.” Construction Physics. U.S. Census Bureau. 1975. “Bicentennial Edition: Historical Statistics of the United States, Colonial Times to 1970.” Lazard. 2025. “Levelized Cost of Energy LCOE+.”

[20] Amoah, M. 2026. “The First 36 Hours of War Consumed Over 3,000 U.S.-Israeli Munitions.” Foreign Policy Magazine (FP).

[21] Shamim, S. 2026. “Could the US run low on weapons for its assault on Iran?” Aljazeera.

[22] Rego, M. 2026. “4 combat firsts as US flexes military might in Iran war.” The Hill.

[23] Pflughoeft, A. 2026. “Use of LUCAS drones in Iran puts focus on affordable, fast-moving acquisition.” Aerospace America. AJLabs. 2026. “US-Israel attacks on Iran: Death toll and injuries live tracker.” Aljazeera.

 

 

 

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