Newsletter #503:AIエージェント時代を見据えたNVIDIAの戦略、他。

作成者: ARK Invest|2026/03/23

本レポートは、2026323日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #503」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. AIエージェント時代を見据えたNVIDIAの戦略

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, AI & Cloud

 

先週開催されたNVIDIAGTCGPU Technology Conference)において、ジェンスン・フアン氏は、同社の次世代AI向け半導体プラットフォームであるBlackwell(ブラックウェル)およびRubin(ルービン)に関するAIシステムの受注残が、2027年までに累計1兆米ドルに達する見通しであることを明らかにしました。これは、わずか数ヵ月前に示された2026年までの5,000億米ドルのパイプラインの2倍に相当します[1]。それにもかかわらず、投資家が2027年以降の成長性に懐疑的な見方を示したことを受け、NVIDIAの株価は313日から20日にかけて約4%下落しました。

しかしながら、当社の調査によれば、AI演算市場はまだ初期段階にあり、2027年以降も大きく拡大していくと考えられます。ジェンスン・フアン氏が基調講演で強調したように、AIエージェントの登場は新たな「ChatGPTモーメント」を引き起こしました。単なる質問応答にとどまらず、実際に意味のあるタスクを遂行できる点が特徴であるAIエージェントへの需要は急速に拡大しています。昨年はClaude Codeが開発者の生産性に革命をもたらし、現在ではClaude CoworkOpenClawといったエージェント型アプリケーションへの需要がナレッジワークの領域で爆発的に広がっています。

報道によれば、Anthropicの年換算売上高(ARR)は、2026年初の90億米ドルからわずか3ヵ月足らずで190億米ドルへと急増しました[2]。また、ローンチからわずか5ヵ月という異例のスピードで、OpenClawGitHub上で「最も多くの“いいね”を獲得した」ソフトウェアプロジェクトとして、ReactLinuxを上回りました[3] (次の図を参照)

出所: Star-history.com2026年、202631日時点のデータ)本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の成果を示唆・保証するものではありません。

 

また、GTCでは、NVIDIAがエージェント型システムの拡大を取り込むため、以下のような取り組みを進めていることも発表されました。

  • GroqチップをVera Rubinラックに統合し、推論速度を向上
  • OpenClawを企業環境でより簡単かつ安全に導入可能とするエンタープライズ向けラッパー「NemoClaw(ニーモクロウ)」の提供
  • タスク実行におけるエージェントのツール呼び出し性能を高める専用Vera CPUサーバーの開発
  • 長文コンテキスト推論の性能を向上させる新たなストレージアーキテクチャの導入

これら一連の発表から浮かび上がるのは、AIエージェント主導の経済に向けたインフラ構築において、NVIDIAが主導的な地位を確立しているという点です。需要が供給を上回る状況が続く中、NVIDIAは可能な限り迅速に生産拡大を進めています。

 

2. TeslaSemiが始動、自動運転トラックの商用化が進展

By Daniel Maguire, ACA & Tasha Keeney, CFA | @ARKInvest
Autonomous Tech & Robotics Team

 

先週、The Wall Street Journalは、年内の商用ローンチを前にしたTesla Semiの試験運用ドライバーからの初期評価を報じました。ドライバーからは、中央配置のシート、より高速な充電性能、そして約500マイルの航続距離が主な特徴として挙げられています。価格は約30万米ドルと見られており[4]、競合する電動トラックより約10万米ドル低い一方で、ディーゼルトラックの約2倍の水準です。Semiの納入は今夏に開始され、年間5万台規模まで拡大する見込みで、これは米国のクラス8大型トラック販売の約4分の1に相当します[5]

Teslaの完全電動のSemiトラックの投入と同時に、米国では完全自動運転トラックの商用化も動き出しています。Aurora Innovation20255月にドライバー不在の長距離トラック輸送の商用運行を開始し[6]、年末までに200台超の完全無人トラックの展開を見込んでいます[7]。一方、Kodiak Roboticsは、Atlas Energy Solutions向けにパーミアン盆地で20台の無人トラック運用を拡大しており、年内には長距離輸送での無人運行開始を計画しています。Teslaはまずロボタクシー事業の拡大に注力していることもあり、トラック向けの完全自動運転の展開については現時点で詳細をほとんど明らかにしていません[8]

ARKの見解では、より大きな市場機会を踏まえると、Teslaがロボタクシー市場に注力していることは戦略的であると考えられます。当社の調査によれば、自動運転トラック市場は2030年までに約3,200億米ドルの収益を生み出す可能性がある一方、ロボタクシープラットフォームは約1.9兆米ドル規模へと拡大すると見込まれます(下図参照)。また、同社はロボタクシー分野において市場参入の先行企業ではないものの、最初に全国規模での展開を実現する可能性が高いとみています。その一方で、自動運転トラック市場への本格参入の可能性も排除されるものではありません。

注記: 数値は四捨五入。ARKは最新の情報および技術・業界動向に基づき、予測を継続的に更新しています。本年の更新には、車両オーナーの評価倍率の引き上げや、自動運転の普及曲線に関する前提の見直しが含まれます。「EBIT」は利払前・税引前利益を指します。「自動運転技術プロバイダー」とは、Waymoのように自動運転ソフトウェアを開発・提供する企業を指します。出所: ARK Investment Management LLC2026年)、AAA2025年)、Capital IQ2025年)、New York City Taxi & Limousine Commission2014年)のデータに基づく。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有を推奨するものではありません。予測には本質的な不確実性が伴い、依拠すべきものではありません。

 

3. エンタープライズにおけるナレッジワーク革命が始動

By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist

 

先週、The Wall Street Journalは、OpenAIがエンタープライズ向けアプリケーション(ChatGPTCodexAtlasブラウザ)を単一のアプリケーションへ統合する方針であると報じました[9]。これにより、エンタープライズ分野におけるAnthropicとの競争力が強化される見込みです。実際、ChatCoworkCodeを含むClaudeアプリはナレッジワーカーの強い支持を獲得しており、Anthropicの年換算売上高(ARR)は、12月の90億米ドルから3月初旬には190億米ドルへと、わずか2ヵ月あまりで2倍超に拡大しました。

OpenAIAnthropicの収益成長の加速が示す通り、ナレッジワーカーの働き方は大きく変化しつつあります。当社の予測では、今後数年のうちに両社は、過去40年にわたりエンタープライズ向けオペレーティングシステムおよび生産性ソフトの中核を担ってきたMicrosoftOfficeWindowsに関連する収益規模を上回る見通しです(下図参照)。

注記: すべての数値は2025年ドルベースで表示。Officeの数値については、FY2024までは従来のOffice製品およびクラウドサービスの範囲に基づき構築。FY2025以降はMicrosoft 365の開示範囲が拡大し、Windows Commercialのオンプレミス要素も含まれるようになりましたが、これらの新たな要素や、識別・認証関連などの個別に開示されていない追加事業は、従来のOfficeには含めていません。出所:ARK Investment Management LLC2026年)。The InformationおよびBloomberg、ならびにMicrosoftの投資家向け開示資料(202635日時点)に基づく。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有を推奨するものではありません。過去の実績は将来の成果を示唆・保証するものではありません。予測には本質的な不確実性が伴い、依拠すべきものではありません。

 

ナレッジワークの変革は、ソフトウェアのバリューチェーンそのものを変えつつあります。生産性向上のインパクトを踏まえると、グローバルのエンタープライズ向けソフトウェア市場は、今後5年間で年率38%で成長し、現在の約1.4兆米ドルから2030年には7兆米ドル超へと拡大する可能性があります(その大半がAIによって駆動される見込みです)。これまでのビジネスサイクルに基づけば、その約半分(約3.5兆米ドル)は、画一的なエンタープライズソフトウェアを提供するSoftware-as-a-ServiceSaaS)企業に帰属すると考えられます。一方で、そのコスト構造の恩恵は、Infrastructure-as-a-ServiceIaaS)やPlatform-as-a-ServicePaaS)、さらには基盤モデルへと波及してきました(次の図を参照)。

出所: ARK Investment Management LLC2026年)。Gartner2025年)およびARK Investment Management2026年)に一部基づく[10]。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有を推奨するものではありません。予測には本質的な不確実性が伴い、依拠すべきものではありません。

 

AI による新たなダイナミクスに基づき、企業は自社ソフトウェアをカスタマイズする傾向が強まるでしょう。その際、PalantirAmazonといった PaaSPlatform-as-a-Service)プロバイダーや、自社で構築したカスタムモデルへの依存度が高まる可能性があります。極端なケースでは、ソフトウェアのバリューチェーンは、現在50%を占めるSaaSSoftware-as-a-Service)から10%へとシフトし、残りの割合はPaaSPlatform-as-a-Service)、IaaSInfrastructure-as-a-Service)、およびデータセンターに配分される可能性があります(次の図を参照)。

 

出所: ARK Investment Management LLC2026年)。Gartner2025年)およびARK Investment Management2026年)に一部基づく[11]Management2026年)に一部基づく。¹¹本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買や保有を推奨するものではありません。予測には本質的な不確実性が伴い、依拠すべきものではありません。

 

明らかに、エンタープライズにおけるナレッジワークの構造は急速に変化しています。AIは既存プレイヤーの競争優位性を揺るがし、新たなプラットフォーム群の台頭を後押しする可能性があります。

 

 

 

 

 

 


[1] Nvidia. 2026. “Nvidia GTC Keynote 2026.” YouTube.

[2] DeMatteo, M. 2026. “Anthropic ARR surges to $19 billion on Claude Code strength.” Investing.com.

[3] Star-history. 2026. “OpenClaw Surpasses React to Become the Most-Starred Software Project on GitHub.”

[4] Berger, P. 2026. “Tesla Finally Has Its First Semi-Truck and It’s Already a Hit With Truckers.” The Wall Street Journal.

[5] Abbott, C. 2026. “2025 ends with surge of new Class 8 truck sales — but not enough to offset declines.” The Trucker.

[6] Aurora. 2025. “Aurora Begins Commercial Driverless Trucking in Texas, Ushering in a New Era of Freight.”

[7] Aurora Innovationによる完全無人運転の発表を受け、同社の顧客であるPACCARは、ベース車両に試作段階の部品が含まれていることを理由に、運転席に人員を配置するよう要請しました。そのため、引き続き「Aurora Driver」が車両の運行を担うこととなりますが、この対応は同社の無人運転開発計画に影響を与えるものではありません。2026年第2四半期には、パートナーからの要請による同乗者を伴わない無人運行の拡大も引き続き見込まれています。

[8] Tesla. 2025. “Tesla, Inc. (TSLA) Q3 FY2025 earnings call transcript.” Yahoo Finance.

[9] Jin, B. 2026. “OpenAI Plans Launch of Desktop ‘Superapp’ to Refocus, Simplify User Experience.” The Wall Street Journal.

[10] Gartner. 2025. “Gartner Says Worldwide IaaS Public Cloud Services Market Grew 22.5% in 2024.” See also ARK Investment Management LLC. 2026. “Big Ideas 2026.”

[11] 同上

 

 

 

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