By ARK Invest

本レポートは、2026728日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #518」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. TeslaはロボタクシーとOptimusで慎重姿勢を維持する一方、MegapodAI構想を拡大

By Tasha Keeney, CFA | @TashaARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics /
Director of Investment Analysis

 

先週開催された2026年第2四半期決算説明会で、Tesla経営陣は無人ロボタクシーの展開拡大について慎重な姿勢を示しました。同社によれば、現在サービスは7都市で稼働しており、安全性を最優先にしながら1都市ずつ拡大を進めています[1] TeslaAI担当バイスプレジデントであるアショク・エルスワミー氏は、同社のロボタクシー車両が累計38万マイル超の無人走行を実施し、その間に特筆すべき事故は発生していないと説明しました。また、2026年初頭以降、無人走行距離は週次で2桁成長を続けていると述べています[2]。さらに同氏は、新都市へのサービス展開に必要な時間は今後「ゼロに近づいていく」とし、最終的には州単位での承認取得につながるとの見通しを示しました[3]。アショク氏とイーロン・マスク氏はともに、現在運行中の車両群が無人ロボタクシー拡大の中核となるFull Self-DrivingFSD v15をテスト運用しており、計画している改善項目の40%を既に達成していると明らかにしました[4]

安全性を重視しているとはいえ、Teslaの展開スピードはWaymo(ウェイモ)の少なくとも5倍に達しています。Waymo2020年にフェニックスでサービスを開始してから5都市展開までに5年を要しました[5]。一方Teslaは、約1年前のオースティンでのサービス開始以来、既に7都市へ拡大しています。約900万台の「ロボット」(車両)から現実世界のデータを収集できる垂直統合型メーカーとして、Teslaは今後も急速にフリートを拡大していくと考えられます。ARKは、ロボタクシー市場が数兆米ドル規模の機会となり、今後5年でTeslaの企業価値の中心になると予想しています。

Teslaのもう一つのAIロボティクス事業であるOptimus(オプティマス)も着実に進展しています。先週公表された株主向け書簡によると、Optimusの生産は今年後半にFremont(フリーモント)工場で開始される予定で、かつてModel SModel Xを製造していたラインが活用されます[6]。マスク氏は生産立ち上げの難しさを認めていますが、ARKの調査によれば、Optimus2030年代に入る頃までに人間レベルの性能へ到達する可能性があります[7]

TeslaAI戦略はロボタクシーやヒューマノイドロボットにとどまりません。決算説明会でマスク氏は、新たな「Megapod(メガポッド)」アーキテクチャについて言及しました。これはTesla独自のAI4チップとx86コンピューティングをMegapack(メガパック)型のシステムへ組み込んだもので、「国内外のどこへでも設置可能」だと説明しています。Supercharger(スーパーチャージャー)網で利用可能な7ギガワットの電力は、集中型データセンターの成長を制約している電力不足への対策となる可能性があります[8]

またTeslaCybercab(サイバーキャブ)にStarlinkを組み込んでいます。その目的は車内エンターテインメントだけではなく、無人車両間の通信、ナビゲーション、顧客サービス、フリート管理にも及びます[9]。さらにマスク氏は、同じ端末が分散型セルラーネットワークにおける移動式中継局として機能し、周辺のスマートフォンやWi-Fi機器へ通信を提供する可能性にも言及しました[10]。ロボタクシー、Optimus、コンピューティングのいずれか一つでも大規模に成功すれば、その価値創出効果は極めて大きいとARKは考えています。

 

2. StripeOpenRouterを買収する可能性

By Varshika Prasanna | @varshikaARK
Research Analyst, Fintech

 

Stripe(ストライプ)は、AIインフラ企業OpenRouter(オープンルーター)の買収に向けて協議を進めていると報じられています。買収額は約100億米ドルとされており[11]、数ヵ月前の評価額である13億米ドルの9倍超に相当します。OpenRouterAI開発者向けインフラとして急速に存在感を高めています。同社は統合APIを提供しており、500万人超の開発者がOpenAI(オープンエーアイ)、Anthropic(アンソロピック)、およびオープンウェイトモデルを含む数百種類のAIモデルへアクセスし、リクエストを振り分けることができます。

開発者は個別のモデル提供企業ごとに統合作業を行なう必要がなく、単一のインターフェースで性能比較、コストやレイテンシーの最適化、請求管理を実施できます。報道によれば、OpenRouterは毎月数百兆トークンを処理しています。

Stripeは既にOpenRouter向けに決済、利用量計測、請求管理、不正検知サービスを提供しており、今回の買収が実現すれば、新たに形成されつつあるAIエージェント経済の中心的存在となる可能性があります。AIエージェントが自律的にサービスを購入し、トークンを消費し、ワークフローを実行するようになる中で、推論処理のルーティングとプログラマブルな決済の両方を管理できることは、極めて戦略的な意味を持つでしょう。Stripeはこれまで、複雑な決済機能を抽象化することでインターネット経済の重要なインフラを構築してきました。OpenRouterの買収によって、その地位をAI時代へ拡大する可能性があります。 加えて、同社は最近、従量課金型請求プラットフォーム大手のMetronome(メトロノーム)を買収しています。これにより、AI推論リクエストのルーティングからトークン利用量の計測、決済処理まで、AI収益化のライフサイクル全体を管理できる体制が整いつつあります。

オンライン決済を簡素化し、インターネット企業に不可欠なインフラへ成長したように、StripeAIネイティブな次世代決済ソフトウェアの標準プラットフォームとなる可能性があります。

 

3. OpenAIHugging Face、前例のないサイバーインシデントを公表

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, AI & Cloud

 

716日、Hugging Face(ハギングフェイス)は自社インフラへの侵入事案を公表しました。当初、この攻撃は自律的なAIによる攻撃と説明されました[12]。その後、721日に公開されたインシデント報告書の中で、OpenAIはこの事案がGPT-5.6 Solおよびさらに高度な未公開モデルを用いたサイバー能力評価中に発生したことを明らかにしました[13]。今回の事案は前例のないものでした。サイバー攻撃能力を評価するために試験運用されていたOpenAI自身のモデルが、閉鎖された研究環境から抜け出し、Hugging Faceの本番システムへ侵入したのです。注目すべきは、Hugging Faceがインシデント対応に際して、商用大規模言語モデル(LLM)のAPIがサイバーセキュリティ上の制約により攻撃データの解析を拒否したため、自社インフラ上でオープンウェイトモデルを用いて分析を実施した点です。

OpenAIは、自社モデルのサイバー攻撃能力の上限を測定する目的で評価を実施していました。モデルはパッケージレジストリのプロキシに存在した未知の脆弱性を利用してインターネット接続を獲得し、研究環境を経由してHugging Faceのシステムへ侵入したとされています。OpenAIは、モデルがHugging Face上に保管されていたExploitGym(エクスプロイトジム)の保護対象テストソリューションを探索していた可能性が高いとみていますが、調査はまだ継続中であり、現時点では暫定的な見解です。

ARKは、このインシデントによってAI規制への関心がさらに高まり、評価環境の強化だけでなく、監視機能、アクセス管理、AIネイティブなサイバー防御ソリューションへの需要も拡大すると考えています。また今回の事例は、AIが攻撃だけでなく防御にも活用できることを示しています。企業は最先端AIを防御ツールとして活用できる一方、主要モデル開発企業には、Hugging Faceのような組織が自前環境へ依存しなくても済むような、安全かつ実用的なサービス提供が求められるでしょう。

 

 

 

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[1] Tesla, Inc. 2026. “Q2 2026 Update. Shareholder letter, July 22, 2026.”

[2] 同上

[3] 同上

[4] 同上

[5] CNBC. 2025. “Waymo Says It Will Launch in More Texas and Florida Cities in 2026”; MarketBeat. 2025. “Waymo Plans to Dispatch Robotaxis in Dallas Next Year as Its Driverless Expansion Races Ahead.” City-launch dates per Waymo company blog and press updates, 2020–2025.

[6] Tesla, Inc. 2026. “Q2 2026 Update. Shareholder letter, July 22, 2026.”

[7] ARK Investment Management LLC. 2026. Internal research.

[8] Tesla, Inc. 2026. “Q2 2026 Earnings Call.”

[9] Klender, J. 2026. “Tesla’s Reason for Starlink Integration on Cybercab Might Surprise You.” Teslarati.

[10] Tesla, Inc. 2026. “Q2 2026 Earnings Call.”

[11] Jin, B. et al. 2026. “Stripe in Talks to Buy Buzzy AI-Model Marketplace OpenRouter. The Wall Street Journal.

[12] Hugging Face. 2026. “Security incident disclosure — July 2026.”

[13] OpenAI. 2026. “OpenAI and Hugging Face partner to address security incident during model evaluation.”


 

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