Newsletter #522:OpenAIの成長はIPOを前に転換点を迎えつつある可能性、他。

作成者: ARK Invest|2026/08/24

本レポートは、2026824日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #522」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. OpenAIの成長はIPOを前に転換点を迎えつつある可能性

By Karim Mattar | @mattarARK
Research Associate, AI & Cloud

 

先週、OpenAICFO(最高財務責任者)であるサラ・フライアー氏は社員向けに、「事業成長がこのまま加速すれば、それ以前の可能性もあるが、2027年には上場企業になる」と述べました[1]OpenAI6月に非公開でIPO(新規株式公開)を申請しており、その後、競合のAnthropic(アンソロピック)も続きました。Anthropicの方が先に上場する可能性もあります。

Claude CodeCoworkの成功を背景にAnthropicの急成長は大きな注目を集めてきましたが、足元のデータによれば、OpenAIも独自の転換点を迎えた可能性があります。RampAI Indexによると[2]OpenAIAPIApplication Programming Interface)利用に対する企業支出の成長率は、前四半期の前期比41%から82%へと加速しました。また、2025年第3四半期以来初めて、Anthropicの成長率を上回りました。Anthropicも依然として76%という驚異的な成長率を維持しています。


出所:Ramp AI Indexramp.com/data/ai-index)。Ramp Token Spend Managementを利用するAPI接続企業の支出データに基づく。2026年第3四半期は、71日から817日までの期間を前四半期の同日数期間と比較。情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨する投資助言ではありません。

 

OpenAIの売上指標も同様の傾向を示しています。先週開催された全社会議でフライアー氏は、会社全体の売上ランレートが四半期累計で35%増加し、年換算売上高(ARR)が400億米ドルを超えたと説明しました[3]。特にエンタープライズ部門はさらに高い成長を示しており、ランレートは四半期累計で50%増加しています[4]

ARKの見解では、この成長加速は上場準備を進めるOpenAIの競争優位性をさらに強化するでしょう。IPOにより投資家は、最先端AI企業の経済性について、競争のために必要な計算資源、インフラ投資、モデル開発コスト、そして収益化能力をより詳細に把握できるようになります。

さらに重要なのは、今回のデータが「OpenAIは競争力を失いつつある」という見方に疑問を投げかけていることです。上場後は四半期ごとの情報開示を通じて、最先端AI企業が急拡大する売上を持続的な経済的リターンへ転換できるかどうかを投資家が継続的に評価できるようになるでしょう。

 

2. ModernaMerckが個別化がん治療薬に向けた有望な進展を発表

By Brett Winton | @wintonARK
Chief Futurist

 

先週、Moderna(モデルナ)とMerck(メルク)は、高リスクの黒色腫(メラノーマ)患者を対象とした「intismeran autogene」の第3相試験で良好な結果を発表しました。MerckKeytruda(キイトルーダ)と併用されるこの治療法は、腫瘍を外科的に切除した後に投与されます。INTerpath-001試験では、ステージIIBからIVの腫瘍切除を受けた1,137人の患者が登録されました。併用療法は、無再発生存期間(recurrence-free survival)および遠隔転移無生存期間(distant metastasis-free survival)の両方においてKeytruda単独療法を上回る結果を示し、個別化ネオアンチゲン療法として初めて、またあらゆるmRNAベースのがん治療薬としても初めて、第3相試験で成功した事例となりました[5]。両社は詳細なデータを公表していないものの、本試験は、より大規模な患者集団において先行する第2相試験の結果を確認しただけでなく、新たながん分子治療薬という幅広いカテゴリーの可能性を示すものとなりました。

一般には「個別化がんワクチン」と説明されますが、intismeranは通常の予防ワクチンとは異なり、がん診断後に投与される治療用ワクチンです[6]。治療は患者の血液と腫瘍サンプルの採取から始まります。DNAシーケンシングによって腫瘍と正常DNAを比較し、がん細胞のみに存在する変異を特定します。RNA解析により実際に発現している変異を確認し、その後ソフトウェアが患者の免疫系に認識される可能性の高い変異タンパク質を予測します[7]

その分析結果に基づき、Modernaは最大34種類の腫瘍特異的標的(ネオアンチゲン)を選定し、それらをコードするmRNAを脂質ナノ粒子に封入して製造します。その結果生まれる治療薬は、患者一人ひとり専用の医薬品です[8]

投与後、mRNAは細胞にネオアンチゲンを含むタンパク質の生成を指示します。免疫系はこれらを異物として認識してT細胞を活性化し、同じ変異を持つがん細胞を攻撃できるT細胞集団を形成します。Keytrudaは、腫瘍が免疫応答を抑制する際に利用するPD-1シグナルを阻害することで、これらT細胞の寿命を延ばします[9]

実際にこのメカニズムは機能しています。研究者らは、intismeran投与患者において、ワクチンに含まれるネオアンチゲンを標的とする新たなT細胞集団が形成されることを確認しています。再発防止に重要なメモリーT細胞も含まれ、一部は数ヵ月間持続しました[10]。先行する第2b相試験では、Keytruda単独療法と比較して、併用療法が再発または死亡リスクを49%低減し、遠隔転移リスクをさらに大幅に低減することが示されました[11]

現在、この治療法は手術前に進行していた患者だけでなく、より早期のがんへと対象を拡大しています。MerckModernaは、高リスクのステージI肺がん患者を対象とした試験も開始しました[12]

個別化治療薬の製造時間やコストが低下すれば、早期がん患者への適用はさらに容易になるでしょう。高速なシーケンシング技術、優れたネオアンチゲン予測技術、自動化された製造技術によって、早期がん患者への大規模な適用が可能になると考えられます[13]

今回の黒色腫試験は二つの仮説を同時に検証しています。第一に、生物学的仮説として、患者自身の腫瘍変異情報が免疫系を訓練し、がんを認識させることができるという点です。第二に、産業的仮説として、シーケンシング技術とソフトウェアを用いて個々の腫瘍情報を患者専用の治療薬へと変換し、それを製造ライン上で生産できるという点です。第3相試験の結果は、第一の仮説を強く裏付ける証拠となりました。今後、第二の仮説がどこまで拡張可能なのかは、商業生産体制の確立によって明らかになるでしょう[14]

 

3. 米国でドローン配送が急速に拡大

By Autonomous Technology & Robotics Team | @ARKInvest
Tasha Keeney, CFA & Daniel Maguire, ACA

 

先週、Zipline(ジップライン)とUber(ウーバー)は、2029年末までに1100万件のドローン配送を目指す提携を発表しました。これは、Zipline2016年以降、世界全体で累計約270万件の配送を行なってきた実績と比較すると、両社にとって極めて大きな拡大目標です[15]。米国では、Uberは配送取扱量ベースで第2位の配送プラットフォームであり、Ziplineにとって強力なパートナーです。Ziplineは第3位のプラットフォームであるWonder/Grubhubとも提携しています。一方、配送取扱量ベースで最大のフードデリバリープラットフォームであるDoorDashは異なるアプローチを採用しており、航空運送事業者となった今[17]、独自のドローンプラットフォーム「DoorDash Air」を構築しています[16]

またAmazonは、2013年に最初のドローン実験を開始して以降、進展は緩やかでしたが、運用上の問題や規制当局による監視が続いた期間を経て初めての本格的な事業アップデートとして[18]、今年すでに数十万個の荷物を配送した後、2026年末までにサービス提供エリアを約500の都市・地域へ拡大する計画を発表しました[19]。さらに、Amazonが導入を進めるロープで荷物を降下させる「gentle delivery option(やさしい配送オプション)」への移行は[20]、ドローンが荷物をプールの中へ落としてしまう問題への対策になると考えられます[21]

この問題は先週SNSなどで大きく拡散されました。AmazonZipline以外にも、Mannaはここ数週間でオクラホマ州タルサに進出しました。またWalmartは、Alphabet傘下のWingおよびZiplineとの提携を通じて累計100万件のドローン配送を達成した後[22]2027年には270ヵ所を超えるドローン配送拠点の展開を目指しています。こうした2026年の急速な拡大は、ARK2030年までに約1,600億米ドル規模の売上機会になると考える市場の形成を示唆しています。ARKのリサーチによれば、大規模なドローン配送はラストワンマイル配送コストを現在の約15米ドルから1米ドル未満へと90%超削減できる可能性があります。以下の図表が示すように、そのようなコスト水準とより迅速な配送が実現すれば、ドローン配送の利用頻度は大幅に増加し、対象市場も拡大していくでしょう。

他の破壊的イノベーションと同様に、技術革新は最初はゆっくりと進み、その後、一気に普及します。ARKは、2026年がドローン配送の転換点になりつつあると考えています。

注:コスト低下率は5%単位で四捨五入。出所:ARK Investment Management LLC, 2026Self2025年)、Aurora2025年)、中華人民共和国国務院(2025年)のデータに基づく[23]。さらに、ARK独自分析には複数の追加データソースが含まれる。情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨する投資助言ではありません。

 

 

 

 

 

 

  

[1] Capoot, A. and Rooney, K. 2026. “OpenAI ‘will be a public company in 2027’ or sooner, CFO Friar tells employees.” CNBC.

[2] Ramp. 2026. “Ramp AI Index: Adoption Rate.”

[3] Capoot, A. and Rooney, K. 2026. “OpenAI ‘will be a public company in 2027’ or sooner, CFO Friar tells employees.” CNBC.

[4] 同上。

[5] www.modernatx.com/ir-insights-phase-3-intesmeran Moderna. 2026. “Merck and Moderna Announce Phase 3 INTerpath-001 Trial of Intismeran Autogene Plus KEYTRUDA® Met Endpoints of Recurrence-Free Survival (RFS) and Distant Metastasis-Free Survival (DMFS) in Patients With Completely Resected Stage IIB-IV Melanoma.”両社は、完全切除されたステージIIBIVメラノーマ患者1,137名を対象として、無再発生存期間(RFS)および遠隔転移無生存期間(DMFS)の両方について統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を報告した。また、この結果は個別化ネオアンチゲン療法およびmRNAベースのがん治療として初めての第3相試験成功例であるとしている。

[6] National Cancer Institute. 2026. “Cancer Treatment Vaccines.”治療用がんワクチンは予防ワクチンとは異なり、既にがんを患っている患者に投与され、免疫系ががん関連抗原を認識できるよう訓練することを目的としている。

[7] www.modernatx.com/en-US/media-center/all-media/blogs/advancing-fight-against-cancer Holen, K. / Moderna. 2023. “Advancing the Fight Against Cancer through mRNA & AI.”腫瘍組織および血液サンプルから次世代DNARNAシーケンシングを実施し、その後アルゴリズムによって変異を特定、免疫応答を最も引き起こしやすい最大34個のネオアンチゲンを予測するプロセスについて説明している。

[8] 同上。Moderna describes using next-generation DNA and RNA sequencing from tumor and blood samples, followed by algorithms that identify mutations and predict up to 34 neoantigens most likely to generate an immune response. UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION. 2025. “Form 10-K. Moderna, Inc. December 31, 2025.” も参照。Modernaは患者ごとの腫瘍変異の特定、変異をコードしたmRNAの合成、および独自の脂質ナノ粒子への封入を行なうとしている。またMerckは、intismeranを最大34個の患者固有ネオアンチゲンをコードする単一の合成mRNAであると説明している。

[9] UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION. 2025. “Form 10-K. Moderna, Inc. December 31, 2025.” Modernaは、患者固有の腫瘍変異を特定し、それらをコードするmRNAを合成して脂質ナノ粒子へ封入する役割を担うとしている。また、KEYTRUDA®PD-1経路を阻害することでT細胞による免疫反応を強化する。

[10] Gainor, J.F. 2024. “T-cell Responses to Individualized Neoantigen Therapy mRNA-4157 (V940) Alone or in Combination with Pembrolizumab in the Phase 1 KEYNOTE-603 Study.” Cancer Discov . mRNA-4157を用いた臨床免疫原性研究では、新たに誘導されたネオアンチゲン特異的T細胞応答および既存のネオアンチゲン特異的T細胞応答が確認されており、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞応答の双方が認められた。また、それらの応答は治療後数ヵ月にわたり持続した。第1相試験データに関する公表レビューでは、その持続期間は最大で約30週間に及ぶと報告されている。

[11] Merck. 2026. “Moderna and Merck Present 5-Year Data for Intismeran Autogene in Combination With KEYTRUDA® (pembrolizumab) in Patients With High-Risk Stage III/IV Melanoma Following Complete Resection at the 2026 ASCO Annual Meeting.” MerckおよびModernaは、ASCO 2026KEYNOTE-942試験の5年間追跡データを発表した。追跡期間中央値60.3ヵ月時点において、intismeranKeytrudaの併用療法は、Keytruda単独療法と比較して、再発または死亡のリスクを49%(HR 0.51)低減し、遠隔転移または死亡のリスクを59%低減した。

[12] ClinicalTrials.gov. 2026. “A Clinical Trial of Adjuvant Intismeran (V940) With or Without Pembrolizumab Coformulated With Berahyaluronidase Alfa (MK-3475A) in High-Risk Stage I Non-Small Cell Lung Cancer (V940-014) (INTerpath-014).” INTerpath-014NCT07513376)。MerckおよびModernaは、完全切除された高リスクのステージI非小細胞肺がん患者を対象に、intismeran単独またはpembrolizumab併用による第3相試験を募集している。同試験は20265月に開始された。

[13] Holen, K. / Moderna. 2023. “Advancing the Fight Against Cancer through mRNA & AI.” Modernaは、個別化ネオアンチゲン療法では患者ごとに個別の治療薬を設計・製造する必要があると説明している。また、AIおよび製造工程の自動化を活用することで、数千件規模に及ぶ患者ごとの治療薬バッチについて、スケジューリングおよび生産管理を行なっているとしている。

[14] Holen, K. / Moderna. 2023. “Advancing the Fight Against Cancer through mRNA & AI.” Holen氏は、腫瘍組織および血液サンプルに対する次世代DNARNAシーケンシングを実施した後、アルゴリズムによって変異を特定し、免疫応答を引き起こす可能性が最も高い最大34個のネオアンチゲンを予測するプロセスについて説明している。また、個別化ネオアンチゲン療法では患者ごとに個別の治療薬を設計・製造する必要があり、AIと製造工程の自動化を用いることで、数千件規模に及ぶ患者別治療薬バッチのスケジューリングおよび生産管理を行なっているとしている。Merck. 2025. “Moderna Analyst Day Highlights Pipeline Progress and Business Strategy Updates.”も参照。

[15] Zipline, “Zipline Will Make 1 Million Deliveries Per Day Through New Uber Partnership.”

[16] DoorDash. 2026. “DoorDash Is Cleared for Takeoff: Launches DoorDash Air, Our In-House Drone Delivery Program.”

[17] Earnest Analytics. 2025. “DoorDash leads majority of US food delivery share.”

[18] Wiggers, K. 2025. “Amazon suspends US drone deliveries following crash at testing facility.” TechCrunch.

[19] Greenawalt, T. 2026. “Amazon Prime Air drone delivery is expanding to nearly 500 US cities and towns this year.” Amazon News.

[20] Palmer, A. 2026. “Amazon to expand drone service to nearly 500 cities after targeting 1 million deliveries this year.” CNBC.

[21] ABC7 News. 2026. “An Amazon customer in Texas was not enthused…” X.

[22] Walmart. 2026. “Walmart Celebrates 1 Million Drone Deliveries.”

[23] Self. 2025. “The Most Expensive Cities for Food Delivery in the U.S.” Aurora. 2025. “Investor Presentation, October 2025.” The State Council, The People’s Republic of China. 2025. “China's express delivery sector posts double-digit growth in first 11 months.”

 

 

 

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