本レポートは、2026年9月8日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #524」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
By Tasha Keeney, CFA | @TashaARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics /
Director of Investment Analysis
先週、Teslaはオースティンでイベントを開催し、同社のロボタクシーサービス向けに開発した2人乗り専用車両「Cybercab(サイバーキャブ)」を披露しました。その翌日には、初の商用ライドサービスの提供を開始しました[1]。同社によると、ロボタクシー車両群の監視不要走行距離はわずか6週間で2.6倍に拡大し、第2四半期決算説明会で報告された38万マイルから100万マイルへと増加しました[2]。
Teslaは公式サイト上で、商業車両運営事業者向けの「Robotaxi Interest Form(ロボタクシー関心登録フォーム)」を公開し、Cybercab車両群の購入意向について回答を求めています[3]。ARKが『Big Ideas 2026』で示したように、車両運営事業者はロボタクシーのバリューチェーンにおいて重要な役割を担っており、下図が示すように、大半の車両群は第三者事業者によって所有・運営されるとARKは予測しています[4]。
注: 数値は四捨五入しています。ARKは最新の利用可能な情報や技術・業界動向に基づき、予測を継続的に見直しています。本年の更新には、車両運営事業者区分に対する評価倍率の引き上げや、市場リーダー各社の最新予測に基づく自動運転普及曲線の調整が含まれます。「EBIT」は支払利息・税引前利益を指します。「Autonomous Technology Providers(自律運転技術プロバイダー)」とは、Waymo(ウェイモ)のような自動運転ソフトウェアを開発・提供する企業を指します。出所:ARK Investment Management LLC, 2026。AAA(2025年)、Capital IQ(2025年)、New York City Taxi & Limousine Commission(2014年)のデータに基づく[5]。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨するものではありません。予測には本質的な限界があり、その実現を保証するものではありません。
Cybercabは、Teslaの「Unboxed(アンボックスド)」製造プロセスを採用した初の車両です。このプロセスでは、従来のように車体を組立ライン上で移動させるのではなく、車両モジュールを並行して組み立てます。その結果、生産ラインの設置面積を50%削減しながら、大幅な生産能力向上を可能にしています[6]。また、アンボックスド方式は車両構造を簡素化し、レアアース(希土類金属)を一切使用しません。イーロン・マスク氏は、航続距離を維持しながらそれを実現することは「極めて困難」であると説明しています[7]。Cybercabは、完全な電子制御式ブレーキシステム(brake-by-wire)を採用した初のTesla車であり、油圧式ブレーキフルードを必要としません。従来の配管や油圧ラインの代わりに、各ブレーキキャリパーにアクチュエーターを配置しています[8]。
Cybercabは、競争力のある価格でTeslaのロボタクシーサービスを拡大するための中核的な存在であり、ARKはそれが自律走行ライドヘイリング市場を数兆米ドル規模の機会へと押し上げる鍵になると考えています。オースティンでの初期料金を見ると、15分程度の移動において、Cybercabの料金はTeslaアプリ上のModel Yロボタクシーより約40%低く、Uberより約50%低い水準となっています。ただし、待ち時間は長くなっています[9]。ARKは、ロボタクシーが本格普及した段階では、運賃は1マイル当たり0.25米ドル程度まで低下すると予測しています。これは、人間が運転するライドヘイリングサービスの約10分の1のコストであり、下図が示すように、自家用車保有コストの約3分の1に相当します[10]。
注: 数値は四捨五入しています。
出所:ARK Investment Management LLC, 2026。Yipit(2025年)、AAA(2025年)、GetTransfer(2025年)のデータに基づく[11]。 また、記載された情報にはARK独自の分析結果が含まれている場合があり、その分析では追加的な情報源を活用しています。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨するものではありません。予測には本質的な限界があり、その実現を保証するものではありません。
By Jozef Soja | @JozefARK
Research Analyst, AI & Cloud
先週、OpenAIは複雑なエージェント業務向けの最上位モデルである「GPT-6 Astra(アストラ)」を発表しました[12]。AstraはGPT-5.6シリーズを上回る性能と価格帯を目指して設計されており、AnthropicのFable 5.1のようなプレミアムモデルと真っ向から競合します。OpenAIはAstraを、ツール利用、エンタープライズ向けアプリケーション、高度な推論を伴う、より複雑な業務に対応するモデルとして位置付けています。
一見すると、総合ベンチマークに基づく性能向上幅は限定的に見えます。AstraはArtificial AnalysisのIntelligence Indexで61.2を記録し、GPT-5.6 Solの60.9とほぼ同等である一方、Fable 5の62.1をわずかに下回りました。しかし、このような総合ベンチマークでは、Astraが重点を置くコンピューター操作やブラウザー利用、処理速度、効率性、そして長時間にわたるタスク実行能力といった差別化要素を十分に評価できません。特に注目すべきは、AstraがARC-AGI-3で99.9%という極めて高いスコアを記録したことです。これはSolの7.8%、Opus 5の30.2%を大きく上回っています[13]。ARC-AGI-3は、エージェントを未知の対話型環境に説明なしで配置し、自律的に環境を探索し、目標を推測しながら効率的に適応する能力を評価するベンチマークです。長時間かつ高コンテキストなワークフローと実用的な成果を重視するAstraは、OpenAIのResponses APIを活用して評価されました。
AstraのAPI利用料金は、入力トークン100万件当たり10米ドル、出力トークン100万件当たり50米ドルです。これはSolの2.5倍の価格設定ですが、「Agents’ Last Exam」ではOpus 5と比較して必要な出力トークン数が65%にとどまり、「Terminal-Bench 4.0」ではFable 5.1と比較してタスク当たりコストを63%削減したとされています[14]。言い換えれば、OpenAIは限られた計算資源当たりで見た場合、主要競合他社よりも高いトークン収益を得られる可能性があります。単位当たりの料金は高いものの、必要なトークン数や反復回数が少ないため、結果としてタスク完了までの時間や総コストは低下する可能性があります。
一部のAI専門家は、OpenAIが「recursive depth(再帰的深度)」と呼ばれる新しい技術を活用したのではないかと推測しています[15]。この手法では、Transformerモデルに新たなレイヤーを追加する代わりに、同じレイヤー内でトークン処理を繰り返します。その結果、必要なメモリー容量や出力トークン数を削減できる可能性があります。Astraはまず限定された組織向けに提供が開始され、その後、ChatGPT Plus、Pro、Business、Enterpriseの各ユーザーへと展開される予定です。また、APIに加えて、Microsoft AzureおよびAmazon Web Services(AWS)のBedrock経由でも利用可能になる予定です。
初期の第三者評価は好意的なものとなっています[16]。PerplexityやDatabricksは、自社のベンチマークにおいてAstraがAI性能の最前線をさらに押し広げたと評価しています。今後の本格展開によって、こうした優れたベンチマーク結果が実際の業務環境においても一貫して高い生産性につながるかどうかが明らかになるでしょう。
By Daniel Maguire, ACA | @DMaguireARK
Research Analyst, Autonomous Technology & Robotics
先週、イーロン・マスク氏は、これまで報じられていたように個人ではなく、SpaceXが天然ガスタービンメーカーのAPR Energy(APRエナジー)を買収したことを明らかにしました[17]。この買収の目的は、電力設備の展開を制約しているタービンブレードやベーン(静翼)の鋳造工程を内製化し、タービン配備のスピードを加速させることにあります[18]。マスク氏によると、この買収によって導入スケジュールを約18ヵ月前倒しできる見込みです[19]。これは、SpaceXが地上向けコンピューティング能力を、年末時点の約2ギガワット(GW)から来年末までに5~10GW、同氏の表現では「10GW近く」まで拡大する計画を支えるものです[20]。
AI向け計算資源の展開において、電力供給は主要なボトルネックとなっています。天然ガスタービンメーカーの多くは、すでに今後数年分の受注を抱えており、10年末近くまで供給余力がほとんどない状況です[21]。こうした供給不足を背景に、新規参入企業も登場しています。その一例がBoom Supersonicで、同社はもともと超音速飛行向けに開発していたSymphonyエンジンのコア技術を転用し、データセンター向け42メガワット(MW)の天然ガスタービン「Superpower」を開発しました。2025年12月時点で、同製品の受注残高は12.5億米ドルを超えていました[22]。
タービンは電力供給の短期的な制約解消に貢献するとみられる一方で、マスク氏はSpaceXとTesla(テスラ)が2029年までに約200GWの太陽光発電製造能力を実現すると見込んでいます。この規模は、2025年に米国全体で追加された発電容量の約9倍に相当します。一方で、中国が2025年に追加した太陽光発電容量のおよそ3分の2にとどまります(下図参照)。この発電能力の大部分は、SpaceXのAI衛星構想を支えるために活用される見通しです。同社は来年第4四半期からStarshipによる打ち上げを開始する計画です[23]。
注: 本分析では、SpaceXおよびTeslaが公表している目標値を電力供給能力に関するものとしてARKが解釈しています。
出所:ARK Investment Management LLC, 2026。本図表はARKの内部モデルに基づいており、複数の外部データソースを参照しています。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨するものではありません。予測には本質的な限界があり、その実現を保証するものではありません。
ARKは、エネルギー生産こそがあらゆる経済活動の基盤であり、その増減は経済活動に直接結び付くと考えています。AIの電力消費を巡る懸念が高まる一方で、ARKのリサーチによれば、主要国ではGDP1米ドル当たりに必要なエネルギー消費量が継続的に低下しており、エネルギー利用効率は着実に向上しています(下図参照)。数兆米ドル規模の市場機会が存在することを踏まえると、AIの普及が進むにつれて、こうした効率化への取り組みはさらに加速すると考えられます。
注: 「kWh」はキロワット時を指し、1キロワットの電力を1時間使用または発電した際のエネルギー量を表します。「GW」はギガワットを指し、10億ワットに相当する電力の単位です。出所:ARK Investment Management LLC, 2026。Ritchie et al.(2025年)、International Energy Agency(2025年)、Our World in Data(2025年12月22日時点)のデータに基づく[24]。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の証券の売買または保有を推奨するものではありません。
だ初期段階にあります。今後数年間にわたり、その規模拡大のペースを注視していきたいと思います。
[1] Wilson, M. 2026. “Tesla Reveals New Cybercab Details As It Officially Joins Robotaxi Fleet at 5pm Tonight.” Drive Tesla.
[2] Dow, J. 2026. “Tesla announces Robotaxi has driven 1 million unsupervised miles.” Electrek.
[3] Dow, J. 2026. “Tesla opens search for Cybercab fleet sales, but FSD owners are still left out. ”
[4] ARK Investment Management LLC. 2026. “Big Ideas 2026, Slides 99-100.” あわせて、Keeney, T. 2024. “Countdown To Cybercab, Tesla’s Multi-Trillion Dollar Robotaxi Opportunity.” も参照。
[5] AAA. 2025. “Your Driving Costs.” Capital IQ 2025. New York City Taxi & Limousine Commission. 2014. “2014 Taxicab Fact Book.”
[6] Wilson, M. 2026. “Tesla Reveals New Cybercab Details As It Officially Joins Robotaxi Fleet at 5pm Tonight.” Drive Tesla.
[7] Musk, E. “The Cybercab motor uses no rare earth metals…” X. Merritt, S. 2026. “The Cybercab drive unit features a simplified…” X.
[8] Musk, E. 2026. “Having electric brakes avoids the complexity…” X. Hamblen, M. 2026. “Tesla’s Cybercab reveal: driverless gold glitz and electric braking.” Fierce Sensors.
[9] Merritt, S. 2026. “My Cybercab rides are more than 50% cheaper…” X.
[10] ARK Investment Management LLC. 2026. “Big Ideas 2026, Slide 97.” あわせて、Keeney, T. 2026. “Robotaxis Are Coming For Your Commute.” も参照。
[11] Yipit. 2025. AAA. 2025. “Your Driving Costs.” GetTransfer. 2025. “Ride-Hailing in Wuhan, Hubei – Uber, Lyft, Taxis, Limos and More.”
[12] OpenAI. 2026. “GPT Astra.”
[13] ARC Prize. 2026. “ARC-AGI-3 Competition ARC Prize 2026."
[14] OpenAI. 2026. “GPT Astra.”
[15] Ball, J. 2026. “Clouded Judgement 9.4.26 - Recurrent Depth.” Clouded Judgement.
[16] IDowning, F. “I like seeing model performance on benchmarks…” X.
[17] Smith, B. 2026. “Everyone keeps saying…” X.
[18] Stevenmarkryan. 2026. “did SpaceX just checkmate…” X.
[19] Musk, E. 2026. “SpaceX and Tesla are each building 100GW/year….” X.
[20] Motley Fool Transcribing. 2026. “SpaceX (SPCX) Q2 2026 Earnings Call Transcript.”
[21] Kern, M. 2026. “The Gas Turbine Shortage Just Became AI’s Biggest Constraint.” Yahoo! Finance.
[22] Boom. 2026. “Boom Supersonic to Power AI Data Centers with Superpower Natural Gas Turbines; Adds $300 Million in New Funding.”
[23] Bloomberg. “Musk Sees SpaceX’s Orbital Data Center Launch Near End of 2027.”
[24] Ritchie, H. et al. 2023. “Energy.” Our World in Data. International Energy Agency. 2025. “World Energy Investment 2025.” International Energy Agency. 2025. “World Energy Outlook 2025.” Our World in Data. 2025. “The complete Our World in Data Energy dataset.”
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