PayPalのサービス、Venmoの年間アクティブユーザー数は、2019年9月30日までの6ヶ月間の増加数が800万人を超えており、10月末までに5000万人突破を達成しそうだとARKでは考えています(下チャート参照)1。その結果、Venmoユーザー数は、今年第3四半期末時点で米国国内の他のどの銀行の預金口座保有者数をも上回っていたと思われます。
Venmoの中核ユーザー層は個人間送金ユーザーですが、中核ユーザーの利用継続率という点においてVenmoは従来の金融機関よりも優位にあると見受けられます。特に注目に値するのは、最初登録したものの利用しなかったユーザーがその後に戻ってくるという顧客再獲得能力の高さであり(下チャート参照)、強力なネットワーク効果を発揮していることがうかがわれます。例えば、ARKでリサーチ・ディレクターを務めるブレット・ウィントンはVenmo派でしたが、昨年Squareのサービス、Cash Appに乗り換えました。しかし、彼のベビーシッターから、料金の電子決済を希望するならVenmoアカウントを維持するようにと迫られ、渋々そうすることにしました。
ユーザー基盤の拡大や利用継続率の高さからすると、ARKによる以前の予測の通り2、Venmoの月間アクティブユーザー数(MAU)は2023年までに6000万人を超える見通しです(下チャート参照)。したがって、ARKでは、今後5年間で成人人口の大半においてデジタルウォレット派が主流になる可能性が高いと考えています。
2017年と2018年には、おそらくCash Appが競合として食い込んできた結果解約率が上昇したものの、Venmoの新規ユーザーは、同プラットフォームを積極的に利用しているように見受けられます。ARKの分析によると、今年第3四半期にVenmoのプラットフォーム上で行なわれた取引の総額は前年同期の167億米ドルから62%増の270億米ドルにのぼりました。また、同四半期の月間平均取引件数が5件であったことなど、2300万人の月間アクティブユーザーの利用状況3にもとづくと、Venmoの個人間送金ネットワークでの平均取引額はおよそ74米ドルでした(下チャート参照)。
昨年第4四半期にVenmoの平均取引額は前四半期比10%超の急低下をみせましたが、それと同時に取引件数は26%増と大きく伸びました4。ここ数四半期における月間取引件数の着実な伸びは、ARKによるVenmoユーザーの分析結果と一致します。
このように力強い成長を遂げているものの、ARKの推計によると、月間アクティブユーザー数においてVenmoはCash Appに後れを取っています(下チャート参照)。この差は、必ずしもVenmoに問題があることを示しているわけではなく、Squareの抜け目のないマーケティング戦略が奏功している証であるようです。Squareはまず、急速な商品イノベーションによって金融サービスが十分に届いていない層にサービスを提供することに照準を合わせ、続いて、そうした層を引き続きターゲットとしつつ、影響力のある重要ユーザー層に合わせたサービス展開を行なってきました。とは言え、VenmoとCash Appの両サービスとも、フリクションレス(手間のかからない)かつ無料の金融サービスに対する消費者の需要を満たしており、成功を収めています。