科学者らは先日、豚体内で育てた臓器をヒトに移植する臓器移植の実現に向けて大きく前進したことを明らかにしました。このブレークスルー(躍進)を実現した会社eGenesisは、著名な科学者のジョージ・チャーチ氏によって設立されました。この論文は他の研究者によるピアレビュー(査読)こそまだ行なわれていませんが、その躍進をもたらしたのはCRISPR-Cas9ゲノム編集技術であることが示唆されています。
米国政府の2017年時点の統計によると、臓器移植を待ちながら亡くなっていく人の数は毎日約20人(毎年約7,300人)にのぼり、また、全米臓器移植待機者リストには約115,000人が登録しています。下のチャートが示すように、過去約30年間において臓器移植待機者数は、ドナー(臓器提供者)数および移植件数を大幅に上回るペースで増加しています。
eGenesisの研究チームは、豚生殖細胞の編集を行なっています。今回の研究に先立って、臓器拒絶反応に関連する25個のブタウイルスを無効化することに成功しています。その最新の研究では、CRISPR-Cas9ゲノム編集技術を用いて3個の豚遺伝子を除去し、9個のヒト遺伝子を豚に導入しました。論文では、ヒトの癌に関連する豚内在性レトロウイルスのノックダウン(発現抑制)を含め、実施された遺伝子編集が豚の子に継承されたとの結論が示されました。
eGenesisによる豚を用いた研究での成功は、ヒトへの腎臓や肝臓、膵臓、肺、心臓などの臓器移植へとつながり、ヒトの臓器不足を軽減してくれる可能性を秘めています。
本レポートは、2019 年12月23日にARKが公開した、英語による「Innovation Newsletter Issue 202」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。