By Simon Barnett

過去10年間でIllumina社 (ILMN) は、ヒトゲノム全配列解析コストを10万米ドルから1,000米ドル未満に引き下げました。そして、目標は2020年代初頭に100米ドルまで引き下げることです。

しかしながら、米国国立衛生研究所 (NIH)によると、高処理のシーケーシングセンターであっても、2018年のゲノム解析コストはおよそ1,500米ドルであると推定されました。これを受け、一部のアナリストは、Illumina社が実際にはコスト削減に苦戦しているのか、あるいは市場での支配的地位を利用し実態以上に高い価格を維持しているのかと疑問視しています。

ARKは、現在のIllumina社の戦略は、プラットフォームの稼働率を高め、予算に制約のある調査機関や学術機関に徐々にシステムのアップグレードの誘導目指していると考えています。多くの研究機関はIllumina社の最も効率性の高いゲノム解析プラットフォームであるNovaSeqを採用する予算がないため、Illumina社が提唱する1,000米ドルという価格とNIHによる推定コストである約1,500米ドルとにギャップが生じているものと考えます。昔からある研究所は、最新ではないワークフローを採用しており、その結果解析コストが高くなっています。一方、Invitae社 (NVTA) のような大規模な臨床解析機関は、Illumina社が開発した装置を導入・活用し、解析コストを1,000米ドル以下に抑えることに成功しています。ハードウェアのアップグレードにより、最先端の臨床機関は、それほど遠くない将来には、ゲノム解析コストを100米ドル未満に引き下げることができ、これにより、稼働しているIllumina社の装置の多くがゲノム解析のイノベーションの速度にさらに追いつけなくなります。そのためか、ここ数四半期、Illumina社は、HiSeq Xの販売を中止し、NovaSeqのフローセルの価格を引き下げることにより、多くの既存顧客に、より高度で生産性の高い分析装置への転換を促すことを優先事項としているようです。

世界的に解析装置の稼働率が低いことが、Illumina社がシステムのアップグレードと消耗品に焦点を当てている理由である可能性はあります。現在、導入されているIllumina社の装置の稼働率が80%とすると、年間約1,200万のゲノム配列解析が可能になる計算です。これはARKの2018年推定値の6倍以上であり、公表されているIllumina社の消耗品の売上げ増がこれを証明しています。システム全体の稼働率が21%からスタートし、稼働率の上昇とともに消耗品の売上げ増と、売上高に占める販管費比率の低下を享受することが予想されます。

Illumina社は、プラットフォームの稼働率の向上と消耗品の販売拡大に注力することで、売上げを加速させ、営業利益率を向上させることが可能になります。ただ、今後4-5年間で売上高を約40億米ドルから200億米ドルに増加させるためには、Illumina社は次世代DNAシークエンシングの臨床応用を促進させることが必須です。稼働率とシステムのアップグレードの両方を加速させることは短期的な売上げ増につながる戦略かもしれませんが、ARKの見解では、Illumina社の長期的な成功のためには、100米ドルのゲノム解析の商用化と臨床シークエンシングの指数関数的な拡大が重要だと考えます。

 


PDFをダウンロードする

 

Simon Barnett

About the author

Simon Barnett Read more articles by Simon Barnett