By ARK Invest

本レポートは、2021年6月21日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#275」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. インフレ・デフレは株式・債券市場にとって大きなリスク(あるいはチャンス)か?

この9ヵ月間、世界の株式市場は、V字型の回復を受けて、グロース株からバリュー株へと転換しました。コモディティ価格が高騰し、インフレや金利上昇への懸念が高まった一方で、公開株式市場における投資家の多くが短期的な時間軸を持っていることから、景気変動に敏感な企業の収益成長は、成長企業の収益成長と拮抗する状態が続きました。このような劇的な状況を反映して、3月までの3ヵ月間に米国の10年物国債の利回りは1.74%と2倍に上昇し、短期間においての記録的な上昇となりました[1]。

こうしたトレンドに基づいて将来を予測する人もいますが、ARKは一貫してインフレは一時的なものになると主張してきました。このインフレは、昨年の価格崩壊よるベース効果と、二重三重の発注、大量の在庫超過、ひいては商品価格の暴落を引き起こすサプライチェーンのボトルネックの両方が発生したことによるものだからです。原油を除いて、コモディティ市場の亀裂は明らかになりつつあるとみています。この6週間で、木材価格は1,000ボードフィートあたり1,686米ドルから897.90米ドルへと46%以上下落し、銅価格は1ポンドあたり4.77米ドルから4.16米ドルへと約12.78%下落しました[2]。エネルギー関連の設備投資が大幅に削減されているにもかかわらず、特にライドシェアのドライバーたちが電気自動車の所有にかかる総コストの減少を利用するならば、原油価格も遠からずそうなるでしょう。

また、周期的なデフレを悪化させることは、2つの長期的なデフレの原因になると考えています。1つは経済活動に良い影響を与えますが、もう1つは悪い影響を与えるものです。当社の見解については、最新のマーケット解説(5月21日発行)、またはYouTubeの最新情報(6月4日発行)もご覧ください。

[1] 出所:Bloomberg
[2] 出所:Bloomberg 情報は2021年6月18日時点のもの

 

2. 衛星ブロードバンド市場の規模はどのくらいか?

新たな宇宙開発競争が始まっていることを示す証拠として、衛星ブロードバンド市場が挙げられます。SpaceX社のスターリンク衛星は、現在地球を周回している約3,000基の稼働中の衛星の半分を占めています。衛星ブロードバンドの市場機会の規模を見積るのは、そのシステム自体の複雑さゆえに簡単ではありません。

ARKでは、この市場機会をモデル化するために、次のような仮定を置いています。

1. 帯域幅は、衛星システムがサポートできるユーザー数を制限する重要な要素となる。
2. 全員が同時にオンラインになるわけではないので、システムは20倍オーバーサブスクライブされる。
3. 各ユーザーはブロードバンド・インターネットに一人当たりGDPの2%を支払うことを厭わない。

ARKの調査によると、衛星ブロードバンドは2つの市場セグメントに進化し、下図に示すように12,000基の衛星群で、年間約170億米ドルの世界的な収益機会を生み出します。SpaceX社は最終的に42,000基の衛星を打ち上げることを望んでおり、衛星の数が増えれば帯域幅が広がるため、獲得可能な最大市場規模は400億米ドル以上に拡大する可能性があります[1]。月額約75米ドルから100米ドルを支払う顧客セグメントがある一方で、月額10米ドルから20米ドルの顧客セグメントもあるとみています。早期導入者は市場のハイエンドに位置するため、SpaceX社は衛星ブロードバンドの学習曲線に沿ってコストを削減させ、ローエンドの市場に参入する機会が与えられます。

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このモデルのオープンソース版では、主要な仮定を変更して、衛星ブロードバンドがアドレス可能な市場全体へ及ぼす影響を評価することができます。

[1] このモデルには、モビリティエンド市場も商用顧客も含まれていません。

 

3. 遂に、ヒトゲノムの100%が解読される

先日、Pacific Biosciences社とOxford Nanopore社による最先端のロングリードシーケンシングのおかげで、ゲノム研究者のオープンコミュニティであるTelomere-to-Telomere (T2T) Consortiumは、ヒトゲノムの最初の完全な配列を公開しました。2003年にヒトゲノムプロジェクトが発表したドラフト配列とは異なり、今回のアセンブリにはギャップがなく、ベースレベルの精度も数桁向上しています。先日、この新しいゲノムアセンブリが遺伝子検査をどのように改善するかについて質問したところ、T2Tコンソーシアムのメンバーから素晴らしい回答を得たので次回にまとめて紹介します。

 

4. Wu Dao 2.0はGPT-3の10倍の大きさ

OpenAIが2020年に発表したGPT-3は、175Bパラメータという巨大なサイズで話題になりました。それから1年後、中国の北京人工知能アカデミーは、GPT-3の10倍の大きさとなる1.75Tのパラメータを持つ新しいモデル「Wu Dao 2.0」を発表しました。GoogleのMUMと同様、Wu Daoはマルチモーダルであり、画像の生成や認識など、言語処理以外のタスクもこなすことができます。他の最新モデルとの性能を比較検証する必要はありますが、GPT-2とGPT-3では、少なくとも自然言語モデルにおいては、モデルサイズに応じて性能が向上することが示されています。また、このモデルが単なる研究プロジェクトの成果なのか、それとも近い将来、商業的な応用を可能にするものなのかは不明です。しかし、中国はAIが軍拡競争であると考えており、それに合わせて投資を行なっていることは紛れもない事実です。

 

 

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