By ARK Invest

本レポートは、2021年7月19日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#278」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. AppleとGoldman SachsがBuy Now Pay Later(BNPL:後払い決済)サービスを計画

最近の報道によると、Apple社とGoldman Sachs社はBuy Now Pay Later(BNPL:後払い決済)サービスを計画しているようです。このサービスでは、Apple Payの支払いを分割して、Goldman Sachsが資金を提供するローンを利用できるようになります。BNPLを提供するAffirmやKlarnaのように、Appleは短期の無利子分割払いプランと、高額商品のための長期の利息付きプランを提供する予定です。重要な点として、このサービスは、Apple PayウォレットにリンクされたApple Credit Cardだけでなく、あらゆるクレジットカードを持つユーザーが利用できるということが挙げられます。

米国では、BNPLはラテンアメリカと同じように進化し得る可能性があります。分割払いは、特定のBNPLプロバイダーではなく、アクワイアラーやApple Payのようなデジタルウォレットによってコントロールされる消費者の決済手段となるかもしれません。ラテンアメリカでは、アクワイアラーやEBANXのような決済ファシリテーターが加盟店に分割払いを提供しており、それが消費者のカード決済フローの大半を占めています。このモデルを利用して、VisaとアクワイアラーのGlobal Paymentsは、カナダですでに分割払いを提供していますが、このモデルを北米や欧州で展開するには、かなりの労力が必要です。今後、Square社のCash AppやPayPal社のVenmoなどのデジタルウォレットを含む他のBNPLプロバイダーがこの分野に参入してくると、初期のプロバイダーはユーザーのロイヤリティの恩恵を受けられず、価値提案が低下する可能性があります。

 

2. Netflixがビデオゲームに進出

今週、世界最大のビデオストリーミングサービスであるNetflix社は、EAとFacebookのベテランであるマイク・ヴェルドゥ氏を採用し、新しいビデオゲームの取り組みを指揮することになりました。ゲーム開発担当の副社長として、マイクは1年以内にNetflixのプラットフォームにビデオゲームを追加する予定です。その成功の可能性については推測するしかありませんが、Netflixがそのプラットフォームにビデオゲームを追加する理由は理解できます。

他のあらゆるビデオエンターテインメント・プラットフォームと同様に、Netflixはユーザーの利用時間を伸ばしたり新規ユーザーを獲得するために競争しています。近年、より多くの人がビデオゲームに目を向け、Netflixの時間を奪っています。例えば、人気のゲームプラットフォームであるRobloxでは、1日あたりのプレイ時間が約2.5時間となっており、これはNetflixのプレイ時間とほぼ同じで、ほとんどのソーシャルメディアサイトのプレイ時間よりもはるかに長くなっています。実際、Netflixは何年も前からゲーム業界を主要な競争相手としてきました。

ビデオゲームへの進出は、防御的であると同時に攻撃的でもあるようです。Netflixのユーザー数が2億700万人程であるのに比べて、世界のビデオゲームプレイヤーの数はおよそ30億人で、世界人口の約40%を占めています。2020年には、世界のビデオゲームの収益は約1,750億米ドルに達し、音楽、テレビ、映画産業の合計を上回りました。ビデオゲーム市場のほんの一部を獲得するだけでも、巨大ストリーミング企業の収益を大きく伸ばすことができます。問題は、Netflix社が、この競争の激しい市場で計画を実行できるかどうかです。

 

3. Ethereum(イーサリアム)スマートコントラクトは取引履歴の書き換えに使えるか?

GitHubでコードを共有しているEthereumスマートコントラクト開発者の最近のツイートが、Ethereumブロックチェーンでの再編成の試みについて論争を巻き起こしました。技術的にはすべてのブロックチェーンで実現可能ですが、再編成はマイナーが代替の取引履歴をサポートするときに起こります。より多くのプルーフ・オブ・ワークを背景に持つチェーンが「最長のチェーン」となり、元のチェーンの取引を無効にします。リスクとしては、マイナーがこの戦術を利用して、金銭的な利益を得るために過去の取引を再編成したり検閲したりする可能性があることです。

ビットコインのコミュニティは、再編成に対して声高に反対してきました。例えば2019年、Binanceはハッキングを元に戻し、その取引所から盗まれた7000BTCを回収するために、ビットコインの再編成を検討しました。ビットコインコミュニティの激しい反発に応えて、このアイデアを放棄しました。

イーサリアムの開発者であるBunny Girlは、イーサリアムのスマートコントラクト言語を使用して、再編成イベントの調整を容易にしようとしています。3つの簡単なステップで、誰もがブロックの再編成を要求でき、ブロックを再採掘したマイナーに報酬を支払うことができます。

Bunny Girlは、マイナー抽出価値(MEV)の負の外部性に関するイーサリアムの議論をエスカレートさせており、一部の人は、それを負の合計ゲームだと宣言しています。これに対し、MEVの専門家チームであるFlashbotsは、このような攻撃に対するプロトコルレベル、社会的、技術的な障害について説明し、いくつかの解決策を提示しました。

 

4. Sheinは世界で最も速いファストファッション企業

中国を拠点とするファッションEコマース企業Sheinは、機械学習を活用してデザインから生産までの時間を短縮し、大きな市場シェアを獲得しています。様々な試算によると、Sheinは米国のファストファッション売上の28%を占めており、昨年の14%から上昇し、H&M、ZARA、Forever 21といったファッション界の大手を追い抜いています。2020年には100億米ドルと、その世界的な収益は過去8年間、毎年倍増しています。モバイルファーストの理念に基づき、Sheinは、アプリストアのダウンロード数、ユーザーエンゲージメント、ソーシャルメディアでの存在感において、常にトップを維持しています。

Sheinの超高速ファッションモデルは、インターネットデータを取得し、人工知能を使ってファッショントレンドを予測します。垂直統合されたサプライチェーンにより、生産時間を最短3日に短縮し、ユーザーのアプリ行動パターンに基づいて在庫を調整し、毎日何千もの低価格アイテムをプラットフォームに追加しています。クリエイティブなマーケティング戦略により、Sheinはインフルエンサーとユーザーが自然に、またはTikTokなどのソーシャルメディアプラットフォーム上でコンテンツを共有するよう促しています。しかし、Shein社は、高度に自動化された予測エンジンや、その労働慣行の可視化ができていないことから、倫理的な問題を抱えています。

ARKは、機械学習や積層造形などの他の形式の自動化を活用している企業は、デザインから生産までのプロセスを効率化していくと考えています。Shein社のAIを活用したサプライチェーンとマーケティング戦略は、この進化のエキサイティングな好例であると言えます。

 

 

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