By ARK Invest

本レポートは、2021年8月23日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#283」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Tesla社、AI Dayで人工知能の実力をアピール

2018年、ARKは、Tesla社の垂直統合戦略について、新たな顧客体験の創造、より高い参入障壁の構築、そしてより迅速な実行が実現可能になるだろう書きました。当時、Tesla社は半導体を除くあらゆるハードウェア関連部品をコントロールしており、トレーニングと自動運転のためのチップはNvidiaが提供していました。

Tesla社は、人工知能分野の優秀な人材の採用を目的としたイベント「AI Day」で、シリコン、トレーニングクラスター、コンパイラからドライビングシミュレーターまで、ハードウェアとソフトウェアスタックのすべてのコンポーネントの垂直統合を完了させるという野心的な計画を発表しました。2022年に完全に実装されれば、Tesla社は以下に示すように、世界で最も深く統合された「自動車会社」となります。

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※上記は過去のものおよび予想であり、将来の運用成果等を約束するものではありません。
出所: ARK Investment Management LLC

Tesla社は、遂に「Dojo」を公開しました。これは、1エクサフロップのパフォーマンスが可能なカスタムメイドのAIトレーニング用スーパーコンピュータで、現在、世界で最も強力なスーパーコンピュータの約2倍のパフォーマンスに相当します。Dojoは、AIトレーニング専用にゼロから設計された特定用途向けチップ( ASIC :Application Specific Chip)であるD1を中心に、低遅延と高帯域幅を最適化します。Teslaは、Cerebrasと同様のシステムオンウエハーパッケージング技術を用いて、1つのトレーニングタイルに25個のD1を組み合わせ、9ペタフロップスという驚異的な演算能力を実現します。D1のカスタム命令セットアーキテクチャを利用するように設計された特注のコンパイラは、クラス最高のハードウェア使用率でTeslaのニューラルネットをトレーニングすることができるはずです。

シリコンのトレーニングからラベリング、ニューラルネットワークの設計まで、AIスタックを所有することで、Tesla社は競合他社よりもはるかに速いスピードで開発を進めることができると考えています。第三者がチップを出荷したり、バグを修正したりすることに左右されることなく、Tesla社が完全にコントロールできるようになります。

このアップデート記事は当社アナリストのJames Wangと共同で執筆しました。

 

2.ネオマーが早期のがん検出へ新たな経路となる可能性

分子診断会社や研究者たちは、バイオマーカーと呼ばれる新たな病気のシグナルを探しています。ライフサイエンスツールの性能向上と人工知能(AI)の組み合わせにより、新規バイオマーカーの発見率は加速していますが、人間の創意工夫も引き続き重要な役割を担っています。

最近、ある研究者グループが、がんの存在を検出するためのユニークで巧妙な新しいバイオマーカーであるネオマーを紹介するプレプリントを発表しました。この論文はまだ査読を受けていませんが、私たちは、このアプローチの潜在的なメリットは非常に大きいと考えています。

ネオマーとは、ヒトゲノムのどこにも自然には現れない短い(16文字の)DNA配列です。著者らは、がんに関連した突然変異がネオマーを作り出し、それによって早期発見が可能になるのではないかと仮説を立てました。研究チームは、約2,600のがんゲノムを調査した後、ネオマーを用いてAIモデルを訓練しました。その結果、驚くべきことに、さまざまな種類のがんに固有のネオマーの「指紋」があり、アルゴリズムが腫瘍の位置を特定できることを発見したのです。

一般的に、次世代シーケンサー(NGS)を用いたがん検診では、非常に詳細なシーケンスが必要です。シーケンサーは、突然変異を検出し、それをゲノムの正しい位置にマッピングするために、冗長なデータを生成しなければなりません。この新しい方法では、ネオマーの位置ではなく、ネオマーの存在のみに着目するため、検査コストは現状よりも大幅に下がるはずです。

このように楽観的な見方をしていますが、この研究者たちが論文の根拠としているのは、少数の既往の患者集団であり、前述のように査読が行われていないことに留意してください。当社はこのトピックに関する調査を計画しており、今後数週間のうちに調査結果を発表する予定です。

 

3. Facebookの将来のビジョンを垣間見ることができるHorizon Workrooms

今週、FacebookはOculus Questヘッドセット用の新アプリ、チームをつなぐ仮想ワークスペース「Horizon Workrooms」をリリースしました。現在「オープンベータ版」として公開されているHorizon Workroomsは、個人とそのアバターが、没入感のあるコラボレーション体験をすることができる仮想会議室です。マーク・ザッカーバーグ氏のデモをご覧ください。

空間オーディオ、ハンドトラッキング、パススルーカメラフィードなど、様々な機能を備えたこのアプリは、デジタルイマージョンを変革し始めていると考えます。Horizon Workshopsは、まだゲームを変えるような必須アプリケーションではありませんが、未来を垣間見ることができ、少なくともFacebookの将来への期待を感じることができます。

デスクトップとモバイルコンピューティングに関連した垂直統合を逃した後、Facebookは仮想現実と拡張現実(それぞれVRとAR)に全力で取り組んでいます。Facebookは、「Horizon Workrooms」のようなアプリに加え、Oculusを所有・運営しており、VRやAR関連の買収にも積極的に取り組んでいます。実際、従業員の約20%がVRやARの開発に携わっています。

VRとARの垂直統合プレイヤーとしての地位を確立したFacebookは、次世代のインターネット体験を掌握したいと考えているようです。あるいは、マーク・ザッカーバーグ氏は「今後数年間で、人々は私たちを主にソーシャルメディア企業として見るのではなく、メタバースの会社として見るように変わっていくと思います。」とも発言しています。

 

 

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