By ARK Invest
本レポートは、2021年9月13日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#286」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. エルサルバドルでビットコインが法定通貨に
エルサルバドルは、ビットコインを法定通貨として採用した最初の国となりました。政府は、その計画を発表してから約3ヵ月後に、ビットコインウォレット「Chivo」を展開しました。そして、国民にChivoのダウンロードを奨励するために、アプリをダウンロードしてウォレットを登録した成人国民に30米ドル相当のビットコインをエアドロップしています。
スターバックスやマクドナルドでのビットコイン決済など、一部のTwitterユーザーは意図した通りにアプリを紹介しましたが、他の多くのユーザーは技術的な不具合を報告しています。エルサルバドルの大統領はTwitterで、「Chivo」に発生したバグについて、ユーザー体験とサーバーの容量を改善するために再起動が必要であることを確認しました。すべてではありませんが、不具合の多くは修正されました。
エルサルバドルの導入は、発展途上国でのビットコインの普及にとって重要な節目となります。CNBCが指摘したように、エルサルバドルでのChivoの立ち上げにより、Western Unionが年間4億米ドルの損失を被る可能性があるため、送金業界への影響は大きいと考えられます。
他の国々も、ビットコインが伝統的な金融サービス業界を飛び越えるのに役立つことを期待して、エルサルバドルの先導に続いています。例えば、今週、ウクライナでは暗号通貨を合法化する法案が可決され、パナマではビットコインを法定通貨にする法案が発表されました。ARKがこれまでに指摘してきたように、ビットコインは新興市場における通貨の民主化を促進しており、そのインフラがクリティカルマスに達するにつれて規模が拡大する可能性があります。
2. Coinbaseの貸付事業にSECが法的措置を示唆
今週、Coinbase社は、同社が現在提供計画中の暗号資産貸付サービスに対し、米SEC(証券取引委員会)がWells Notice(ウェルズ通知)を発行したと発表しました。「Coinbase Lend」は、ユーザーが暗号資産を貸すことを可能にするもので、まずは米ドルで裏付けられたステーブルコインであるUSDCの年率4%の利回りを実現します。Gemini社やCircle社のような暗号分野の他の企業も、ユーザーが融資で利息を得ることを可能にしており、CompoundやAaveのような分散型金融プラットフォームは、スマートコントラクトを使用して高利回りの融資を可能にしています。
ウェルズ通知によると、SECはLendを証券として分類しているため、Coinbaseを訴えるつもりのようです。Twitterや最近のブログ記事で、Coinbaseは、数ヵ月にわたってSECと関わってきたが、警告も決定の説明も受けていないと主張しています。Coinbase社は、Lendを証券として規制すべきではないと考えていますが、より明確になるのを待って、Lendの発売を延期しています。
このような状況を踏まえ、ARKは、規制の不確実性により、暗号化やその他のフィンテックプロジェクトが米国から撤退することを余儀なくされてしまうことを懸念しています。金融サービス業界を変革するテクノロジーを念頭に置いて、私たちは、規制当局が世界の仕組みを変える技術に注目している私たちと協力し続けてくれることを願っています。
3. Mammoth Biosciences社が最新のユニコーン企業に
2017年、ジェニファー・ダウドナ博士、ジャニス・チェン博士、トレバー・マーティン博士、ルーカス・ハリントン博士は、CRISPRベースの診断ツールの開発に注力するバイオテクノロジー企業、Mammoth Biosciences社を共同設立しました。シリーズDラウンドの直後に、Mammoth 社は評価額が10億米ドルを超え、ユニコーン企業となりました。
2020年8月、Mammoth 社はカリフォルニア大学バークレー校からCasɸというCasタンパク質の新しいファミリーのライセンスを取得しました。このCasタンパク質ファミリーは、従来の酵素よりも小さく、いくつかの利点をもたらす可能性があります。
最近では、新しい酵素の発見が相次いでおり、楽観的な見方が広がっています。フェン・ザン博士の元学生であるジョナサン・グーテンバーグ博士とオマール・アブダイエ博士は、Cas 7-11を発見しました。フェン・ザン博士の研究室では、遺伝子編集酵素としてプログラム可能である可能性が高い、トランスポゾンでコードされたRNA誘導型ヌクレアーゼの一種であるIscB、IsrB、TnpBという新しいシステムを発見しました。
ARKは、遺伝子編集企業がCRISPR酵素に関連するオリジナルの知的財産(IP)を超えて技術革新を行ない、Cas-9酵素のIPに影響を与える可能性があると考えています。すでに、企業はCas12aを使ってCas9のIPを回避しています。とはいえ、遺伝子編集が病気を治すための治療法や診断法に不可欠になるにつれ、ツールや酵素のクロスライセンスが行なわれる可能性は高いと考えています。
4. 合成データは人工知能における実世界のデータの優位性を損なうものか?
人工知能(AI)のモデルは、トレーニングデータがあって初めて成り立ちます。データ値の漸近値が高い場合、一般的にトレーニングデータが多いほど複雑なモデルの性能が向上します。高品質のトレーニングデータを大量に保有する企業は、データ面での優位性を持ち、それが競争力の源泉となっています。
最近では、研究者がさまざまな技術を使用して合成データセットを生成するケースが増えています。合成データは、実世界のデータセットに欠けている部分を補い、データ取得コストを削減します。ある試算では、98%を超えるコスト削減が可能と示唆されています。
では、合成データによって実世界のデータが不要になり、競争力が失われることはないのでしょうか。私たちは、自動運転のような非常に複雑なタスクでは、実世界のデータが、合成データでは置き換えが効かない重要な検証を提供してくれるものと考えています。大量の実世界データは、一時停止の標識を積んで走るトラックや、高架橋から車にアイスクリームを投げる人間のような、奇妙で未知のエッジケースを表面化することができますし、シミュレーションでは、雪の山道でトレーラーがジャックナイフを起こすような、まれなエッジケースを想定してモデルをトレーニングすることができます。最適な学習ソリューションは、大量の実世界データとシミュレーションによる合成データを組み合わせることでしょう。
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