By ARK Invest

本レポートは、2021年11月22日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#296」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. NVIDIAGTCでフルスタックのAIビジョンを公開

 

先日行われたGTCの基調講演では、NVIDIA社の人工知能(AI)における本格的な戦略が非常に印象的でした。同社は、GPUや高性能ネットワーク機器を中心としたアクセラレーション・コンピューティング・ハードウェアで知られていますが、そのハードウェアを活用し、最先端のAIを製品やサービスに統合するソフトウェア・スタックの進化を強調しました。

NVIDIA社は、基調講演の大半を同社のOmniverse製品に集中させました。4,000万人の3Dデザイナーの聴衆を対象とした「Omniverse」は、仮想世界を構築するためのコラボレーションツールです。Google社のドキュメント編集用コラボレーション・スイート「Workspace」と同様に、Omniverseを使えば、デザイナーは仮想シーンのデザインをリアルタイムで共同作業できるだけでなく、Adobe、Autodesk、Unity、Unreal Engineなどのプラットフォーム間でバーチャルアセットをシームレスに共有することができます。

これらの仮想世界は、ゲームのようなものでも、フォトリアリスティックなものでも、物理的空間の複製である「デジタルツイン」にすることができます。また、Omniverseは、スマートファクトリーから5G展開に至るまで、さまざまな環境の試作や最適化を行ないながらシミュレーションを行なうことができます。BMWやEricssonなどの企業にもいち早く採用されています。

おそらく、今回のイベントで最も挑発的だった発表は、「Omniverse Avatars」でしょう。Avatars社のツールキットには、カスタマーサービス、通信、ゲーム、ロボティクスなどのユースケースで自律的な会話型AIを実現するデジタルエージェントを作成するための、事前トレーニング済みのAIモデルが含まれています。NVIDIA社は先日の決算説明会で、これらのデジタルロボットのコストは、アバター1体あたり年間1,000米ドルになると発表しました。これにより、数億体のデジタルアバターが人間と共存する世界が到来する可能性があります。注目すべき点は、これらのアバターがNVIDIA社のハードウェアスタックの売上も刺激することです。

また、NVIDIA社は、サイエンティフィック・コンピューティングにおける画期的な研究成果を発表しました。サイエンティフィック・コンピューティングとは、気象パターンの予測やタンパク質構造の分析に用いられる、計算量の多いモデリングやシミュレーションのことです。同社は、複雑な物理学の方程式の結果を予測するためにニューラルネットワークを訓練することで、既存の方法と比較してプロセスを1000倍高速化しました。 そして、これらの進歩が、ほぼすべてのタイプのコンピューティング・ワークロードを加速するニューラルネットワークの飛躍的な可能性を示しているとNVIDIA社は考えています。                        

 

2. ARK社のリサーチは、Teslaが一般的な電気自動車よりも3年先行していることを示唆

 

ARKでは、航続距離、ドライブトレインの効率、およびトータルコストを組み込んだEVパフォーマンス・インデックス(ARK EVPI)を作成しています。現在、EVの中でのEVPIの中央値は、以下に示すように、2018年頃のTeslaのModel 3のそれに達しました。とはいえ、一般的にEVPIは2013年頃のModel S以降改善されています。

ARKのEVPIは、ライトの法則に基づき、生産台数が2倍になるごとに、EVの性能が向上していくことを示唆しています。この改善は、充電の高速化、航続距離の延長、価格の低下など、さまざまな形で実現される可能性があります。

 

EV Landscape

 

 3. PASTEtwinPEは、ゲノム編集の新たなフロンティアを開拓した模様

 

ヒト細胞のプログラム可能なゲノム編集における最後のフロンティアの一つが遺伝子挿入です。これは、機能を失った変異や遺伝子自体の喪失を伴う疾患を治療することができる画期的な技術です。

これまでは、生きているヒト細胞の特定の部位に遺伝子を挿入すると、望ましくない結果が生じていました。CRISPR Cas9は、二本鎖切断(DSB)を引き起こし、非相同末端結合(NHEJ)や相同性指示修復(HDR)などの生体の修復メカニズムに依存しています。ただし、これらのアプローチは、転座のような臨床的に重要な結果をもたらす可能性を伴い、望ましくない結果を引き起こすことがあります。以下にその例を示します。

 

Translocations

 

近年、PASTEとtwinPEという2つの新しいシステムが開発されました。PASTEとtwinPEは、DNAの一本鎖のみを傷つけ、大きな挿入を容易にするシステムです。ジョナサン・グーテンバーグ博士とオマー・アブダイエ博士、デビッド・リュー博士がそれぞれ発表したPASTE(Programmable Addition via Site-specific Targeting Elements:サイト固有のターゲティング要素によるプログラム可能な追加)とtwinPE(Twin Prime Editing:ツインプライム編集)は、いずれも大規模なDNAの挿入が可能で、twinPEの場合は最大で90塩基対に達します。どちらの方法も、プライム編集と少なくとも1つのプライム編集ガイド(pegRNA)を用いて、DNAの部位特異的組み換えを触媒するリコンビナーゼと呼ばれる酵素(具体的にはBXB1)の着地点を設置します。この2つのシステムの最大の違いは、twinPEが2本のペグRNAを用い、それぞれがDNAの1本鎖を刻み、体内のメカニズムで2本目の鎖を修復する必要がないことです。また、PASTEではBXB1タンパク質がプライムエディターに結合しているのに対し、twinPEではタンパク質が分離しているという違いもあります。どちらのシステムも、治療が困難な疾患に対する遺伝子治療法として大きな期待が寄せられています。

私たちは、遺伝子編集の技術革新が加速していることに勇気づけられています。それにより、多くの疾患のバリエーションに対して、更に機能的な治療法が生み出されるかもしれません。

 

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