本レポートは、2021年12月6日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#297」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Tesla社、バーチャルキーの受け渡しを容易にする新しいモバイルアプリを発表
Tesla社のソフトウェアアップデートは、同社がライドヘイリング（配車）ネットワークを計画しているという憶測を呼んでいます。このアップデートにより、Teslaの所有者は、これまでWebサイトからしかできなかった複数のドライバーによる車の利用が、モバイルアプリから可能になるようです。
ARKは、Tesla社が自律走行（ロボット）タクシーネットワークを展開する前に、競争力があり、収益性の高い人間主導の配車サービスを開始する方法について詳しく説明してきました。このような戦略は、自律型ニューラルネットワークに膨大な量のトレーニングデータを追加し、自律走行型配車（ロボットタクシー）サービスに必要なルーティングと決済インフラの基礎を築くことができます。
今回のアップデートがカーシェアリングやライドヘイリング（配車）サービスへの意欲を示すものかどうかは不明ですが、家族やレンタカー（Turo）、プロのタクシードライバーなどがバーチャルキーを共有できるようになるかもしれません。バーチャルキーの受け渡しを容易にすることで、Tesla車の利用率を高めることができ、個人所有の自動車を「座礁した資産」から「収益を生み出す機械」へと変えるための一歩となるでしょう。
2. Illumina社の特許が無効になったことで、次世代シーケンシングの競争が激化する可能性
先週、カリフォルニア州の判事がIllumina社（ILMN）の444号特許を無効とし、北京基因組研究所（BGI）との競争激化を招いています。Illumina社の特許保護に基づき、BGI社はシーケンシングに使用される蛍光標識DNA塩基の米国市場への参入ができませんでした。今回の特許無効化により、BGI社は早ければ2022年8月に自社のCoolMPSケミストリーを搭載したシーケンシング装置を米国で販売する許可を得られる可能性があり、競争が激化し、次世代シーケンシング（NGS）のコスト低下が加速することが予想されています。 Illumina社はこの判決を不服として控訴する模様です。
当社の調査によると、BGI社のNGS技術は、コスト、スループット、精度の点でIllumina社の技術と比較して遜色ありません。BGI社が大きなシェアを獲得しなくても、顧客は潜在的な競争を利用してシーケンス価格の引き下げを要求し、Illumina社の試薬やその他の消耗品に関連する80％以上の粗利益を損なうでしょう。
競合するのはBGIだけではありません。Singular Genomics社（OMIC）のような新興のNGS競合他社は、異なるセットのヌクレオチド塩基を導入することで444号特許を回避しています。特許訴訟の脅威がなければ、新しいNGS企業の数が増え、さらなる技術革新を促し、コストが削減され、研究者、シーケンスプロバイダー、および患者に利益をもたらすことができます。
3. BadgerDAOのハッキングは、分散型金融のリスクを浮き彫りにする
BadgerDAOはイーサリアムネットワーク上のプロトコルで、イーサリアムのようなスマートコントラクトブロックチェーン上のBTCをトークン化したWrapped Bitcoinの利回りを最大化する戦略を展開しています。先週、BadgerDAOは複数の監査と成功した実績にもかかわらず、ユーザーに1億2千万米ドルの損害を与えるハッキングを受けました。これは、分散型金融（DeFi）の損失としては過去4番目の規模になります。
スマートコントラクトコードのバグを狙った多くのDeFiハッキングとは異なり、BadgerDAOのハッキングでは、ほとんどのユーザーが基盤となるプロトコルを利用するために中央でホストされているWebサイトが標的となりました。ハッカーはユーザーインターフェースを操作することで、ユーザーを騙して悪意のある取引を承認させ、BadgerDAOの口座ではなく、自分の口座に資金を振り込ませたのです。この種の攻撃は、分散型のベースレイヤー上に構築されたプロトコルであっても、中央が障害点となるリスクを示しています。スマートコントラクトのリスクに備えた保険に加入している経験豊富なユーザーであっても、フロントエンド攻撃は保険でカバーされない「ユーザーエラー」とみなされるため、損失を被る可能性があります。
盗まれたBTCの半分近くはCelsiusに属していました。Celsiusは中央集中型の暗号貸付プラットフォームで、BTCで6%、ステーブルコインで10%という高い利回りで約300億米ドルの運用資産を集めています。今回のハッキングは、暗号貸出を抑制しようとする規制当局のさらなる監視の対象となりそうです。
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