By ARK Invest
本レポートは、2022年3月7日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#307」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. プライム編集が臨床遺伝子検査の普及を加速させる可能性
全人類のDNAは99.9%同一ですが、残りの0.1%に遺伝的変異があり、それが各人固有の特性や病気に対する素因(体質)を決めています。小さなスペルミスから大きなDNAコードの欠落に至るまで、様々な遺伝子変異が私たちのゲノム全体に散らばっているのです。遺伝性遺伝子検査は、これらの変異を測定し、それらが安全(良性)か危険(病原性)であるかどうかを判断することを目的としています。
ヒトゲノムは大きく複雑であるため、臨床検査室では、その変異が病的かどうか区別のつかない「意義不明の変異(Variants of uncertain significance: VUSs)」と称される変異が見つかることがよくあり、医師や患者に未解決の疑問を多く残します。そのため、臨床検査室はVUSを最小限に抑えることに注力しています。
遺伝子変異を分類するために、検査室では「この患者の遺伝子変異は、内部または外部のデータベースに登録されているものか?科学文献はその変異体について何を示唆しているか?」など一連の問いかけを行ないます。
近年では、生体分子コンピューターモデルを用いて、遺伝子変異の下流への影響をシミュレートする研究所も出てきており、最も進んだところでは、患者の遺伝子変異を再現するCRISPR/Cas9などの試験管内遺伝子編集技術を使用しています。このような機能試験により、重要な答えが得られる一方で、オフターゲット効果や編集効率の低下などのリスクも伴います。機能検査は、大規模な遺伝子検査ラボにおける重要な研究分野です。
最近、カナダの研究グループは、遺伝子編集の最新の形態の一つである「プライム編集」を応用し、遺伝子変異の解釈のための機能検査を改善しました。この研究では、プライム編集によって編集効率が向上し、CRISPR/Cas9では不可能な場所のゲノムを編集し、より安価で迅速、かつ拡張性のある機能検査が可能になりました。
プライム編集のような新しいゲノム編集ツールは、VUSと格闘する検査室にとって役立つ、より優れた機能検査を可能にし、臨床遺伝子検査の普及を加速させることになると考えられます。
2. コンピュータビジョンモデルにおけるサイズの重要性
大規模な言語モデルは、様々なタスクで小規模な先行モデルを上回っており、特にビジョンモデルではサイズが重要であることが証明されています。昨年、Facebook AI(現Meta AI)は、ランダムでラベル付けされていない、非キュレーション画像のセットから学習する10億パラメータのコンピュータビジョンモデルであるSEERを発表しました。「自己学習」は、人間がラベル付けしたデータセットで学習させた従来のコンピュータビジョンモデルよりも拡張性が高いため、SEERはエキサイティングな進歩でした。最近、Meta AIはSEERモデルを100億パラメータに拡張し、その性能を劇的に向上させました。
SEERの100億パラメータモデルは、高度にキュレートされたデータセットで学習させた他のモデルよりも偏りが少なく、より大きなモデルが偏りを減らすという興味深い可能性を示唆しています。これは、人間によるラベリングとキュレーションがバイアスを減らすための唯一の、あるいは最良の技術であるという従来の常識に反する結論です。
3. 分散化の重要性が問われる中、世界的な緊張が暗号資産の価値提案を証明
ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた世界的な大混乱は、経済的自立の源としての暗号資産の力を証明しています。例えば、ツイートで暗号資産の寄付を呼びかけてから1週間後、ウクライナ政府はビットコイン、イーサ、その他の暗号資産で5400万米ドル以上を調達しました。同時に、ロシア市民はルーブルの急激な切り下げに対するヘッジとしてビットコインに目を向け、2月の最終週にはBTC-RUBの取引量を243%も押し上げました。ルーブルの急速な切り下げにより、ビットコインの時価総額は今日、ロシアのマネーサプライよりも価値があります。
一部の評論家はロシアが前例のない制裁を回避するために暗号通貨を利用していることを示唆していますが、支持者たちは「暗号資産の流動性はまだ世界の通貨市場のほんの一部だ」と主張し、反論しています。ロシアの平均的な所得者は購買力と資産基盤を維持しようとしているかもしれませんが、オリガルヒが同じことをするには、およそ1兆米ドルの暗号市場の時価総額をはるかに上回るものが必要でしょう。またさらに、ビットコイン・ブロックチェーンの透明性は、おそらくあらゆる「クジラ」の活動を明らかにするでしょう。
一方、ここ数週間の間に、ブロックチェーンインフラストラクチャープロバイダのInfuraとNFTマーケットプレイスのOpenSeaで論争が起こり、中央サービス・プロバイダに依存することで暗号ネットワークの利点が損なわれる可能性があることが浮き彫りにされました。制裁に準拠するため、InfuraとOpenSeaは、ドネツクやクリミアなどウクライナのロシア支配地域から発信されるIPアドレスを禁止し、個々のアカウントを削除しなければならなかったのです。MetaMaskのようなデジタルウォレットを通じて秘密鍵を自己保管しているユーザーも、イーサリアムネットワークへの接続をInfuraに依存しているため、被害を受けました。一部の技術に精通したユーザーはVPNやブロックチェーンノードを使用して規制措置を回避しましたが、一般のユーザーは暗号通貨において何の動きもできませんでした。
中央サービス・プロバイダに依存する暗号ネットワークは、分散化よりも使いやすさと単一障害点を選んだと私たちは考えています。理想的な日常のシナリオにおいては便利ですが、中央集権的なサービス・プロバイダは、残念ながら、最近より頻度を増しつつある異常時の混乱に対処できないことがよくあります。その結果、ビットコインの保管と交換のためのプライバシーと分散化の開発に注力しているBlock社のような企業がシェアを獲得し、成功する可能性が高いのです。
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