By ARK Invest

本レポートは、2022314ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#308」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. バイデン大統領の新「大統領令」は、米国における暗号技術革新への道筋を示す有望な一歩

今週、ホワイトハウスはバイデン大統領が提案した「デジタル資産の責任ある開発確保に関する大統領令」を発表しました。これは待望の指令であり、米国における暗号資産の未来への明るい兆しです。ホワイトハウスの暗号資産ファクトシートで強調されているように、この大統領令は以下のような措置を求めています。

  1. 米国の消費者、投資家、および企業を保護する。
  2. 米国と世界の金融の安定を守り、システミックリスクを軽減する。
  3. デジタル資産の不正利用がもたらす財政および国家安全保障上のリスクを軽減する。
  4. 技術および経済競争力における米国のリーダーシップを促進する。
  5. 安全で安価な金融サービスへの公平なアクセスを促進する。
  6. 技術の進歩を支援し、デジタル資産の責任ある開発と利用を確保する。
  7. 米国中央銀行デジタル通貨(CBDC)を模索する。

しかし、米国下院議員のトム・エマー氏が指摘したように、この大統領令は、その内容からして理想的な規制の枠組みを提供するものではありません。

  • 分散化の強調と、最も分散化された暗号資産をサポートすることの重要性の欠如。
  • まだ満たされていない金融サービスのニーズに対する主要な対応策として、米国CBDCを追求していくことを強調しているが、そうしたニーズにはビットコインのようなネットワークが解決策となる。

とは言うものの、米国政府は、イノベーションを促進し、米国の市民や機関による暗号資産の普及を進めるために、デジタル資産技術を展開する有利な方法を見出そうと尽力しているように見えます。ARKは、大統領令に関連する今後の政策に細心の注意を払っていきます。

 

2. マイクロ流体力学とディープラーニングを組み合わせれば、生細胞の選別が可能に

1世紀以上にわたって、生物学者はさまざまな種類の細胞が顕微鏡の下でどのように見えるかを研究してきました。この初期の基礎科学により、 細胞診断医は高倍率の画像処理装置を用いて悪性細胞と良性細胞を区別し、腫瘍の侵襲性を予測できるようになりました。しかし、単一細胞の視覚的解析には多大な労力が必要であり、また主観的でもあるため、次世代シーケンサーのような定量的な解析方法が普及しつつあります。

スタンフォード大学からスピンアウトしたDeepcell社は、このほど、ディープラーニング(深層学習)に基づいて単一細胞を識別し、並べ替え、濃縮するためのプラットフォームである「COSMOS」に関する主要な論文を発表しました。15億個の単一細胞のHD画像でトレーニングされたDeepcell社のAIは、生細胞の微妙な視覚的特徴を認識し、この図Aに示すように、それらをマイクロ流体チャンバーに分類して、癌細胞を健康なヒト細胞から分離することができる可能性があります。

他の細胞選別方法とは異なり、Deepcell社のアプローチは、蛍光色素で細胞を標識する必要がなく、狭い選別基準に依存することもありません。Deepcell社がディープラーニングを用いることに成功したことから、新しいAIモデルによって多くの種類の細胞を分離し、研究調査においてそれらをより普及させることができると考えられます。悪性細胞と良性細胞が混在する中で、希少な標的細胞をより汎用化することで、研究者は下流の分析にかかる時間、エネルギー、費用を節約できるはずであり、COSMOSは診断、創薬、合成生物学などの分野で幅広く応用されることでしょう。

 

3. Apple TV+がメジャーリーグベースボールとの契約を獲得

先週開催されたイベント「Peek Performance」で、Apple社は金曜夜のメジャーリーグベースボールの試合の一部をApple TV+で独占配信すると発表し、球団の地域スポーツネットワーク(RSN)では放送されない可能性があることを示唆しました。Apple社にとって大きな勝利であるこの契約は、より広範なテレビ業界に大きな影響を及ぼすものです。

Kagan Researchによると、米国のおよそ1,850万世帯がすでにコードカット(ケーブルテレビや衛星放送の契約を打ち切ること)をしており、2019年末からリニアTV(視聴者がスケジュールされたTV番組をその放送時間と本来のチャンネルで視聴する古典的なシステム)の世帯消費量が22%減少しています。米国には約6,800万世帯があり、リニアTVは依然としてスポーツの生中継を支配していますが、スポーツの世界でも時代は変わりつつあるのです。以前のARKの調査では「現在、より多くの資金とリーチを持つプレイヤー(AmazonAppleGoogle)がコアビジネスの顧客獲得チャネルとしてストリーミングを利用しており、彼らのデジタル入札の予算は、リニアTVが対抗することが難しい高さにまで拡大する可能性が高い」と推測されています。

コードカットとストリーミング契約獲得を狙う予算の潤沢なプレーヤーが相まって、スポーツリーグはますますストリーミングへの移行を余儀なくされそうです。また、広告が主なきっかけとなる可能性もあります。Rokuによると、消費者のテレビ視聴時間の45%をストリーミングが占めるようになったにもかかわらず、テレビ広告予算のわずか18%のみがリニアTVからストリーミングに移行しているに過ぎないそうです。広告主がこの現実に追いつけば、スポーツリーグもそれに追随する可能性が高くなるでしょう。

 

4. Stripe社が暗号資産コミュニティに再参入

今週初め、決済処理業者のStripe社は、FTXNifty GatewayBlockchain.comなどの暗号資産企業に同社製品の一部を提供すると発表しました。同社は、従来のインフラと暗号資産インフラをつなぐシームレスな橋渡し役となるために、不換紙幣から暗号資産へのオンランプ(ブロックチェーンを用いた新たなオンライン決済サービス)、暗号資産ウォレット用のBaaS(サービスとしての銀行業務)API、不正検知、ID認証など、多くのサービスを提供しています。例えば、Stripe社のID製品により、暗号取引所FTXは最近、「新規投資家の拒否件数を大幅に削減」しました。

今回の新たな提供は、ビットコインを決済のIP層」として有効にした2014年の試みに続くものです。加盟店がビットコインを決済手段として受け入れることに興味を失ったため、Stripe社は2018年にこのサービスを廃止しました。2020年に同社の共同創業者であるジョン・コリソン氏は、「暗号通貨を使用してオンラインで物を買うこと」は、「まだ大規模ではなく、製品市場に適合していない」と述べました。 しかし、昨年Stripe社は再び軌道修正して暗号資産に焦点を当てたチームを構築しており、現在そこには少なくとも20人が雇用されています。1

[1]LinkedInによると、現在Stripe社には、役職や職務の説明に「暗号資産(Crypto)」という言葉が含まれる社員が20人います。

 

 

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