By ARK Invest

本レポートは、2022328ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#310」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 未上場企業の評価額が下落している模様 

先週、Bloombergは、個人向け食料品配達の新興企業であるInstacart社の評価額が、約1年前の3月に発表された390億米ドルから240億米ドルに40%近くも下落したと報じました。続いてAxiosは、この評価額の下落は投資家が保有する優先株ではなく、不思議なことに、大部分が従業員が保有する409a普通株のみに関係していることを指摘しています。2021年の初めにおける同社の409aと優先株の評価額の差はわずか5%だったにもかかわらず、20221月には、早くもFidelityInstacart社のシリーズI優先株の公正価値を25%引き下げました。[1] こうしたデータは、Instacart 社の優先株も普通株と同様の評価減を受ける可能性があることを示唆しています。

広範な公開株式のベンチマークに含まれないイノベーション銘柄の弱気相場が1年以上続いた後、Instacart社の値動きは、未上場の新興企業から初めて公に発表された大規模な評価額の引き下げであると言えます。上場している競合企業の1つであるDoorDash社(NYSEではDASH)も20213月以降、約40%下落しています。[2]しかし、Instacart社の昨年の収益成長率はDoorDash社の69%に対して21%3分の1以下であり、売上高に対する株価比率もDASH7.5倍に対して13倍と50%以上高いため、DASHに対してまだ割高である可能性もあります。[3]

先週のニュースレターでは、バリュエーションの高騰は、清算を好む個人投資家とは対照的に、その会社の従業員に不均衡な打撃を与えることが多く、有能な人材が、評価額の高いスタートアップ企業に入社することを躊躇する可能性を指摘しました。Instacart社は、この懸念を払拭するために409a 評価額の下落を公表したのかもしれません。Bloombergによると、Instacart社は、「新しい株式報酬を、同社が市場での支持を取り戻した場合、長期的に利益を得る可能性がより高くなる更新後の評価額に合わせることで、人材の採用と定着に向けた取り組みを強化する 」ことを望んでいるようです。

一方、非公開のセカンダリー市場のデータも、新興企業の評価が公開市場の下落に反応していることを示唆しています。セカンダリー市場のForgeは、第4四半期と2月はいずれも同社のプラットフォームで取引された企業の価格が約10%下落し、セルサイドの関心表示(IOI)の割合が60%と、2020年第1四半期のコロナウイルス危機が最も深刻だった時以来の高水準であり、買い手のIOI60%だった2021年と比べると、明らかに逆転していると報告しています。

[1]Fidelity社のグロース・カンパニー・ファンド(FDGRX)の2021年年次報告書によると、Instacart社のシリーズI株の取得価格は20212月に1株あたり125米ドル、最新の月間保有報告書によると、2022131日時点では1株あたり94米ドルと報告されていることから。両資料はこちらでご覧いただけます。

[2]20212月と3月のDoordashの平均株価162米ドル、20222月と3月(現在に至る)の平均株価98米ドルに基づいて40%を算出。株価データはycharts.comより出典。

[3]ブルームバーグhttps://www.bloomberg.com/news/articles/2022-03-25/instacart-slashes-its-valuation-by-almost-40-to-24-billion?sref=1f7Aj053)。Instacart社の2021年の売上高は20%増の18億米ドル。240億米ドル/18億米ドル=13倍 Yahoo Finance(https://finance.yahoo.com/quote/DASH?p=DASH)Doordash社の2021年の売上は69%増の49億米ドル、現在の時価総額は約365億米ドル。365億米ドル/49億米ドル=7.5倍。

 

2. 新たな「編集」・「挿入」機能を統合したOpenAIGPT-3

このたびOpenAI社は、GPT-3」の新機能として「編集」と「挿入」という2つの新しい機能を発表しました。この機能により、文脈の変化に応じて段落を書き換えたり、物語の文章を一人称から三人称に変換するなど、既存の文章をさまざまな方法で修正することが可能になります。これまで「GPT-3」は、新しいテキストを生成することはできても、既存のテキストを編集することはできませんでした。

この新機能は、ソフトウェアコードにも適用されます。「Codex」では、ソフトウェアエンジニアが「編集」および「挿入」機能を利用して、コードのリファクタリング、別のコードセクションのコンテキスト知識を備えたオートコンプリート機能、言語間の翻訳の他、たくさんのことを行なうことができます。これらはすべて、ソフトウェアエンジニアの生産性を大幅に向上させるはずです。ARKBig Ideas 2022では、2030年までにAIツールによってソフトウェアエンジニアの生産性が倍増する可能性があることを提案しました。「Codex」の進化により、この予測に確信を持つようになりました。また、ソフトウェアエンジニアや経営陣との対話を通じても、実際の使用例について説得力のある説明がなされています。

 

3. Exxon Mobil社は、余った天然ガスでビットコインを採掘中

今週、Bloombergは、Exxon Mobil社がノースダコタ州で、通常はフレアリング(石油産出に際して出てくる不要なガスとして燃やすこと)され、無駄になる天然ガスを使用してビットコインを採掘する試験的なプログラムを実施していると報じました。この大手石油企業は、アラスカ、ナイジェリア、アルゼンチン、ガイアナ、ドイツでも同様の事業を検討しているとのことです。

匿名の情報筋によると、20211月、Exxon社はCrusoe Energy(クルーソーエナジー) Systems と「バッケン・シェール盆地の油井パッドからガスを採取し、現場でビットコインのマイニングサーバーを稼働させるためのモバイル発電機に電力を供給する」契約を結んだといいます。この試験的プログラムは、1ヵ月あたり最大1,800万立方フィートのガスを使用しますが、そうでなければ、こうしたガスは不要なものとして焼却されるか、大気中で燃焼することになるでしょう。

Exxon社とCrusoe社の両社による確認は取れていませんが、大手石油・ガスメーカーが多くの投資家が求めるESG基準を満たそうとする中で、このプログラムは重要かつ経済的に有益な戦略になりうると考えています。天然ガスは、その大部分がメタンで構成されており、大気中に放出されてから20年間は、二酸化炭素の最大80倍もの地球温暖化の原因となる物質だからです。Exxon社のプロジェクトは、ConoCoPhillips(コノコフィリップス)社が同じくバッケン・シェール盆地から採掘した余剰ガスをビットコインのマイナー(採掘者)たちに供給することを推進したことに続くものです。

ビットコインの採掘とエネルギー生産の融合は、今後ますます加速していくと考えています。場所や消費者の需要に左右されず、費用対効果の高いエネルギー源の発見を推奨するビットコインの力は、エネルギーインフラに大きな影響を及ぼします。ビットコインの採掘は、他の方法では焼却されてしまう天然ガスを回収できるだけでなく、太陽光や風力などの断続的なエネルギーシステムへの投資を促進し、送電網に供給される再生可能エネルギーのシェアを世界的に高めることになるでしょう。

 

 

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