By ARK Invest

本レポートは、2022年66にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#319」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1.SquareAppleTap-To-Payと統合

Block社の販売事業であるSquareは先ごろ、Apple社の新機能「Tap to Pay」と統合すると発表しました。これにより加盟店は、iPhoneの「POS (Point-of-Sale)」アプリを使って非接触決済ができるようになるため、その場で即お客様に対応したり、外出先での非接触決済も可能となり、「新しい商取引体験」を提供することができるようになります。

SquareやToastなどの企業は、NFCチップを搭載し、タップやスワイプ、チップの挿入でカードの受け入れが可能な小型の携帯型タブレットなどのPOSハードウェアを加盟店に販売しています。Tap-to-Payは、携帯型POSデバイスの必要性を減らし、ハードウェア販売によるSquare社の損失を低減させることができます。また、重要なのは、そのPOSアプリを通じて、iPhoneなどのサードパーティ製のPOSデバイスが、Square社の多くの加盟店が日常業務で利用している同社のソフトウェアや金融ソリューションに統合されることです。

一方、Apple側としては、新たな収入源を確保することができます。2014年以降、同社は消費者の発行銀行からApple Payのクレジットカード取引ごとに0.15%を徴収しています。Tap-to-Payは、SquareのようなPOS事業者に取引ごとに数ベーシスポイントを課金し、加盟店側からも手数料を徴収することが可能になるのです。

 

2. 組織再編によって強まるMeta AIの影響力

Meta AIは、同業他社であるAlphabet社のDeepMindやスタートアップのOpenAIと並んで、クラス最高の研究機関として広く評価されています。また、Meta AIは、グラフニューラルネットワークからビジョントランスフォーマー、多言語翻訳に至るまで、幅広いトピックに関する貴重な最先端の研究を発表しています。

過去4年間、Meta AIはFacebook、Instagram、およびその他のMetaプロパティの商品開発チームからサイロ化された中央集権型の研究開発組織として機能してきました。しかし、COOであるシェリル・サンドバーグ氏の退任後、同社は分散型構造に移行し、AI研究者と商品チームを統合して、プロダクトライン全体でAIを活用する予定です。

 

3. ビットコイン・マンスリーを5月よりリリース

上場企業が成長率や収益を開示する四半期財務諸表を公表するのと同じように、パブリックブロックチェーンは、ネットワークの活動や内部経済に関するデータを公表するリアルタイムのグローバル台帳を提供します。

市場の変化の速さを考慮して、ARKでは、関連するオンチェーン活動を詳述し、ブロックチェーンデータのオープン性、透明性、可用性を紹介する「収益報告書」であるThe Bitcoin Monthly(ビットコイン・マンスリー)の公開をスタートさせました。これらのレポートの分析は、最初はビットコインに焦点を当てますが、近い将来、より広範な暗号市場に解説を拡大する予定です。

ビットコイン・マンスリー5月号をダウンロードするには、こちらからご登録ください。下記のトピックを取り上げています。

  • ビットコインは5月の1ヵ月間、38,480米ドルから31,835米ドルに下落し、最終的には2%下落しました。
  • 世界経済が後退の兆しを見せる中、ビットコインは、依然として不透明なマクロ環境に直面しています。
  • Terraの破綻は、暗号資産市場史上最大級の失態の一つとなり、暗号資産市場に警告を発しました。
  • ビットコインのオンチェーンファンダメンタルズは、短期保有者が降伏する中、依然として堅調に推移しています。

4. Ultima Genomics社が100米ドルゲノムで競合するシーケンシング分野に参入する可能性 

今週、Ultima Genomics(ウルティマ・ゲノミクス)社は、同社の最初の機器であるUG100が100米ドル以下でヒトゲノムの配列決定を行なえると発表しました。イルミナ(ILMN)社の技術を使ったヒトゲノムのシーケンス価格は、2014年に1,000米ドルの壁を超えた後、基本的に横ばい状態になっていたため、このニュースはライフサイエンス界を驚かせ、おそらくは喜ばせたことでしょう。

2016年の設立以来、Ultima社はGeneral Atlantic、a16z、D1 Capital、Khosla Venturesといった著名な投資家から6億米ドル以上を調達してきました。また、ブロード研究所やホワイトヘッド研究所などの有名な協力機関とともに、ハイスループット(HT)アプリケーションを網羅したプレプリント原稿を複数発表しています。その中には、大規模なシングルセルシーケンスプロジェクト、エピジェネティックシーケンス、リキッドバイオプシー検査などがあり、Ultima社の低コストプロファイルによって、そのアプリケーションはさらに加速されるはずです。

ARKの調査によると、Ultima社のUG100プラットフォームはイルミナの主力製品であるNovaSeqよりわずかに高速で、NovaSeqの1GBあたり6米ドルの20%以下に当たる1GBあたり1米ドルでデータを生成し、さらに安くなる可能性があるのです。注意:これらの数値は消耗品のみに基づいており、ハードウェアの償却や人件費、演算処理費などのその他のコストは含まれていません。また、Ultima社のプラットフォームは、ホモポリマーと呼ばれる反復性のあるゲノム伸長部付近でシステムエラーが発生しやすいようで、特定のアプリケーションではその有用性が制限される可能性があります。最後に、UG100の300塩基対(bp)読み取り長は、NovaSeqの250bpの読み取り長よりいくらか長いものの、数千倍も長い真のロングリードには程遠いものです。そのため、Ultima社のシステムでは、より大きな構造変異やタンデムリピートのような読みにくいゲノム領域を解読することはできないようです。

現在、Illumina社は低価格帯での粗利益を最大化しているように見えますが、これはおそらく、過去10年間、ゲノムあたりの価格が最も低いハイスループット(HT)シーケンサーで競争に直面しなかったからだと言えます。Element BiosciencesSingular GenomicsOMICPacific BiosciencesPACB)から新しいショートリード・シーケンスのプラットフォーム群が出てきたものの、HT市場をターゲットにしているものはありません。Ultima社はHT市場に特化しています。

サンプル準備や計算など、シーケンスの周辺コストが実験の経済性を支配することが多いため、私たちは100米ドルというゲノムの価格帯に過度な重点を置いていません。しかし、Illumina社のインフォマティクスツールはアクセスしやすく堅牢であり、膨大な量のシーケンスデータを生成するHTユーザーにとって有利です。また、HTユーザーとの会話から、より定評のあるベンダーが提供するトレーニングやサポートサービスの重要性が示唆されています。

とはいえ、Ultima社のUG100は、Illumina社のNovaSeqに代わる経済的に魅力的な代替品であると私たちは考えています。そのため、Grailを所有しているIllumina社は、Ultimaへの乗り換えを検討する可能性のある大口の診断系顧客数社と競り合っています。消耗品のマージンが高いことを考えると、Illumina社は価格を下げることで対応できるでしょう。

いずれにせよ、シーケンスコストの低下は、大幅な長期的成長を遂げている基礎および応用ライフサイエンス業界にとって追い風となると考えられます。Ultima Genomics社がシルバースポンサーとなった来週のAGBTカンファレンスで、より詳しい情報が得られることを楽しみにしています。

 

5. Lens Protocolは、分散型ソーシャルメディアに新たな視点をもたらす 

5月18日、Polygonブロックチェーン上でLens Protocol(レンズプロトコル)社のソーシャルグラフが公開され、分散型ソーシャルメディアの潜在的な影響力が改めて注目されています。

スタニ・クレチョフ氏によって設立されたLens は、分散型ソーシャルグラフの作成と使用を可能にするインフラストラクチャー層を強化することを目的としています。これらのグラフは、次のことを可能にします。

  1. プラットフォームプロバイダーによる検閲やキュレーションがない、よりオープンで自由なソーシャルメディア体験。
  2. プロファイル、友人、ネットワーク、コンテンツなどの所有するすべての資産を、1つの分散型アプリケーション(dApp)から別の分散型アプリケーションに移植することを可能にする出口の任意選択性。

Lens Protocolは、プロトコルの主要なプリミティブとして機能するプロファイルNFTを介してソーシャルグラフを構築し、少なくとも理論的には、ユーザーが自分のソーシャルプロファイルを所有することを可能にします。フォロー、コンテンツの公開、共有、コメントといった他のすべてのコアアクションには、プロファイルNFT IDを参照する新しいNFTのMint(ミント:作成・発行)が必要で、すべてのアセットが「所有」されていることを確認する必要があります。ユーザーは、プロファイルNFTがウォレットに残っていれば、関連するすべてのアセットを所有し、他の人が価格を付けてコンテンツをMint・収集することを許可することで、コンテンツを販売することができます。また、コンテンツを再投稿したユーザーは収益の一部を受け取ることができるため、Lensはキュレーションのインセンティブにもなっています。さらにLensは、ユーザーがフォロワーに投票することで報酬を得ることができ、ガバナンスを実現することもできます。

ユーザーは、Lens上で50を超えるフロントエンドアプリケーションを構築しています。Twitterのブロックチェーン・ベース版であるLensterや、Patreonのようなソーシャル・プラットフォームで、基盤となるプラットフォームのネットワーク効果を利用するIrisなどです。また、この記事を書いている時点で、Lensが5月18日に発売されて以来、16,000のプロファイルNFTがMintされています。

このプロトコルに関する疑問は、どんどん広がっています。プロトコルが成長し、エコシステム内のアプリ間の競争が激化する中、開発者はLensの共有ユーザーベースに依存して成長を起動させることができるのでしょうか?Polygon、Ethereum、そしてLensは、Ethereum互換チェーン以外の資産を移植することがもはや問題とならない程度に拡張されるのでしょうか、それともLensはマルチチェーンの未来に対応することを余儀なくされるのでしょうか?スケーリング技術は、大量採用されたすべてのソーシャルメディア・インタラクションを処理するために必要なスループットをサポートできるほど向上するでしょうか?Lens がスケールアップできたとしても、消費者はソーシャルメディアに参加するためにお金を使うでしょうか?Lens はカスタムのオフチェーンインデクサーの使用により単一障害点のリスクを負うのでしょうか?TikTokを生み出した中央集権的なレコメンデーションアルゴリズムや検閲の仕組みなしに、Web 2.0の巨人たちと競争することができるでしょうか?

私たちは、ソーシャルメディアを分散化するこの試みを注視しています。ARKの調査によると、Web3 によって実現されるオンライン支出は、今後 10 年間に年率 28% で成長し、12 兆 5000 億米ドルに達する可能性があります。Lens Protocol社は、その潜在的な成長に大きく貢献する可能性があります。

 

 

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