By ARK Invest
本レポートは、2022年6月21日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletters_#321」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1.「カンブリア爆発*」のレベルに近づいている次世代シーケンシング(NGS)ツールの革新
最近のAdvances in Genome Biology and Technology(AGBT)会議から得られた知見は、ブレークスルーがゲノムシーケンシング業界を変革するという私たちの予想を裏付けるものでした。Illumina(ILMN)社は次世代シーケンシング(NGS)において重要な地位を維持するはずですが、その市場シェアはピークに達しようとしているようです。なぜなら、そのショートリードのシーケンスバイシンセシス(SBS)プラットフォームでは、新しい顧客層を満足させ、複雑な生物学的疑問に答え、新しいアプリケーションを可能にすることができないからです。当社の調査によると、Singular Genomics (OMIC)、 Element Biosciences (Private)、 Ultima Genomics (Private)、 Pacific Biosciences (PACB)、 Oxford Nanopore Technologies (ONT.L)、そして Beijing Genomics Institute (BGI) などのNGS企業は、市場を変革する重要な新技術とソリューションを導入しているようです。
NGSプロトコル、サードパーティツール、トラブルシューティングを含むIllumina社の堅牢なインフラとサービスは、その幅広いインストールベースに引き続きメリットをもたらすはずですが、すべての問題に対して効率よく、経済的に対処することはできず、場合によっては、まったく対処することができないかもしれないというのが私たちの見解です 。そして、他のプラットフォームで優れた、あるいは「完璧な」シーケンスが出現し、増える一方のNGSアプリケーションのリストに対してもコストとスループットが同等になったおかげで、「これで十分」の時代は終わりを告げつつあるようです。
研究者と診断企業の両方に力を与え、競争を活性化することで、NGSの品質と費用対効果を向上させることができるはずです。私たちは、新しいシーケンシング技術に関する研究と、まだ深みはないにしろ重要と思えるユースケースについて、引き続き情報共有してお伝えしていくつもりです。
*カンブリア爆発とは、古生代カンブリア紀に起きたとされる生物の爆発的進化のこと。この現象によって、今日みられるほとんどの動物門が突然出揃ったと考えられている。動物門とは生物分類の階級のことで、たとえばヒトは動物界、脊索動物門、哺乳綱、霊長目、ヒト科、ヒト属に分類される。(出典:なにかの知識 https://nanikanochishiki.blogspot.com/2021/10/blog-post_66.html)
2. エア・モビリティにおいて音が果たす重要な役割を強調したUp Summit Conference
先週、米国アーカンソー州ベントンビル市で開催されたUP Summitカンファレンスでは、注目すべきエア・モビリティ新興企業のコンセプト車両が取り上げられました。これらは、最終設計を進化させ、現在規制当局の承認過程にあるものです。過去5年間で約30万件の商業医療配送を行なったZipline社は、ほぼ音声のみに依存し、近くの航空機の飛行経路、メーカー、モデルを正確に判断する検知・回避システムを発表しました。電動ドローンが騒音を最小限に抑え続ける中で、その有用性が問われるかもしれませんが、同社のシステムは安価で軽量なソリューションであり、将来的にはカメラベースの検知を強化できる可能性があることに注目しています。
Up Summitでは、また、ドローンの低騒音化が大きく進展したことが紹介されました。以前は、ドローンやエアタクシーは騒音が大きすぎるため、広く普及することはないと考えられていました。しかし、企業は現在この問題を解決しているようです。これは、Up Summitの聴衆の半数は、電気飛行機がほとんど聞こえなかったため、デモフライトを見逃したことが示しています。今後、業界は新たな制限要因である規制当局の認証に焦点を当てなければなりません。
Up Summitでの収穫を熟考し、我々は、ドローンや電動エアタクシー会社は、道路インフラが不十分な市場で成功する可能性が高いものの、道路や配送網が整備された地域では厳しい競争に直面する可能性があると結論づけました。テクノロジーの「飛躍的進歩」は、Up SummitのパートナーであるWalmart社の歴史と韻を踏むことでしょう。60年代、創業者のサム・ウォルトン氏は、新しい店舗の立地を選ぶために飛行機で移動し、道路網が発達していないアメリカの田舎町で店舗の確認を行なっていました。
3. Three Arrows Capitalの破産は、暗号通貨市場における更なる下落伝播を示唆
Terraエコシステムの巻き戻しと暗号融資プラットフォームCelsiusの崩壊の可能性に続いて、暗号通貨の最大かつ最も評判の良いファンドの1つであるThree Arrows Capital(3AC)社が現在債務超過に陥っているようです。
元学友のスージーホー(Su Zhu)氏とカイル・デイヴィス(Kyle Davies)氏の二人によって10年前に設立された3ACは、2021年4月のピーク時には100~180億米ドルを運用していたと報告されています。3ACの保有資産は、ビットコインやGBTCから、イーサリアムやSolanaなどのレイヤー1スマートコントラクトプラットフォーム、Finbloxなどの民間融資企業に至るまで、広範囲に及んでいました。
しかし、3ACの苦戦は、5月に6億米ドルからほぼ0米ドルに暴落したLUNAのポジションから始まりました。その後まもなく、3ACは残りのポジションにレバレッジをかけ、さらなる市場の下落で担保を大きなリスクにさらすことで、損失を取り戻そうとしたようです。
今週、Celsiusの出金停止決定を受けて市場が売られる中、3ACが証拠金請求に応じられないというニュースが浮上しました。金曜日の時点で、いくつかの貸し手や取引所は、3ACが保有するポジションを清算したことを暗黙的または明示的に認めました。清算した中には、FTX、Deribit、BitMEX、Genesis、そして BlockFiが含まれていました。また、他の報告書によると、3ACは8%の金利を約束して、彼らが投資していたプロトコルの宝庫も管理していました。現在、プロトコルのチームはその国債にアクセスできなくなった模様です。Three Arrows社はまた、証拠金請求に応じるために他の取引先から資金を吸い上げ、それらの取引先を危険にさらしていたとも言われています。
3ACの債務超過の可能性の全容はまだ不明なままです。この記事を書いている時点では、同社は債権者との間で計画を練る時間を確保するため、合意を求めながら営業しています。3ACとカウンターパーティが不可逆的な損害を防ぐ合意に達しない場合、暗号資産市場はさらなる下落伝播と売り圧力に直面する可能性が高いでしょう。
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