By ARK Invest
本レポートは、2022年8月1日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #327」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Roku社の最近の収益は期待外れに終わったが、長期的な投資機会は期待できる
By Nicholas Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
今週、Roku社の第2四半期の売上高と収益が予想を共に下回り、大きな話題となりました。経営陣は、広告予算の伸びの鈍化と消費者の自由裁量支出の減少を理由に通年の収益見通しを撤回し、第3四半期の収益見通しを前年同期比3%増に引き下げました。
しかしながら、この第3四半期の見通しは保守的であると考えます。なぜなら同社は、今年のアップフロント(米国におけるテレビ広告の先行販売)商戦で総額10億米ドル以上の広告費を計上しましたが、これは先行販売のCTV広告費の約16%、そしてアップフロントの広告費全体の5%に相当するからです。収益見通しと先行投資の結果の違いは、Roku社が来年はスキャッターマーケット(アップフロントにおける売れ残り)からの収益がほとんどあるいはまったくない、もしくは顧客の生涯価値(LTV)の見積もりを下げることによる会計上の影響が長期化すると予想していることを示唆しています。
残念な結果に終わった四半期と弱い収益見通しにもかかわらず、私たちは同社の長期的な成長ストーリーが損なわれていないと考えています。第2四半期のRoku社の総アクティブアカウント数は6,300万、つまり前年同期比15%増となり、第1四半期の14%から加速度的に増加しています。また、総ストリーミング時間も前年同期比19%増の210億時間となり、ユーザー1人当たりの平均プラットフォーム収入は、12ヵ月累計で21%増の44.10米ドルとなりました。
マクロ経済の逆風により、広告主は広告予算の引き締めを余儀なくされていますが、消費者がリニアTVを放棄する中、CTV広告は引き続き成長するはずです。Nielsen社によると、第2四半期中に米国の18~49歳の消費者はテレビ視聴時間全体の50%をストリーミングに費やしましたが、CTV広告予算はテレビ広告予算全体の22%しか占めていませんでした。2022年5月のインタラクティブ広告局の2021年ビデオ広告費&2022年展望調査では、全回答者の76%、そして最大メディア支出者の87%が、CTVをメディアプランで購入すべき第1位(マストバイ)にランク付けし、73%の人がリニアTV広告予算の減少を予想していることを示しました。
マクロ経済情勢が引き続きRoku社の短期的な業績を圧迫する可能性はありますが、同社の潜在的な成長力に対する当社の見通しは引き続き堅固です。米国、カナダ、メキシコにおけるストリーミング時間数でNo. 1のプラットフォームとして、Roku社はリニアTVから デジタルTVへの広告シフトを引き続きリードしていくはずです。
詳細については、最近発表したオープンソースのRoku社評価モデルおよび関連のリサーチ記事をご覧ください。Roku社 は、テレビ用オペレーティングシステムとハードウェアの大手プロバイダで、世界中の何百万世帯もの家庭に様々なストリーミングプラットフォームを配信しています。
2. イーサリアムの拡張性問題を解決すべく、アプリケーション・デベロッパーがゼロ知識ロールアップを開発中
By Frank Downing | @downingARK
Analyst
何百万人ものユーザーにリーチすることを目指すブロックチェーンの世界では、セキュリティや分散化を犠牲にすることなく、そのスケールを拡大しようとしています。拡張性の欠如についてしばしば批判されてきたイーサリアムは、1秒あたり15件のトランザクションしかサポートしておらず、これはネットワーク上の取引需要よりもはるかに低く、時には法外に高い手数料の原因になっています。イーサリアムの中心的な開発者たちは近々リリースされるThe Merge(マージ)に注力しているため、イーサリアム上に構築されるアプリケーションの開発者たちが拡張性の問題を解決する任務を負っています。
最近パリで開催されたEthereum Community Conference(EthCC)において、Polygon、zkSync、Scrollのチームは、主要なスケーリングのマイルストーンであるゼロ知識(ZK)ロールアップに関する進捗状況を紹介しました。ロールアップは、まずオフチェーンで多くのトランザクションからデータを圧縮し、次にブロックチェーンにバッチ処理された出力をポストすることにより、ブロックチェーンのスループットを向上させます。イーサリアムに存在する2つの主要なタイプのロールアップ、楽観的ロールアップとゼロ知識ロールアップ(zkRollups)は拡張性をもたらす一方で、かなりの欠点に悩まされてきました。楽観的ロールアップは、ロールアップからの資金の引き出しを数日間遅らせてしまう一方、既存のゼロ知識ロールアップは、限られた取引タイプしかサポートせず、また特注のプログラミング言語を必要とします。
今回EthCCで展示された新しい製品は、zkRollupsとイーサリアムとの互換性が高まったことを示唆しています。展示されたソリューションには技術的な違いがあるものの、新世代のzkRollupsにより、開発者は既存のイーサリアムツール(人気のデジタルウォレットであるMetamaskなど)を活用し、コードを大幅に変更せずに既存のスマートコントラクトをロールアップに移植できるようになります。
これらのEVM互換およびEVM相当のロールアップはzkRollupsにとって重要なブレークスルーですが、まだオフチェーン取引のシーケンシングの分散化を完成させる必要があります。この課題を解決するために3つのチームが競い合っていることは、スケーリングの問題を市場に解決させるというイーサリアムの戦略の賢明さを示唆しています。
3. Vertex社とVerve社が肝臓の遺伝子編集で共同研究を開始
By Ali Urman | @aurmanARK
Analyst
先週、技術に強い遺伝子編集企業であるVerve Therapeutics(ヴァーヴ・セラピューティクス/VERV)社と低分子企業のVertex Pharmaceuticals(バーテックス・ファーマシューティカルズ/VRTX)社は、肝臓疾患の生体内遺伝子編集療法の発見と開発に関する戦略的パートナーシップを発表しました。 Vertex社はVerve社に対し、3,500万米ドルの株式出資を含む6,000万米ドルの契約一時金、最大3億4,000万米ドルの開発マイルストーンとロイヤルティ、および6,600万米ドルの成功報酬を支払うことになっています。
Vertex社は、すでにCRISPR Therapeutics (クリスパー・セラピューティクス/CRSP)社 や Mammoth Biosciences(マンモスバイオサイエンス)社 などの遺伝子編集企業といくつかの提携や共同研究を行なっており、この提携は非常に興味深いものです。Vertex社は、PCSK9遺伝子をノックアウトしてLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の血中濃度を下げ、心臓病を治療する最初の臨床プログラム、VERV-101で行なったように、 Verve社が迅速かつ効率的にプログラムを実行すると考えていることが分かりました。これまでVerve社は心臓の治療に重点を置いてきましたが、今回の買収は、その技術が多くの臓器や病気に適用できる可能性を示しています。私たちは、この共同研究が他にどのような適応症を含むか知ることを楽しみにしています。
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