本レポートは、2022年8月8日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #328」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. CoinbaseとBlackRockが提携し、機関投資家向けにビットコインへの直接アクセスを提供
By Yassine Elmandjra | @yassineARK
Analyst
先週、CoinbaseはBlackRock社との提携を発表し、機関投資家向けにビットコインを始めとする暗号資産への直接アクセスを提供することを発表しました。この提携の核となるのは、Coinbase PrimeとBlackRockのAladdinの相互接続です。Coinbase Primeは、13,000人の顧客にカストディと高度な取引ソリューションを提供する機関投資家向けプライムブローカレッジプラットフォームです。Aladdinは、BlackRockのポートフォリオ管理ソフトウェアで、5万5000人の投資専門家が運用する約22兆米ドルの資産をサポートしています。今回の提携により、Aladdinのユーザーベースは、Coinbase Primeのプライムブローカー、取引、レポート、カストディの各ソリューションにアクセスすることができるようになります。Coibaseの製品担当副社長であるマックス・ブランズブルグ氏によると、この取引により、今後数年間で暗号資産クラスに数兆ドルの資金が投入される可能性があるとのことです。
Coinbaseと提携するというBlackRocks社の決定は、機関投資家がビットコインをはじめとする暗号資産を新しい資産クラスとみなしていることを示す強いシグナルです。そして、私たちもビットコインが十分に分散されたポートフォリオに割り当てられるようになったということに同意します。
過去10年間の資産クラス全体の日次リターンに基づく当社の分析では、十分に分散されたポートフォリオにおけるビットコインへの配分は、次の図で示すように、ボラティリティを最小化する場合の2.55％から、単位リスクあたりのリターンを最大化する場合の6.55％までの範囲であることが示唆されています。
出所：Coinmetrics; ARK Investment Management、2022年。予測は本質的に限定的なものであり、依拠することはできません。情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券または暗号通貨の購入、売却、保有の推奨と見なされるべきではありません。
この分析では、様々な資産クラスで構成される100万のポートフォリオをモンテカルロ（1 ）方式でシミュレーションを行ないました。「効率的フロンティア」は、特定のレベルのボラティリティに対して可能な限り高いリターンを獲得するものです。星印はシャープレシオを最大化し、ボラティリティを最小化するための配分を示しています。
ARKのポートフォリオ配分のシミュレーションによると、2.5%から6.5%の間における機関投資家の配分は、次の図で示すように、ビットコイン価格にそれぞれ20万米ドルと50万米ドルの影響を与える可能性があります。
出所：プライス・ウォーターハウス・クーパース（PwC）のデータに基づき、ARK Investment Management LLCが2022年に発表。予測は本質的に限定的であり、依拠することはできません。情報提供のみを目的としており、投資アドバイスや特定の証券や暗号通貨の購入、売却、保有の推奨と見なされるべきではありません。
[1]モンテカルロ・シミュレーションは、ランダムなサンプルを繰り返して結果を出力することに重点置くことで、この干渉を緩和します。一般的に、結果を予測・推定するために単一の変数に依存するよりも効果的ですが、当社のシミュレーションは完全に効率的な市場を想定しており、マクロトレンドや市場センチメントなど値動きに組み込まれない要因は考慮されていません。シミュレーションの一環として、一般的に使用されている以下の資産クラスのベンチマークを選択し、2011年から2021年までの値動きを分析しました。不動産-モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル（MSCI）、米国不動産投資信託指数（RMZ）、商品-原油先物（CL1 COMB）、通貨-MSCIグローバル通貨指数、債券-ブルームバーグ・バークレイズ米国総合債券指数、株式-S＆P500、金-GLD。
2. コンセンサスによる設備投資予測は、Teslaが引き続きEV市場シェアを獲得する可能性を示唆
By Sam Korus | @skorusARK
Associate Portfolio Manager
電気自動車（EV）分野での競争について、メディアの専門家は、新しいEVの設備投資（capex）の発表をTesla社への脅威として捉える傾向があります。GM社とFord社がそれぞれ350億米ドル、500億米ドルをEV生産に投入したことを指摘し、Tesla社への影響はマイナスになると結論付ける人もいます。
ARKは、この論理には2つの点で誤りがあると考えています。第一に、新型EVは内燃機関（ICE）車サプライヤーからシェアを奪っています。第二に、コンセンサス予測によれば、以下に示すように、Tesla社のEV設備投資は2025年までにFordとGMの両方を上回るでしょう。
コンセンサス予測によると、2023年にTesla社の設備投資がFord社の予算を、2025年にはGM社の予算をそれぞれ上回ります。2025年以降もTesla社の設備投資に匹敵しない場合は、Ford社とGM社がその成長に追いつくことは難しいと考えられす。イーロン・マスク氏は最近の決算説明会で、Tesla社が今後数年の間にギガファクトリーネットワークを6拠点から12拠点に拡大する意向を表明し、競争力に拍車をかけました。
3. 遺伝性心筋症の治療における進歩を示す遺伝子編集
By Ali Urman | @aurmanARK
Analyst
Intellia Therapeutics（インテリア・セラピューティクス/NTLA）社とRegeneron Pharmaceuticals（リジェネロン・ファーマシューティカルズ/REGN）社は、昨年の末梢神経学会において、遺伝性トランスサイレチン アミロイドーシス (hATTR) 多発神経障害患者を治療するin-vivo遺伝子編集療法におけるCRISPR Cas9の世界初のデータを発表し、歴史に名を刻みました。hATTRは、アミロイドタンパクが蓄積する疾患であり、治療しないと、複数の臓器、特に心臓（心筋症）と神経（多発神経炎）の障害を引き起こす可能性があります。注目すべきは、TTR遺伝子を編集することで、血清TTRを低下させ、慢性的な治療を必要としない多発性神経障害の1回限りの治療法を実現できる可能性があることを示したことです。
今週、 Alnylam Pharmaceuticals（アルナイラム/ALNY）社は、hATTR心筋症患者を対象としたRNAの干渉薬であるパティシランのAPOLLO-B試験において、良好な第3相データを報告しました。同社は、6分間歩行とQOL（生活の質）に関するアンケートに基づいた主要評価項目と最初の副次的評価項目を満たし、心筋症に対するTTRノックダウンの臨床的有用性を実証しました。
承認されれば、hATTRアミロイドーシスに苦しむ、5万人の患者さんが、1回限りの遺伝子編集で済むのか、それとも慢性的な遺伝子治療を続けるのかが重要な問題になるでしょう。
4. AIプログラミングツールは、ソフトウェアエンジニアの生産性を向上させる可能性が高い
By William Summerlin | @summerlinARK
Analyst
Microsoft社は先日の決算説明会で、GitHubのAIペアプログラミングツールが一般提供開始後1ヵ月で40万人以上の開発者に登録されたと発表しました。「Copilot（コパイロット）」と呼ばれるこのツールは、GPT-3と同じ大規模言語モデルのフレームワークを使用するOpenAIのCodexモデルに基づいて構築されています。
同社がCopilotを発表したのは、Alphabet社がコーディングコンテストで54%の成績を収めたDeepMindの新しい人工知能プログラムであるGatoを発表してから数ヵ月後のことです。Gatoは、オープンソースのコードでトランスフォーマーベースの言語モデルを事前に学習させ、競合するプログラミングデータセットのサンプルを使用してそれを微調整します。
最近、Google社は、エンジニアがより効率的にコーディングできるように、セマンティックエンジンと機械学習を組み合わせたコード補完ツールが新しいコードの約3％を記述したと説明しました。全体として、セマンティック機械学習ツールを使用することで、1万人を超えるエンジニアがコーディングの反復時間とコンテキストスイッチの回数をそれぞれ6%と7%削減したそうです。
ARKの予測では、今後5年から10年の間にAI（人工知能）コーディングモデルの性能が指数関数的に高まり、AIのトレーニングコストは年間60％減少します。当社の調査によると、AIツールはコーディングや文書作成からメモ書きに至るまで様々な作業を自動化し、2030年までにソフトウェアエンジニアの生産性を2倍以上向上させることができるはずです。
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