By ARK Invest

本レポートは、2022822ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #330」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. 人間の体は自ら自分専用の薬を創り出し、それを使って治すことができるのか?

By Simon Barnett | @sbarnettARK
Analyst

遺伝子編集や遺伝子合成に関する急速なコスト低下は、科学の創造性を高め、これまで法外なコストがかかっていた仮説の検証を可能にしています。最近、Nationwide Children‘s Hospitalの科学者たちは、遺伝子治療が現在の標準治療よりも効果的にがん免疫療法を行なうことができる可能性を示す概念実証の研究を発表しました。

遺伝子治療は通常、欠陥のあるDNAを修正または置換するものですが、Nationwide Children‘s HospitalDNA指示は、連邦医薬品局(FDA)がすでに承認している「Blincyto(ビーリンサイト)」と呼ばれる白血病のタンパク質ベースの免疫療法をコード化したものでした。そして、研究者らは、新しいDNA指示コードを用いて、マウスの細胞内でBlincytoを継続的に製造することを可能にしました。この治療法には、Blincytoの生産を制御するON/OFFスイッチのDNA指示も含まれていました。

この初期の研究が後期臨床試験に入れば、大きなインパクトを与える可能性があります。Blincytoのように、多くの薬剤は継続的な点滴を必要とし、患者は病院や自宅でのIV (静脈内療法)に貼り付けとなってしまいます。Nationwide病院の研究によると、1回の遺伝子治療により、最長36週間にわたって体内で薬が継続的に生産されるようになる可能性があるそうです。

この技術は、他の遺伝子療法にも関連する送達および標的化等の欠点に直面する可能性がありますが[1]Nationwide病院の画期的な研究は、免疫チェックポイント阻害薬のKeytruda(キイトルーダ)や分子標的治療薬のOpdivo(オプジーボ)のような、よりシンプルなタンパク質ベースの薬剤の投与に影響を与えるかもしれません。

[1]治療薬が免疫療法であっても、FDAがこれを遺伝子治療とみなす可能性があります。

 

2. ロボットに推論の力を与えているかのようなGoogle社のPaLM

By Tasha Keeney | @TashaARK
Analyst

Google社の研究者たちは、曖昧な言語コマンドに反応し、物理的な問題を解決できる家庭用ロボットを開発しています。従来のロボットは「エナジーバーを手に取ってください。」といった具体的な指示を必要としていましたが、新しい「ヘルパー」は、グーグルの言語モデル「PaLM」のおかげで「疲れたので、元気の出るお菓子を持ってきてください。」といったテキストプロンプトに応答します。PaLMは、思考連鎖を促すプロンプトや結果を制約するアフォーダンス機能に加えて、人間の複雑な言語を理解し、「ブラックボックス」の深層学習モデルとは対照的に、答えや解決策を生み出すためのロボットのアルゴリズムが十分に改善されています。

概念的には、言語ベースの段階的な推論を行なうことで、自動運転車を実現させる可能性があります。例えば、地元の警察署が自動運転タクシーに「車を止めて、乗客を降ろしてください。」と指示を出すことを想像してみてください。思考の連鎖によるプロンプトと段階的な推論を組み込んだシステムは、規制の遵守と認可をより加速させることができることでしょう。

 

3. Tornado Cashへの制裁の影響により、ブロックチェーンの分散化に関する議論が活発化する可能性

By Yassine Elmandjra | @yassineARK
Analyst

先週のニュースレターで、ARKは、米国財務省の外国資産管理局(OFAC)によるTornado Cashへの制裁措置が、暗号通貨のプライバシー管理にとって問題となり得る先例を作ったことについて述べました。

それ以来、この制裁は、特にイーサリアムのプルーフ・オブ・ステーク検証への移行に直面して、ベースレイヤーにおけるイーサリアムの検閲抵抗力の持続性についての懸念を呼び起こしています。プルーフ・オブ・ステークでは、バリデータの最大65が米国を拠点とする規制対象企業であり、OFAC制裁に従わなければならなくなる可能性があります。金曜日の時点で、Beacon Chain(ビーコンチェーン)のバリデータを支配している企業は、Lido(リド)、Coinbase(コインベース)、Kraken(クラーケン)、Staked.USBitcoin Suisseなどが含まれます。

イーサリアムの検閲を防ぐことに焦点を当てた議論は、いくつかのシナリオとそのトレードオフに落ち着きました。広く支持されているのは、ノード(ユーザー)の圧倒的多数に基づいて、Coinbaseや他のバリデータをネットワークから外科的に削除するユーザー起動型のソフトフォークです。このシナリオでは、取引を検閲する事業者は数十億米ドルを失い、ネットワークはOFAC準拠の検閲可能チェーンと非OFAC準拠の「検閲不可能」チェーンに分割され、争いの火種となるハードフォークに直面する可能性があります。これに対し、Circle(サークル)やCoinbaseなどの中央集権的な事業者は、OFAC準拠のチェーンを採用し、非準拠のチェーンのDeFiエコシステムに障害を与えるかもしれません。

先週、CEOのブライアン・アームストロング氏は、Coinbaseがネットワーク全体の検閲に異議を唱える方法がなければ、ネットワークの整合性を維持するためにイーサリアムのステーキング業務を停止する可能性が高いと考えていると公に発言しました。ネットワーク内で最大のETH 2.0ステーキングプールの1つとして、CoinbaseOFACの制裁に直面した場合は岩と壁の間に追い詰められ、暗号資産の倫理を損なうかもしれず、あるいはイーサリアムネットワークからそのETHを早々にステーキング解除して何十億米ドルの収益と顧客資金を失う可能性があるのです。

 

 

 

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