By ARK Invest
本レポートは、2022年10月17日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #338」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Illumina社の製品プレイブックは健在
By Simon Barnett | @sbarnettARK
Director of Research, Life Sciences
数週間前、遺伝子配列解析機器の有力プロバイダーであるIllumina(ILMN/イルミナ)社は、初のゲノミクス・フォーラムを開催しました。同社は、世界中で遺伝子医療の普及を遅らせている障害への答えを提案する、ダイナミックな講演者たちを集めました。Illumina社の経営陣は、このテクニカルサマリーで詳述した同社の技術ロードマップについて幅広く語りました。Illumina社の次の製品群はライフサイエンス業界を悩ませているいくつかの問題点に対処しているものとみられます。とはいえ、いくつかの分野では、製品マーケティングが現実よりも進んでいる可能性もあります。
Illumina社は、医療検査に特化したハイスループットシーケンサーである NovaSeq 6000 Dxと、その新しいフラッグシップシーケンサーであるNovaSeq Xシリーズを発表しました。NovaSeq 6000 DxはすでにFDAの認可を受けており、ラボが臨床遺伝子検査を効率化するのに貢献しています。一方、 NovaSeq Xシリーズは、来年末までに約200米ドルでヒトゲノム全体のシーケンスを実行できるようになり、大規模集団研究などのいくつかの超ハイスループットアプリケーションで、新たなアップグレードサイクルのきっかけとなる可能性があります。
同社はまた、ハードウェア以外の製品として、新しいコアケミストリー(XLEAP)と合成ロングリードワークフロー(CLR)の2つも展示しました。XLEAPの精度と読み取り長のスペックは期待に応えるものではありませんでしたが、このケミストリーの安定性とスピードは印象的であることは間違いありません。Illumina社はXLEAPの消耗品をドライアイスなしで出荷できるため、堅牢なコールドチェーンがない国でもシーケンスへのアクセスを向上させることができます。しかし、CLRのワークフローは、ネイティブのロングリード技術よりも高価で、性能も低く、扱いにくいようです。ライフサイエンス業界における未知の疑問や答えに対処するために、今後はより多くのシーケンサーユーザーが長距離シーケンスを採用することが予想されます。詳細は、Mediumに掲載された新しい記事からご覧ください。
2. Meta社の描く未来像は現実に根ざしているか?
By Nick Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
Meta Platforms社は、先週開催された年次Connect会議において、新しいフルカラーの複合現実感(MR)VRヘッドセット「Quest Pro」を発表しました。同社は、多くの新機能を追加したことで、Quest Proがエンタープライズ市場と消費者市場の両方にアピールすることを期待しています。
しかしながら、Quest Proの実現性には疑問があります。最も重要なのは、Quest Proの価格が1,500米ドルで、先代のOculus Quest 2の発売開始価格の約4倍であることです。以下に示すように、ここ数年、AR/VRヘッドセットの平均販売価格(ASP)は400~500米ドルの範囲で均衡を保っているようで、Meta社がこのように高価なモデルで消費者を引き付けるには限界があるかもしれないことを示唆しています。
さらに、Meta社は企業での採用に賭けているようですが、それは望み薄だと私たちは考えます。Connectから得られた発表に基づくと、Quest Proがナレッジワーカーの生産性を十分に向上させ、企業での幅広い採用を促進する可能性は低いと言えます。実際、同社の新しいパートナーシップの多くは、ZoomやMicrosoft Teamsといった既存のコミュニケーションおよびコラボレーションサービスの統合に関係するものであり、VRの没入型3D体験を効果的に必要とする場面はほとんどないでしょう。
またさらに、バッテリー駆動時間が1~2時間台であることから、リフレッシュレート絡みで動作不良を起こす可能性があり、Quest Proは企業の現場に出るにはまだ早いように思われます。90Hzの最大リフレッシュレートは、技術的には動作不良を防ぐための最低基準値を満たしていますが、先代のOculus Quest 2のリフレッシュレートは90Hzから120Hzの範囲であり、それでも特に使い始めの頃は大きな動作不良を引き起こしていました。
言うなれば、Quest ProにまつわるMeta社のビジョンは、時代の先取りをしているのかもしれません。これまで主に消費者向けに提供してきた同社は、企業におけるVR導入の次の波を起こすことを望んでいますが、これは難しい飛躍だと私たちは考えています。
3. Volkswagenが中国のHorizon Roboticsと新たな合弁会社を設立
By Tasha Keeney | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies
先週、VW(フォルクスワーゲン)社は中国の自動車チップ新興企業であるHorizon Robotics社との合弁会社に24億ユーロを投資し、フルスタックの自律走行ソフトウェアおよびハードウェアシステムの構築を目指すと発表しました。中国経済の弱体化に伴う投資リスクはあるものの、同社は最大の市場で完全自動運転車の開発を加速させるプレッシャーを感じているのかもしれません。
私たちは、ロボットタクシーは、地域によって勝敗が分かれる市場になると見ています。米国と中国の企業は、欧州の競合他社よりも動きが速いようです。VWはCEOを解任して経営再建中であり、その新事業はすでに複雑化している企業構造をさらに複雑化させる可能性がありそうです。
4. Apple、Goldman Sachsが運営する普通預金口座の提供を開始
By Max Friedrich | @mfriedrichARK
ARK Venture Committee Member & Analyst
Apple社は、Apple Wallet用の普通預金口座の提供をを開始することを先日発表するなど、引き続きフィンテックに力入れています。今年初めには、Klarna、Afterpay、Affirmが提供するBNPL(buy-now-pay-later)のように、Apple Payユーザーが6週間にわたって4回に分けて購入代金を支払うことができる機能「Pay Later」を発表しています。報道によると、技術的・工学的な問題により、Pay Laterは2023年まで延期されたとのことです。
Apple社によると、新しい普通預金口座のユーザーは、日々のキャッシュバックの報酬をGoldman Sachs社が提供する高利回り貯蓄口座に自動的に入金できるようになるとのことです。Apple社のクレジットカードにも出資しているGoldman社は、自社の消費者向けビジネスであるMarcus(マーカス)に苦戦しているため、米国に約5,000万人いるApple Payユーザー向けに普通預金口座をサポートすることは、魅力的な販売機会となる可能性があります。Apple社にとって、普通預金口座はそのエコシステムの粘着性を高め、ユーザーをその主要な収入源であるiPhoneにさらに依存させることができると私たちはみています。
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