By ARK Invest

本レポートは、2023117ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #349」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. ゲノム編集に遺伝子の多様性を付け加えるCRISPRme

By Simon Barnett | @sbarnettARK
Director of Research, Life Sciences

 

バイオ製薬会社がゲノムの特定領域を改変するためにCRISPR遺伝子編集と塩基編集を使用することで、治療のあり方を一変させるかもしれません。CRISPR/Cas9の画期的な発表からほぼ10年経った現在、米国食品医薬品局(FDA)は、鎌状赤血球症やβサラセミアを治療するためのCRISPRベースの医薬品の最終審査を行なっています。

とは言え、CRISPRを用いた治療法も、他の治療法と同様に障害に直面します。最もよくあるのが、CRISPRが意図したDNAの標的とゲノムの類似部分を混同してしまうオフターゲット編集です。このため、バイオファーマ各社はソフトウェアツールや実験的なテストを用いて、オフターゲット編集のリスクを予測、評価、管理しています。

最近、研究者グループが、オフターゲット編集のリスクを軽減するCRISPRmeというオープンアクセス型のソフトウェアツールキットを発表しました。多くの計算ツールが共通のヒト参照ゲノムを用いてオフターゲット編集を予測するのに対し、CRISPRmeは多様な祖先グループからの遺伝的変異に対して最適化されています。中でも重要なのは、研究者らが、アフリカ系の先祖を持つ人々が特にオフターゲット編集のリスクにさらされる可能性があることを示したことです。集団における自然変異を理解することで、単一のヒトリファレンスに表れないオフターゲット編集領域を制限することができます。

CRISPRmeのようなツールは、多様な地域からの集団シークエンスプロジェクトと相まって、遺伝子編集治療がすべての集団に利益をもたらすことを保証するのに役立つはずです。

 

 

2. ロボティクスの能力は過去7年間で33倍向上

By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics  

 

2015年にAmazon社はビンからアイテムをピッキングして別のビンに入れるのに最適なロボットの開発が可能なチームを特定するために、「ピッキングチャレンジ」を開催しました。優勝チームは、下図に示すように1時間に30個のアイテムをピッキングして配置するロボットを開発しましたが、これは人間の平均値である約400個を大きく下回るものでした。そして20229月、同社は1時間に1,000個のアイテムをピッキングするロボットのプロトタイプを発表したのです。この7年間で33倍の改善を示すものであり、今や人間を凌駕しています。

ARKのリサーチは、コンピュータビジョンとディープラーニングの進歩が、この改善の多くを担っていることを示唆しています。また、Amazon1日あたり約1,000台の倉庫ロボットを製造しており、ロボティクスを大規模に推進していると思われます

 

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[1] https://www.amazon.science/latest-news/pinch-grasping-robot-handles-items-with-precision

https://berkeleyautomation.github.io/dex-net/#dexnet_4

https://www.technologyreview.com/s/610587/robots-get-closer-to-human-like-dexterity/

https://arxiv.org/pdf/1610.05514.pdf

https://www.engadget.com/2015-06-01-amazon-picking-challenge-winner.html

 

 

3. SEC、暗号企業GenesisGeminiを無登録証券公開で告発

By Yassine Elmandjra | @yassineARK
Analyst

 

先週、米国証券取引委員会(SEC)は、Genesis Global Capital LLC(ジェネシス・グローバルキャピタル)とGemini Trust Company LLC(ジェミニ・トラスト・カンパニー)に対し、Gemini社のEarn(アーン)商品を通じて個人投資家に無登録の証券の募集と販売を行なったとして告発しました。

今回の措置は、両社間のTwitter紛争の最中に発生しました。ウィンクルボス家の双子が率いるGemini社と、バリー・シルバート氏のDigital Currency Group(デジタル・カレンシー・グループ)の子会社であるGenesis社は、Genesisのプラットフォームで凍結された9億米ドルをめぐって争っており、Gemini34万人のEarn(アーン)利用者を犠牲にする可能性があります。Genesisが引き出しを停止してから2ヵ月が経ちますが、両者はまだ解決に至っていません。SECの告発は短期的に債権者に利益をもたらすものではありませんが、Geminiは顧客に全額を負担させることを余儀なくされる可能性があり、その事業が危うくなる可能性もあります。

Geminiの創業者であるタイラー・ウィンクルボス氏は、SECの告発は根拠がなく、予想外であり、投資家保護を犠牲にして政治的に動機づけられているという見解を表明しています。Signum Growth Capital(シグナム・グロース・キャピタル)のCEOであるアンジー・ダルトン氏などの他の人々も、SEC16ヵ月前にWells Notice(ウェルズ通知)[1]を発行し、Coinbaseの製品であるLend(レンド)のデビューを阻止した際に前例を作ったと指摘し、これに反対しています。ダルトン氏が指摘するようにCoinbaseへのウェルズ通知は、競合他社にとって、彼らの製品が米国連邦証券法を侵害しているという公正な警告であったはずです。

この危機は、いくつかの厄介な問題を提起しています。Coinbaseが発売していないLendの代わりに、Geminiがすでに発売していた商品で、34万人の投資家を9億米ドルもの損失から守ることができたはずのEarn(アーン)を、なぜSECはターゲットにしなかったのでしょうか。おそらくもっと重要なのは、CoinbaseLendに関するウェルズ通知に対応して、ジェミニの法律顧問がEarnを解消するよう推奨しなかったのはなぜか、ということです。

Genesis社はこの告発についてまだコメントを出していませんが、Gemini社は、特にニューヨーク金融サービス局(NYDFS)からEarnの規制認可を受けているため、積極的に自社を弁護して抗議する計画です。

ARKは、今後もこの状況を注視していきます。

[1] ウェルズ通知とは、SECが強制捜査の実施を計画している人や企業に対して送る書簡のこと。

 

 

 

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