By ARK Invest

本レポートは、2023227ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #355」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Coinbase、イーサリアムをスケールアップする レイヤー2ネットワークを開始

By Frank Downing | @downingARK
Director of Research, Next Generation Internet

 

先週、Coinbaseはイーサリアム上に構築されたレイヤー2L2)ネットワークであるBase

発表しました。これは、分散型アプリケーションを構築するための低コストで安全、かつ使いやすい方法を開発者に提供するものです。Optimismテクノロジースタック上に構築されたBaseは、Coinbaseが次の10億人のユーザーをクリプトエコノミーに取り込むのに一役買うことを期待しているオープンソースプロジェクトです。現在の規制環境を尊重し、Coinbaseはネイティブトークンなしで時間をかけてネットワークを分散化する計画を明らかにしました。

L2ネットワークは、イーサリアムのブロックチェーン上でより高い取引処理能力を持ち、ユーザー手数料も低いため、2022年に大きな成功を収めました。たとえば、既存のL2ネットワークであるArbitrumOptimismなどは、イーサリアムのベースネットワークの1日の取引回数を上回りました。しかし、その牽引力にもかかわらずユーザー数はまだ少なく、1日あたりのアクティブユーザーは数十万人であり、どうやら従来のインターネットサービスほど使い勝手が良くないことが原因であるようです。

Coinbase 月間アクティブユーザー数830万人 11,000万を超える認証済みアカウントを保有しており、世界中の分散型ネットワークを使用する人々の数を拡大するのに適した立場にあります。同社はBaseを自社の製品群に統合し、分散型アプリへのユーザーのアクセスを容易にすることを計画しています。また、多くの企業やプロジェクトがネットワーク上に構築する計画を発表しているため、間もなくBaseには分散型金融サービスからゲームまで、幅広いアプリケーションが収容されることになるでしょう。

私たちの見解では、Coinbaseがそのサービスを構築して分散型暗号資産インフラに統合するという決定は、パブリックブロックチェーンが提供することを目指している公正、透明、且つアクセスしやすい金融サービスとの深い連携を強調するものです。開始当初はBaseからトランザクション収益を得ることはできませんが、同社のウォレットがネットワーク上のアプリケーションの信頼できるオンランプ(入口)およびアクセスポイントとして機能し、規模が拡大すれば、Coinbaseが財務的な利益を得る可能性が高いと言えます。

 

 

2. 非構造化環境におけるロボットの設計には課題が山積

By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics

 

先週、人工知能(AI)の躍進が話題になっているにもかかわらず、2つの著名なロボット・プロジェクトが終了することがわかりました。家庭やオフィス向けのロボットを設計するために発足したAlphabet社の子会社Everyday Robotsトヨタ研究所の家庭用ロボットがスーパーマーケットなどのより体系的な環境に軸足を移すのと同時に閉鎖されました。両プロジェクトは、大規模な言語モデルに基づくAIが加速度的な成長に向けて変遷している最中に、終焉を迎えたことになります。

ARKのリサーチによると、ロボットが世界の動きを学ぶためには、膨大な量の学習データが必要です。成功するロボティクス企業は、独自のデータの優位性を得るための経済的な方法を見つけるに違いありません。

 

 

3. ディープラーニングが可能にする         De Novoタンパク質設計

By Pierce Jamieson | @PierceARK
Research Associate

 

ハワード・ヒューズ医学研究所の科学者たちが、ゼロからコンピューターを使用して設計したタンパク質構造について、新たにNature誌に発表しました。この研究グループは、ディープラーニング(DL)技術と従来の分子モデリングを組み合わせることで、自然界に存在する生物発光(分子が発光する能力)よりも強力な発光を生み出す酵素を設計したのです。生物発光酵素は、科学者が目的の反応が本当に起こったかどうかを視覚的に判断するのに役立つため、生物学研究において広く使用されています。この方法を化学者たちは「家族全員による幻覚」と呼び、自然界に存在するどの酵素よりも熱的に安定でコンパクトな酵素を作り出しました。

「家族全員による幻覚」は、タンパク質設計の重要なマイルストーンとなり、また、農業や生物医学などの分野で画期的な進歩をもたらす可能性があります。科学者たちは、模倣しようとするタンパク質とは無関係のタンパク質構造から始めました。DeepmindAlphafoldのような深層学習モデルに、開始点とはわずかに異なるタンパク質構造を生成するよう依頼し、それぞれのシミュレーションタンパク質の性能を評価することで、自然な進化をコンピューター上で再現したのです。

 

 

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