By ARK Invest

本レポートは、202336ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #356」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. Teslaの「インベスター・デイ」に派手さはなく、中身重視

By Tasha Keeney | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies

 

本記事は、自動運転テクノロジー&ロボティクス分野担当リサーチディレクターのSam Korusと共同執筆致しました。

先週開催されたTesla社の「インベスター・デイ」については、さまざまな評価がありましたが、ARKTasha KeeneySam Korusは、重要且つエキサイティングなニュースには事欠かないものだったと感じました。多くの投資家が次世代自動車の派手なチラ見せを期待する中、同社は製品プロトタイプよりももっと意義深いニュース、つまり生産規模の拡大に伴う継続的なコスト削減のためのロードマップを共有したというのが私たちの認識です。

Tesla社は、今後5年間に車両コストを最大50%削減するための相互依存的なアクションを実現する可能性が高いようです。まず、次世代車両のコントローラーの100%を自社生産します。次に、電力損失を16分の1に削減できる48ボルトのバッテリーアーキテクチャに切り替えます。そして3番目に、イーサネットに接続されたローカルコントローラーを使用して、ワイヤーハーネスの複雑さを軽減します。こうした電気アーキテクチャの変更により、同社はコストを削減し、部品レベルでのサプライチェーンをよりコントロールできるようになります。また、その製造工程を並行組立プロセスに移行することで、製造フットプリントと無駄な時間をそれぞれ40%と30%削減することが可能になります。

工場の敷地面積を縮小することで、Tesla社は「ギガファクトリー」の生産を加速させ、車両とデータエンジン両方のスケーリング速度を向上させることができるようになります。現在、同社の車両は1日あたり合計12千万マイル以上を走行し、最先端の運転支援機能を備えた完全自動運転(FSD)では1マイルを走行しています。一方、CruiseWaymoの、公道での無人運転の累計走行距離はそれぞれ100万マイルに到達したところです。

完全な比較ではありませんが、自動運転の競合他社と比較すると、Tesla社の車両は累計走行距離が100倍、データ収集量が5万倍となっています。私たちのリサーチによると、完全自動運転タクシーサービスを構築し、規模を拡大するための競争では、データが非常に重要になります。

要するに、Tesla社の垂直統合は、統合の遅れている競合他社が再現するのに何年もかかる可能性のあるような優位性をもたらしたようです。いい加減な生ぬるい評価には惑わされないでください。

 

 

2. AlphaFoldの機能が環状ペプチドを活性化

By Simon Barnett | @sbarnettARK
Director of Research, Life Sciences

 

タンパク質の立体(3D)構造を正確に予測するAlphaFold(アルファフォールド)のディープラーニングモデルは、ライフサイエンスに旋風を巻き起こしています。AlphaFoldの予測は不完全ではあるものの、科学者たちがこれまでよりもはるかに迅速かつ経済的に仮説を立てて検証するのに役立っています。AlphaFold2021年にオープンソース化されて以来、いくつかの研究グループがRoseTTAFoldを含む競合モデルを構築したり、AlphaFoldの上に新しいモデルを構築したりしています。今週初め、AlphaFoldの範囲を研究者たちが変更し、治療上重要なポテンシャルを持つタンパク質の一種である環状ペプチドを含めるようにしました。

タンパク質ベースの医薬品は、プラスの効果をもたらしますが、いくつかの障害に直面しています。まず、タンパク質はすぐに分解され、消化器官を通過してしまうため、経口投与ができません。また第二に、タンパク質はその大きさと帯電した性質から、細胞膜を透過しづらいのです。とはいえ、タンパク質ベースの薬剤は毒性が低く、標的に対して高い特異性を持つことが多いです。

環状ペプチドは直鎖状のタンパク質を円形に縫い合わせたもので、タンパク質ベースの医薬品の中では剛性が高く、劣化しにくいのですが、それでも細胞を透過させるのは困難です。実験的に検証された環状ペプチドの構造はほとんど存在しないため、AlphaFoldは先週まで、それらをうまく予測することができませんでした。

そこで画期的な動きとして、研究者たちは、「環状オフセット」と呼ばれる新しい位置符号化フレームワークを用いて、予測された構造が直線状ではなく環状であることをAlphaFoldに理解させることに成功しました。環状ペプチドのトレーニングデータを追加することで、AlphaFoldの環状ペプチド構造予測能力を向上させたのです。

下図の、灰色のバックボーンが構造的に決定された構造、青いバックボーンがAlphafoldの予測した構造を表しています。

 

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出典: Rettie, S. A. et al. 2023."Cyclic Peptide Structure Prediction And Design Using AlphaFold." bioRxiv preprint. https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.02.25.529956v1.full.pdf

 

環状ペプチドの研究者の多くが、細胞透過性の問題について発表しています。そのうちの何人かによると、AfCycDesignは、薬剤のような性質を持つ環状ペプチド分子を生成するための障壁を低くするはずだそうです。そしてどうやら、最近ARCH Venture Partnersが主導するシリーズAラウンドで5千万米ドルを調達した治療薬会社であるVilya社が、この知的財産の多くを保有しているとみられます。

 

 

3. OpenAIが新APIを公開し、利用規約を変更

By Will Summerlin | @summerlinARK
Co-Lead ARK Venture & Analyst

 

先週、OpenAI社は、さらなるイノベーションを喚起するような一連の開発を発表しました

まず、この技術により、サードパーティの開発者は、既存の言語モデルよりもはるかに安価な新しいAPIを介して、ChatGPTを自社のアプリやサービスに統合できるようになりました。OpenAIによると、ChatGPT APIは、AIを搭載したチャットインターフェイスを作る以上のことができるそうです。また、その新しいモデルファミリーであるgpt-3.5-turboは、「チャット以外の多くのユースケースに最適なモデル」だそうです。OpenAI1,000トークンを0.002米ドルで提供しており、これはわずか3ヵ月前に提供されたGPT-3.5モデルよりも10倍安い価格です。

2つ目は、OpenAIAI搭載の音声テキストモデル「Whisper」を新しいAPIで利用できるようにしたことです。

また3つ目として、OpenAIが開発者のフィードバックに基づくポリシーの変更を発表しました。重要なのは、このサービスは、顧客がオプトインした場合にのみ、APIを通じて送信されたデータを使用してモデルをトレーニングすることです。

最後に、OpenAIはアップタイムの改善を進めています。これは、エンジニアリングチームの最優先事項である 本番環境のユースケースを安定させるためです。

 

 

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