By ARK Invest

本レポートは、2023410ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #361」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

1. PayPalApple Payの進化したパートナーシップに代償が伴う可能性 

By Maximilian Friedrich | @mfriedrichARK
Co-Lead, ARK Venture & Analyst

 

先週、PayPalApple Payとの新たな提携を発表しました。以前からPayPalは、App Store上で同社の加盟店獲得部門であるBraintreeを通じてApple Payの決済を処理しており、消費者のEコマース購入時のチェックアウトオプションとしてApple Payと競合してきました。今回、PayPalの「Complete Commerceサービス」がApple Payをオプションとして提供することで、加盟店はPayPalだけでなく、デビットカード、クレジットカード、およびApple Payによる支払いも受け入れることができるようになります。

Complete Commerce」はPayPalのブランド化されていない決済処理の一部であり、2018年にPayPalの決済量の19%だったものが、2022年には30%に増加しました。同じ4年の間に、同社のコアブランドのサービスは、Apple Payやその他の競合他社に6%ものシェアを奪われ、36%から30%に低下しています。

Apple Payの決済を容易にすることで、PayPalは現在、健全なマージンを享受していると思われますが、長期的にはApple PayのプロモーションがPayPalのブランドサービスに侵食し、その収益に大きな影響を与える可能性があります。当社の推計によると、PayPalブランドのチェックアウトは決済量の30%程度を占めていますが、クレジットカードやデビットカードよりも加盟店の価格設定が高く、資金調達コストが低いため、取引総利益の約70%を占めています。

 

 

2. Teslaの完全自動運転システム、1日の走行距離100万マイルを突破

By Tasha Keeney | @TashaARK
Director of Investment Analysis & Institutional Strategies

 

イーロン・マスク氏の最近のツイートは、Teslaの完全自動運転(FSD)システムが大きな

進歩を遂げていることを示唆しています。現在の1日あたり100万マイル、年間で35,000万マイルを超えるFSDは、数ヵ月前に同社の2022年の株主総会で報告された累積FSD である9,000万マイルから急増しています。ARK分析によると、Teslaの現在のデータ取得倍増率(ライトの法則に基づく経験率)は、前四半期に40%加速しており、野心的な完全自律型ソフトウェアのアップデートを、かつて予想されていたよりも迅速に行なうための重要な一歩となりました。 さらに、最近のFSDパフォーマンスビデオは、同社がこれまで以上にロボットタクシーサービスのローンチに近づいていることを示唆しています。ARKは、ロボットタクシーが今後5年間のTesla社の価値を高める最大の原動力となり得ると予測しています。

[1] ライトの法則では、生産量が累積的に2倍になるごとに、それに対応して効率が向上します。この場合、走行距離が増えれば増えるほど、Teslaはソフトウェアアップデートをより効率的に展開できる可能性があります。効率の向上は、生産までの時間やプロセスで使用する資源の削減という形でもたらされる可能性があります。

 

 

3. AIによって生成されたコンテンツをめぐる著作権の問題に取り組む企業たち

By William Summerlin | @summerlinARK
Co-Lead ARK Venture & Analyst

 

近年、高度なAIモデルの急増により、さまざまな産業でこれまでにない自動化や効率化が進む可能性があります。この革命的な発展は、AIによって生成されたコンテンツに関連する著作権問題への懸念も呼び起こしています。GPT-4のようなAIモデルは、膨大な量のコンテンツ(その一部は著作権で保護されている可能性があるもの)を使ってトレーニングされるため、生成されたコンテンツの知的財産権に関する疑問が生じるという事実が、企業にとっての中核的な懸念となっています。AIがビジネス環境を変化させ続ける中、企業はAIによって生成されたコンテンツの法的枠組みについて、自社の事業への潜在的な影響も含めて明確化を求めています。

その一例が、GitHubAI搭載コード生成ツール「Co-Pilot」をめぐる現在進行中の訴訟です。Co-Pilotは、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)をベースに開発され、提案の生成やコード行のオートコンプリート(自動補完)によって、開発者のコード作成を効率的に支援しています。この訴訟の原告は、GitHubに寄稿したコードを利用していることから、このツールは彼らの知的財産権を侵害していると主張しています。この訴訟の結果は、AIによって生成されたコンテンツの法的な取り扱いの先例となり、AIツールをビジネスに利用する企業にとって広範囲な影響を与える可能性があります。

 

 

4. 応用科学に変わりつつある部分的エピジェネティック・リプログラミング

By Simon Barnett | @sbarnettARK
Director of Research, Life Sciences

 

2006年、山中因子の発見が、エピジェネティック・リプログラミングの分野を切り開くきっかけとなりました。OSKMと呼ばれる4つの転写因子(TF)タンパク質によって、特定の細胞を幹細胞へと逆行させることができるようになったのです。現在、人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、再生医療に多くの応用例があります。

さらに最近、研究者たちは、細胞を幹細胞に変えることなく、一時的に山中因子にさらすと、細胞が若返ることを明らかにしました。未熟なまま中断された(部分的エピジェネティック)リプログラミングは、様々な疾患に対する有効な治療戦略となる可能性があります。

TFは、DNAに物理的に結合し、遺伝子のオン・オフを制御することによって機能します。TFの組み合わせに細胞をさらすことで、研究者は細胞をリプログラムすることができます。現在の細胞と標的細胞の遺伝的「設定」を比較することで、科学者たちは、理論的なエピジェネティック・リプログラミングを応用科学に変え始めているのです。

商業化はT細胞療法から始まる可能性があります。 Lyell Immunopharma (ライエル・イミュノファーマ/ LYEL)のような企業は、固形腫瘍におけるT細胞療法のエピジェネティック・リプログラミングに取り組んでいます。具体的には、Lyell社は、疲弊したT細胞をナイーブな記憶型T細胞へと変化させたいと考えています。疲弊したT細胞とは異なり、記憶型T細胞はがんと闘う能力がより高いからです。

 

 

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