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本レポートは、2023515ARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #366」の日本語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。

 

  1. インフルエンサーのAI化は、有料ダイヤルの復活を意味するのか?

By Nicholas Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager

 

この記事は、Andrew Kimと共同執筆しました。

 

Snapchatのインフルエンサーであるキャリン・マージョリー氏(23歳)は、最近、自身のバーチャル版でAI分野に進出しました。[1] OpenAIを搭載し、仮想のガールフレンドをシミュレートするように設計されたCarynAIは、対話するために1分あたり1米ドルを課金しますが、ベータテストのわずか1週間で、主に男性のユーザーベースから71,610米ドルを稼ぎ出しました。マージョリー氏によれば、180万人のSnapchatフォロワーのうち2万人が有料会員になれば、CarynAIは月500万米ドルを手にすることができるということです。

CarynAIは、消費者が情報や娯楽コンテンツにアクセスするために電話をかける1980年代に流行した1-900ナンバー(有料ダイヤル)[2]の復活を示唆しているのでしょうか。1988年から1991年までのわずか3年間で、有料ダイヤルをホストする企業の市場価値は、プロバイダーがそのコンテンツを収益化するにつれて、6,000万米ドルから10億米ドルへと15倍以上に膨れ上がりました。そして、マージョリー氏のAIの料金体系と同じように、プレミアム電話番号は最初の1分間が2米ドル、それ以降は1分ごとに1米ドルという料金体系でした。

AIコンパニオンのリアルさが増すにつれ、クリエイターがその実装を急ぐ中、その倫理的な影響についての議論が巻き起こっています。ユーザーが現実の関係ではなく、人工的な関係を選ぶようになり、人間同士の関わり方を一変させることになるかもしれません。そして、こうしたAIコンパニオンに関連する安全性を確保する適切なガードレールがあれば、AIは世界中のコンテンツクリエイターにとって刺激的な新しい収益源を生み出すことが出来るでしょう。

 

  1. AIの可能性を拡大し続けるMosaicMLAnthropic

By William Summerlin | @summerlinARK
Co-Lead ARK Venture & Analyst

 

最近、MosaicMLMPT-7B[3] をリリースし、Anthropic(アンスロピック)のClaude(クロード)コンテキストウィンドウが10万トークンに増強された[4] ことから、コンテキストウィンドウの拡張とMosaicMLのトレーニングプラットフォームの効率性、そしてオープンソースのAIモデルの可能性が注目されています。

MosaicMLMPT-7Bオープンソースモデルは、膨大な量のテキストとコードに対する広範なトレーニングで際立っており、以前のオープンソースモデルの限界に対処し、OpenAIAnthropicCohere(コヒア)各社の商用基礎モデルに代わるものを提供しています。特に、新しいモデルは、最大84K トークンの入力に対応することでコンテキストの長さに関する制限に対応しており、これはMeta社のLLaMA-7Bに匹敵する品質で、MosaicMLのプラットフォームで大規模なモデルを効率的に学習できることを浮き彫りにしています。2020年に実施されたGPT-3の最終トレーニングにかかった費用は約500万米ドル[5]でしたが、それと比較した場合、 MosaicMPT-7Bをわずか20万米ドルのコストで、人手を介さずにトレーニングしたのです。[6]

AnthropicClaudeは、コンテキストウィンドウを9,000トークンから10万トークン、つまりおよそ75,000ワードに拡張し、複雑な質問に対する回答を合成して、より効果的かつ効率的に広範囲の文書を分析・解釈できるようになりました。また、コンテキストウィンドウの増加により、財務諸表、研究論文、助成金申請書、法律文書などの長文文書の分析が可能になります。

 

  1. CRISPRが創薬のゲームチェンジャーになる可能性

By Ali Urman | @aurmanARK
Analyst

 

次世代シーケンサー(NGS)、人工知能(AI)、CRISPRの融合は、失敗の確率を減らし、商業化を早めることで、創薬を加速させる可能性を秘めています。現在、医薬品開発コストは、失敗のコストを含めて商業化までの約10年間で平均20億米ドル程度と言われています。また、前臨床試験のコストは、通常、臨床開発コスト全体の40%を占めています。[7] 私たちは、CRISPRが、(1)疾患生物学と標的の同定、(2)発見と開発、という2つの方法で前臨床医薬品開発プロセスを加速することにより、医薬品開発コスト全体を削減できると考えています。

疾患生物学と標的の特定
科学者は、健康な細胞や病気の細胞における遺伝子配列や遺伝子発現を解析し、治療標的の特定や検証を行ない、薬剤耐性のメカニズムを解明しています。疾患生物学と標的の特定によく使われるのが、機能的ゲノムスクリーニングであり、通常、RNA干渉(RNAi)や低分子阻害剤を利用して実施されます。[8]

そして、CRISPRは、より効率的なアプローチを提供します。RNAiが一時的に遺伝子発現を低下させるのに対し、CRISPRは永続的に遺伝子を破壊するため、遺伝子の機能的役割を解明する明確な表現型を得ることができるのです。さらに、CRISPRは複数のノックアウト遺伝子を同時に生成することができるため、複雑な遺伝子の相互作用を調べることができ、疾患経路の理解を深めることができます。例えば、英国ケンブリッジの科学者たちは、CRISPRドロップアウトスクリーニングにより、急性骨髄性白血病の遺伝的脆弱性と治療標的を特定することを発見しました。 [9]

創薬と開発
また、CRISPRは、創薬にとって不可欠なハイスループットな薬剤スクリーニングを可能にすることで、薬剤スクリーニングプラットフォームの効率と精度を高めることもできます。
CRISPR
を使用して特定の遺伝子変化を持つ細胞株を作成することで、研究者は疾患に関連するさまざまな細胞モデルに対する薬剤の影響を調べることができ、薬剤候補をより正確に評価し、薬剤スクリーニングプロセスにおける偽陽性の数を大幅に減少させることができます。例えば、中国の生命科学大学の科学者たちは、CRISPR-Cas9スクリーニングを用いて、急性骨髄性白血病の治療薬候補を特定しました [10]

研究が進むにつれ、前臨床のCRISPRスクリーニング技術で開発された多くのCRISPRベースの治療薬が臨床に入り、より効率的かつ効果的に患者さんに貢献できるようになることが期待されます。

 

[1] Sternlicht, A. 2023. “A 23-year-old Snapchat influencer used OpenAI’s technology to create an A.I. version of herself that will be your girlfriend for $1 per minute.” Fortune.
[2] Raviv, S. 2016. “The Rise and Fall of the 1-900 Number.” Priceonomics.
[3] The Mosaic NLP Team. 2023. “Introducing MPT-7B: A New Standard for Open-Source, Commercially Usable LLMs.” MosaicML.
[4] Anthrop\c. 2023. “Introducing 100K Context Windows.”
[5] Li, C. 2020. “OpenAI’s GPT-3 Language Model: A Technical Overview.” Lambda.
[6] The Mosaic NLP Team. 2023. “Introducing MPT-7B: A New Standard for Open-Source, Commercially Usable LLMs.” MosaicML.
[7] ARK Investment Management LLC. 2023. Big Ideas.
[8] In this process, scientists “knock down” a gene to see the resulting phenotypic change and identify which genes are essential for disease progression and cellular processes.
[9] Tzelepis, K. et al. 2016. “A CRISPR Dropout Screen Identifies Genetic Vulnerabilities and Therapeutic Targets in Acute Myeloid Leukemia.” Cell Rep. doi: 10.1016/j.celrep.2016.09.079.
[10] Su, G. 2020. “CTCF-binding element regulates ESC differentiation via orchestrating long-range chromatin interaction between enhancers and HoxA.” JBC Research Article.  

 

 

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