本レポートは、2023年10月30日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #390」の日語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. Meta社のRay-Banスマートグラスがゲームチェンジャーになるかもしれない
By Nick Grous | @GrousARK
Associate Portfolio Manager
この秋初めに開催されたConnect（コネクト）[1]イベントで、Meta社はMetaAIの技術とRay-Ban（レイバン）のサングラスを融合させ、パーソナライズされたAIアシスタントを作り出す新しいスマートグラスをお披露目しました。同社は説得力のあるデモで、ユーザーが対象物を見て質問し、包括的な回答を即座に受け取る方法を示しました。
Ray-Banのスマートグラスを1週間使ってみて、私たちは深い感銘を受けました。Meta社の大型言語モデルLlama 2を搭載したこのメガネは、SiriやAlexa Voiceよりもはるかに優れた直感的かつニュアンスのこもった方法で音声メッセージに反応します。
Meta社のAIアシスタントはまた、他の製品とは一線を画す、初のハンズフリー・コンピューティング体験も提供するようです。タッチスクリーンがなくても、Ray-BanのMetaAIサングラスを使用すると、ユーザーは周囲の環境と対話し、情報にアクセスし、シームレスにタスクを完了することができます。音声中心のインタラクションへの全面的な移行はまだ証明されていませんが、Meta社のAIとスマートグラスの統合は、スマートグラスにとって最初のキラー機能となる可能性があり、ハンズフリー・コンピューティングにとっても、これまでで最も説得力のある事例となるかもしれません。
2. なぜ従来の自動車メーカーは電気自動車の開発に苦戦しているのか？
By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics
先週、Ford社とGM社はそれぞれの決算説明会で電気自動車（EV）計画の遅れを発表し、どちらも手頃な価格で収益性の高いEVの生産が予想以上に困難であることが判明したと説明しました[2]。両社はEVがゴールデンタイムに向けてまだ準備ができていないことを示唆しているのでしょうか。
おそらくその混乱は、従来の自動車メーカーが、自社で今まで培ってきた経験と規模によってEV市場を支配できるはずであり、その失敗がEVにとって適切なタイミングではないことを示唆している、という共通の思い込みから生じているのでしょう。しかし、恵まれた伝統的な自動車メーカーが苦戦している一方で、BYDやTeslaのような革新的な企業は、従来の想定を覆し、手頃な価格のEVの生産規模を拡大し、利益を上げながら道を切り開いています。
つまり純粋なEV企業が、伝統的な自動車メーカーを破壊しつつあるようです。私たちの見解では、ディスラプション（破壊）こそがチャンスと行動の場であり、積極的なEV投資計画への遅れは、伝統的な自動車メーカーが直面している将来への課題を悪化させる可能性があることを示唆しています。
3. 遺伝性希少疾患の治療法はどれほど価値のあるものになるか？
By Pierce Jamieson | @PierceARK
Research Associate
今週、ARKのマルチオミクス研究チームは、2100年までにすべての遺伝性希少疾患を予防、治療、管理するというチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブのミッションに関連した目標である、すべての遺伝性希少疾患を治癒することの潜在的な経済価値について評価しました。潜在的な経済価値を推定するために、私たちは医療専門家から提供される注釈とOpenAI社のGPT-4などのAIのLLM（大規模言語モデル）を組み合わせて使用している希少疾患研究における有名なデータベースOrphaNet[3]からデータを収集しました。そして、そのデータ収集に基づき、私たちは以下の変数を考慮したモデルを開発しました。
- 疾病の有病率
- 疾患の重症度
- 疾病が平均余命に与える影響
- 疾患の遺伝様式
- 各疾患の推定年間直接費用
質を調整した生存年当たりの推定コスト10万米ドルに基づくと、当社のモデルは、今日、遺伝性希少疾患を患うすべての患者を治癒させると、最大17.5兆米ドルの価値が生みだされることを示唆しています。現在のモデルでは、慢性期治療に関連するコストのような回避コストは除外しています。これを含めると、創出される価値は大幅に増加します。前途は多難ですが、人工知能、遺伝子編集、RNAサイレンシング、細胞治療、先進的な低分子治療法などの進歩と融合により、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブの目標は、彼らが予想しているよりもずっと早く現実のものとなるでしょう。この重要なトピックに関する私たちのブログにご期待ください。
[1] Ortize, S. 2023. “Meta just entered the AI chatbot race – with three major product announcements.” ZD Net.
[2] Vanhulle, L. 2023. “Ford, GM push back spending on EVs.” Automotive News.
[3] Wikipedia. “Orphanet.”
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