By ARK Invest
本レポートは、2023年11月20日にARK社のHPに公開された、英語による「Newsletter #393」の日語訳です。内容については英語による原本が日本語版に優先します。また、情報提供のみを目的としたものです。
1. SpaceX、2度目のStarship打ち上げで前進
By Sam Korus | @skorusARK
Director of Research, Autonomous Technology & Robotics
土曜日に行なわれたSpaceX社の2度目のStarship(スターシップ)の打ち上げは、エンジンの故障もなく、第1段ブースターからの分離に成功し、主な目的を達成しました。しかし、分離後にブースターが爆発し、その数分後にStarshipは自爆命令に反応したようです。ARKは、今回の打ち上げの成功を重要なマイルストーンとみなしており、SpaceX社がFalcon 9と同様にStarshipの改良を続けることを期待しています。
机上の裏計算に基づくと、StarshipはStarlink(スターリンク)コンステレーション(衛星群)を42,000基まで拡大する上で、重要な役割を果たすものと思われます[i]。しかし、その平均5年の寿命を考えると、SpaceX社は年間約8,400基の衛星を打ち上げる必要があり、つまり、これは、その膨大なペイロード容量にもかかわらず、Starshipは3日半ごとに打ち上げられなければならないことを意味しています。ただ、興味深いことに、Falcon 9はすでにおよそ4日に1回の割合で打ち上げられているのです[ii]。その打ち上げの周期だけを基準にすると、SpaceX社はコストを劇的に削減できる学習曲線に沿って進んでおり、業界内でも比類のない競争上の優位性が与えられていると言えます。
出典:https://twitter.com/johnkrausphotos/status/1725865242427609588 @johnkrausphotos
2. Microsoft Ignite、Azure上でOpenAIの新製品を初公開
By Jozef Soja | @JozefARK
Research Associate
先週のIgnite(イグナイト:年次最大のテクニカル・カンファレンス)でMicrosoft社は、Azure OpenAI Serviceの顧客向けにOpenAIの最新モデル「GPT-4 Turbo」を今月末までにプレビューすると発表しただけでなく、OpenAI社の11月6日のDevDayで発表された機能を備えた新しいCopilot(コパイロット)製品もリリースしました。最も注目すべき新製品は、Microsoft Copilot Studioで、これはカスタムCopilotを作成するためのツールです。OpenAI社のカスタムGPTと同様に、Copilotはユースケース固有のタスクに合わせて調整することができ、Microsoftスイート内にある組織のデータに簡単に接続することができます。
また、Microsoft社は、独自のAIアクセラレーターである「Maia(マイア) 100」も発表しました。LLM推論の性能はNvidia社のH100およびH200、AMD社のMI300Xに及ばないものの、Maia 100は最終的にはMicrosoft社の新製品提供コストの削減に貢献する可能性があり、クラウドプロバイダーがNvidia社製のチップに代わる選択肢を模索していることを示すもうひとつの兆候です。そして同社はまた、ARMベースのCPUである「Cobalt(コバルト) 100」も発表しました。Cobalt 100はすでにTeamsなどの社内ワークロードを実行しており、来年にはAzureの顧客が利用できるようになる予定です。
3. 音楽アーティストの心の奥底:Google DeepMindがLyriaを紹介
By Andrew Kim | @andrewkimARK
Research Associate
先週の木曜日、Google DeepMindはYouTubeと提携して開発されたAI音楽生成モデルであるLyria(リリア)を発表しました。 そして同社は、Lyria上に構築された2つの実験的製品であるDream Track(ドリームトラック)とMusic AI toolsを取り上げて紹介しました。Dream Trackは、YouTubeのユーザーが、チャーリー・プースやT-ペインなどの提携アーティストのスタイルで、テキストプロンプトからサウンドトラックを作成することを可能にします。これらのサウンドトラックがYouTubeショート動画のBGMとして機能し、音楽アーティストがファンとつながるための新しいチャンネルとしてDream Trackが飛躍することをGoogle社は期待しています。また同社は、プロの音楽アーティスト、ソングライター、プロデューサー向けに、鼻歌、ビートボックス、MIDIファイルなどのプロンプトを強化したインプットから、説得力のある一貫したオーディオ出力を生成するMusic AIツールも紹介しました。
Lyria が公開したデモに基づき、Google社はMeta社のMusicGenやGoogle社独自の MusicLM の品質をはるかに上回る、世界で最も先進的な AI 音楽モデルを開発したと考えられます[iii]。 音楽アーティストの現在のワークフローに対応することで、Lyria はオーディオサンプルを選別するクリエイターの時間を数え切れないほど節約し、音楽制作の障壁を劇的に下げることができるでしょう。
とはいえ、Dream TrackもMusic AIツールも、著作権侵害の問題に直面する可能性が高いように思われます。Google社はブログ投稿の中で、Lyriaを使って公開されるコンテンツには、人間の耳には聞こえない音声で透かしが入れられることを強調していますが、他の生成AIモデルと同様に、出力をソース素材まで追跡し、オリジナル・アーティストとの収益分配契約を交渉することは、今後数年間にわたる長い訴訟を伴う同社の旅路において、つまずく原因となりそうです。
[i] Howell, E.; Pultarova, T; Dobrijevic, D.; Mann, A. 2023. “Starlink satellites: Everything you need to know about the controversial internet megaconstellation.” Space.com.
[ii] Robinson-Smith, W. 2023. “SpaceX Falcon 9 launches 23 Starlink satellites from Cape Canaveral.” Spaceflight Now.
[iii]音楽AIの競争相手であるジェンのウェブサイトで様々なモデルの品質を主観的にベンチマークすることが可能。
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